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182.武具に、名前を。

 シャリアさんとユリアさんの見送りを終えた俺達は、『フェアリー牧場』を後にしてマグネの街に戻った。


 戻る途中で予定通り各村を回り、ニアに雷魔法の『植物成長』をかけてもらい生育を促進させてあげた。

 酪農の村であるラクノ村では、牧草の成長を促進させてあげた。


 各村では『豊穣の女神』コールが巻き起こり、みんな神にでも祈るようにニアを拝んでいた。


 面積が広いので結構大変だったと思うが、ニアは調子に乗っていたので平気だったようだ。


 各村でお礼として色々な物を貰ってしまった。

 ベジ村では、早い段階で植えていたジャガイモがもう収穫出来たそうだ。

 結構貰えたので、この新ジャガを使って新しいメニューを考案しようと思っている。

 実はもう頭の中では決めているのだ……ムフフ……。



 今は夕食を取る為に『フェアリー亭』に向かっているところだ。



 店内に入ると……やはり今日も大繁盛で満席状態だった。


 俺達は二階の個室に案内された。


 案内をしてくれたトルコーネさんが、個室に入るなり頭を下げた。


「グリム殿、お願いがあります。先だって食べさせていただいた小エビの『素揚げ』と『かき揚げ』を看板メニューとして取り入れたいのですが、よろしいでしょうか? 」


「もちろんです。初めからそのつもりでしたから。私もメニューに採用していただいて嬉しいです」


 俺がそう答えると、トルコーネさんはほっとした表情を浮かべて話を続けた。


 もうメニューの名前を考えていたそうだ。

 『素揚げ』は、紅エビと白エビを半分ずつ盛る形にして『紅白揚げ』という名前で出すらしい。

 『かき揚げ』は、それぞれのエビだけにして紅エビを使った『紅かき揚げ』と白エビを使った『白かき揚げ』という二種類で行くつもりのようだ。


 そして小エビの仕入れについて訊かれたので、『フェアリー農場』から毎日納品させる旨伝えた。


 とりあえずは俺が『波動収納』に保存してある分を渡した。

 もちろん普通には鮮度維持方法が無いので、使いきれる分だけだ。

 冷蔵庫があるといいんだけどなぁ……どうにかして作れないかなぁ……


 『フェアリー牧場』や『フェアリー農場』の製品を販売窓口である『フェアリー商店』や大口顧客の『フェアリー亭』に納品する為にも『フェアリー運行』の営業を始めた方が良いかもしれない。


 早速総支配人のサーヤに相談すると、既に手配を始めていたらしく明日にでも開業出来るそうだ。


 ……何それ! 凄腕すぎるんですけど……。



 そんな話をしていたところに、お客さんが訪ねて来た。


 衛兵長とクレアさんと代官さんだった。


 夜は『フェアリー亭』で食べようという話をしていたから、クレアさんが聞いていたんだね。きっと……。


 折角なので、衛兵長達も含めてみんなで食べる事にした。


 衛兵長から、改めて武具のお礼を言われた。


 早速衛兵達に配布したようで、みんな目を輝かせて喜んでくれたとの事だ。


 確かに街に入ってから俺達と出会った衛兵は、皆最敬礼で礼を言ってくれたからね。

 みんなかっこよかった!

