183.孤児院への、サプライズ。
今日は朝から孤児院を訪れている。
孤児院の子供達にサプライズをする為だ。
俺は院長先生に、コモーが所有していたこの土地を落札して、所有者になった事を説明した。
そしてここに孤児院を残すので、安心して欲しいと伝えた。
それから孤児院の敷地を四倍ぐらいに増やし、建物も三倍程度増築するプランを説明した。
『フェアリー商会』が後ろ盾となって、孤児院の運営を支援する事も約束した。
院長先生は安堵するとともに、凄く喜んでくれていた。
そしてサプライズプレゼントは、孤児院の子達全員での一泊遠足旅行だ。
『フェアリー牧場』まで行って、牧場で遊んで一泊するのである。
急な話ではあるが費用はかからないし、馬車も含め全てこちらで手配する。
引率の手伝いもするので、問題ないだろう。
ちなみに引率の手伝いはミルキーにやってもらう。
アッキー、ユッキー、ワッキー、リリイ、チャッピーも補助として同行する。
まぁリリイとチャッピーとワッキーは補助というよりは、一緒に遊ぶだけだろうが……。
そしてトルコーネさんの『フェアリー亭』で働いている孤児院の子供達とロネちゃんも一緒に行く。
昨日夕食を食べている時に、この話をしたら『フェアリー亭』の子供達とロネちゃんも一緒に連れて行って欲しいと頼まれたのだ。
『フェアリー亭』はオープン以来大繁盛が続いていて、一度も休んでいないので今日明日の二日間はお休みにする事にしたらしい。
トルコーネさんとネコルさんは、営業していく中で色々気付く事があったようで、この休みの間に改善したいようだ。
トルコーネさんは、座席数を増やす為にテーブルを新調するそうだ。
ネコルさんはキッチン周りの配置を変えるなどして、効率が良くなるように改善したいらしい。
動線の改善や、デッドスペースのチェックなど俺も一緒になって考えたのだ。
子供達はみんな大喜びで、大騒ぎしながら出発していった。
俺達でがんばって作ったお弁当を持たせてあげた。
炊き出しで大好評だった『おにぎり』のお弁当なので、きっと喜んでくれる事だろう。
みんなが旅行に行っている間に、この孤児院を大規模リフォームする。
もちろん短期間でやるので、サーヤとレントンのスキルでやってもらう予定だ。
この孤児院がある土地を含めたブロック全体が、俺の土地建物になっている。
このブロックの更に一つ北側のブロックも全て俺の土地建物となっており、その中に鍛治工房などがある。
ちなみにこの孤児院はブロックの南東の角にあるが、同じブロックの反対側北西の角には先日の化物事件で主要な現場となった空き倉庫がある。
もっとも今は化物が破壊したので、建物はなくなっているのだが。
意外と孤児院から近い場所にあったのである。
このブロックには、他にも家を中心とした建物が立っている。
だが、現在住人は誰もいない。
孤児院だけが最後に残っていたのだ。
他はポンコツ商人コモーに既に退去させられていたのである。
資金繰りの為に、ブロック毎まとめて売却する為に追い出したようだ。
前に金物店を訪れた時に、店員が助けてあげて欲しいと言っていた追い出された人達は、ここの人達なのだろう。
困っている人については、仮設住宅を割り当てるつもりだし、すでに衛兵隊に申し出ている人は案内されているはずである。
また古い建物が多いので再開発して、新たに二階建ての賃貸住宅を建設しようと思っている。
格安で提供する予定だ。
再開発を機に孤児院はそのまま残しつつ、敷地面積を大きくしようと思っているのだ。
思い出の詰まった建物はそのまま残しつつ、三倍の面積になるように増築するつもりだ。
そして広くなった敷地には、小さな果樹園を作ろうと思っている。
俺はこの孤児院の子供達が、楽しみながら収入を得られる方法を必死で考えた。
それが小さな果樹園なのだ。
ブルーベリー園にしようと思っている。
ブルーベリーは木自体がそれほど大きくならないし、虫にも病気にも強くほとんど手間もかからない。