 凄く似合っていたのだ。


 そしてクレアさんからは、相談事をされた。

 やはりシャリアさん達から、近衛隊に入らないか勧誘されていたらしい。

 どちらかと言うとシャリアさんは、友達として一緒にいて欲しいという話だったようだ。


 シャリアさんとは歳が同じ二十一歳で、身分の差を超えた友達という感じになったのだろう。

 ちなみにユリアさんは十八歳らしい。


 衛兵長はクレアさんと血縁関係があり叔父に当たるらしいのだが、喜んでいるようだった。

 クレアさんの決断を尊重すると話していた。


 クレアさんにとっては良い話だと思うので、俺も賛成したのだが本人は何か悩んでいるようだった。


 途中からはニアとサーヤとミルキーががっちり話し込んでいたので、任せておけば大丈夫だろう。



 代官さんからの話は、例のザコーナ商会のコモーの資産のオークションの件だった。

 早くも今日オークションを実施したらしい。

 案の定入札する者はおらず、俺が落札したようだ。


 評価額の四分の一の三千万ゴルとの事だ。


 俺は金額を聞いて驚いた。ありえない値段だと思う。


 屋敷自体でも前回俺が手に入れた屋敷より少し大きいし、店舗も二つある。

 そして鍛冶工房もあるし、下町に二ブロックのまとまった土地建物もある。この中に孤児院の土地もある。

 他にもいくつかの土地建物があるし、街の中にある貴重な農業地帯にワンブロック分の果樹園もあるらしい。


 元の評価額は一億二千万のようだが、それ自体が低すぎなのではないだろうか。

 今回もあり得ないくらい得をしたようだ。


 そして俺が提供した武具の値段も算出したとの事だった。

 大分低く評価額を見積もって申し訳ないと前置きがあった。


 『インナー』が十万ゴル、『革鎧』が六十万ゴル、『丸盾』が二十万ゴル、『ヘルム』が十万ゴルになるそうで、この標準セットで合計百万ゴルになるとの事だ。

 この標準セットは百セットあるので、これだけで一億ゴルになる。


 そして剣と槍がそれぞれ五十万ゴルになり、各五十本あるので合計五千万ゴルになるとの事だ。

  大盾が四十万ゴルで三十個あるので千二百万ゴル、クロスボウと短矢のセットが十万ゴルで三十セットなので三百万ゴルになるそうだ。


 全部合わせると一億六千五百万ゴルになる。


 俺は驚いた。査定金額は決して低くないと思うのだが……

 武器の相場はよくわからないが、『上級』というだけでそれほどの値段が付くものなのだろうか……


 ただ衛兵長やサーヤの見解では、決して高い査定では無いとの事だ。

 特に剣と槍は普通ならもっと高額になるとの事だ。

『上級』ランクで五十万ゴルで購入出来る武器はあまり無いらしい。


 代官さんが申し訳なさそうな顔をしていたが、俺的には全く問題ないので快く了承した。

 役所の査定は、どんなものでも基本的に低く見積もる慣例があるのかもしれないね。


 これの半額が俺からの寄付扱いとなり、残り半額の八千二百五十万ゴルが俺に支払われる事になる。

 今回の落札金額の三千万ゴルを相殺して、残り五千二百五十万ゴルを毎月百万ゴル支払う分割払いを提案をされた。


 俺は無理にもらうつもりはないので、街に資金的な余裕が出来てからで良いと言ったのだが、毎月百万なら払えるので、そう取り決めをしたいと強く希望された。

 意固地になってもしょうがないので、了承した。


 それから衛兵長に武具に名前を付けて欲しいと頼まれたので、『命名』スキルを使って名前をつける事にした。

 もしかしたら『命名』スキルを使って名前をつけると、武具でも多少なりとも性能が向上したりするのだろうか……。


 ただ俺が単独で付けて、またニアにジト目で見られるのは嫌なので、ここにいる皆で案を出し合って決める事にした。




 みんな張り切って色々意見を出してくれて、活発に話し合った結果、以下のように決定した。


  標準セット———『マグネ 一式標準装備』——内訳——『マグネ 一式インナー』『マグネ 一式皮鎧』『マグネ 一式丸盾』『マグネ 一式ヘルム』

 剣———『蛇牙裂剣(じゃがれつけん)

 槍———『猪牙槍(ししがそう)

 大盾———『象蛇の大盾(ぞうじゃのおおたて)

 クロスボウは俺が作ったわけではないので、そのまま『クロスボウ』にした。


 ちなみに、俺は冗談半分で『絶対負(けん)』という剣の名前と『勝っちゃい(そう)』という槍の名前を提案したのだが……ニアに最大級のジト目を使われ、その場の空気を完全に凍らせてしまったので、それ以降は一言も発していない……トホホ。



 衛兵の追加募集も早速かけたらしいのだが、新しい上級装備の噂も手伝って応募者が殺到しているらしい。


 選考の結果次第だが、すぐにでも増員出来そうとの事だった。


 不穏分子もあらかた逮捕したし、衛兵も増員されればこの街の治安も大丈夫だろう。


 安心して旅立てそうだ。





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次話の投稿は、21日の予定です。


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