収穫も小さな子でも十分に出来る。
手で摘めば良いだけなのだ。
そしてブルーベリー園の周囲を柵で囲み、その中で烏骨鶏を飼う。
新しく生まれた烏骨鶏達を、貸し出そうと思っているのだ。
烏骨鶏なら小さなブルーベリー園でも相当な羽数が飼育出来て、かなり卵が採れるようになると思う。
いい稼ぎになると思うんだよね。
卵は『フェアリー商会』で買い取ってあげる予定だ。
俺の『使役生物』である烏骨鶏達は手がかからないし、子供達でも充分面倒見れると思う。
やる事は、ほぼ卵を拾う事だけになるからね。
通常はブルーベリー園に鶏を放すと、下の雑草だけでなくブルーベリーの葉や実まで食べてしまうので共存は出来ない。
だが、俺の『使役生物』になっているので、食べないように言い聞かせれば共存出来るのだ。
果樹園を作って、その下で雑草取りを兼ねて鶏を飼うというのは、非常に効率的で理にかなったやり方なのである。
そして俺は、更にもう一工夫考えた。
ブルーベリー園の中に、子供達の遊び場も兼ねた浅い水路を巡らそうと思っている。
途中に小さな浅い池も何箇所か作る。
近くに川が無いので水は引けないが、井戸水が自然にチョロチョロ流れるように工夫して、水が枯れないように出来るのだ。
自然の水辺を再現した『ビオトープ』のような感じになる予定だ。
小さな子供が落ちても溺れないように浅いものにするが、ここで遊びながら稼げるように面白い事をやろうと思っている。
それは小エビの養殖だ。
トルコーネさんからの依頼で、今後『フェアリー農場』から定期的に小エビを納品する事になっている。
だが距離的に近い孤児院から、全量は無理でも活きのいい小エビが入荷したらより良いはずだ。
そして養殖も難しくないはずだ。
生きた小エビを捕まえてきて、放せば勝手にどんどん増えてくれるはずなのだ。
あの系統の小エビは、経験上どんどん増える。
俺は元の世界にいた時に、用水路にいた『スジエビ』という小エビを十匹程度捕まえて水槽で飼ってみた事がある。
あっという間に子供が増えて、二百匹以上になってしまった。
水草なども一緒に移してくれば、より確実だと思っている。
『ビオトープ』として川辺の環境をなるべく再現すれば、絶対に養殖出来るはずなのだ。
子供達が水遊びをしながら小エビを採れば、遊びと食料確保が両立する。一石二鳥の構図が出来る。
街中なので農場みたいに広い面積は確保出来ないが、この方式なら一つの場所でブルーベリーの収穫、卵の採取、小エビの採取と三つの収穫が出来る。我ながら画期的な仕組みだと思う。
◇
俺はレントンと協力して、区画ブロック全体の周囲に長い柱を立て『ワイルド葛』の蔓を編み込んだ布状のものを張り、全体を覆い隠す目隠しを作った。
そして区画ブロックの中で残す建物と残さない建物を選別し、撤去する建物については『波動収納』で回収してしまった。
土地と固定されている建物でも、土台ごと回収出来てしまった。
孤児院の建物部分のリフォームと増設については、サーヤに任せる事にした。
俺とレントンは、ブルーベリー園の部分を担当する事にした。
この孤児院の作業が終わったら、区画ブロックの残り部分に賃貸用住宅の設置も行う予定だ。
新しく作る賃貸用二階建住宅も、今までなら全てレントンに作ってもらっていたが、これからは一つレントンに作ってもらえば、俺の『波動複写』でコピーが作れる。
レントンの負担も少なくなるし、よりスピードも速くなる。
ということで、約半日でこの区画ブロック全体の再開発は、ほぼ終わってしまった。
我ながら……衝撃の早さだ。
ただあまりにも異常すぎるので、孤児院以外の他のところはそのまま目隠しをしておく事にした。
数日経ったら、目隠しを外そうと思う。
まぁ数日でも十分異常だが……半日よりはマシだろう……。
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