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178.武具作りも、チートなの?

 俺は武具作りの仕上げとして、自分が作った武具を『波動鑑定』してみたのだが……


 なぜかすべて階級が『上級(ハイ)』になっていた。


 これにはナーナも驚いていた。

『上級』の武器を作るのは、大変な事らしい。


『武器作成』スキルがレベル10だからだろうか……。


 試しに一揃え自分で装備して、魔力を流してみた。


 いまだに魔力調整が上手く出来ないので、最低限の魔力の()()()で流したのだが……


 各武具が猛烈に赤く発光してしまい……全て赤みを帯びた武具に変わってしまった。


 そして階級が『究極級(アルティメット)』に変わっていた……はて……?

 おまけに通常の武具だったのが、魔法の武具に変わってしまっている……。


 なんのこっちゃ!

 なんかびっくり現象なんですけど……。


 我ながら……破茶滅茶な現象を起こしてしまった気がする……。


  俺が魔力を通すと……魔法の武具に変わるってこと?

 もし本当なら凄い事だと思うんだけど……武具作りもチートじゃないか!


 試しに『波動収納』に大量にある『インプ』達の持っていた小剣や三叉鉾、そしてスケルトン達が持っていた鉈などを取り出して魔力を流してみる。


 結果は……


 上手く魔力を通せた物については、魔法の武器になり階級も大幅にアップするという事がわかった。


 ただ俺の魔力に耐え切れないのか、途中で壊れてしまう物が続出してしまった。


 ある程度強固な素材や階級の高い武器でないと、難しいのかもしれない。

 まぁ壊れない物もあるという事は、俺の方の問題かもしれないけどね。

 俺が魔力調整を、精密に出来るようになればいいだけな気はする……。


 なんかあまり実感は無いけど、魔力を通して壊れなければ武具が一気にランクアップする事だけはわかった。

 ただ現時点では魔力調整が上手く出来ないので、この能力はあまり使えそうにない。

 何か……使いこなせていない能力がありすぎて……時々切なくなる……トホホ。


 元々魔法の武具だった物に、魔力を通しても階級が上がる事は今まで起きなかった。

 魔法の武具で無い物に対して、俺が魔力を通す事によって魔法の武具に変わり、階級も上がるという事なのだろう。


 ちなみに魔法の武器の性能は、現時点では、魔力を通すと軽くなったり、強度が増したり、切れ味が鋭くなったりという程度のようだ。

 ただ、『波動鑑定』で出てくる説明を見ると、魔物素材の武具が魔法の武具になった事で、使用者の魔力や使い方で成長するという特性がより強化されたようだ。



 それから俺の魔力に耐えきれず砕け散った剣の破片なども、魔力を帯びた欠片になっているので、『波動収納』に回収しておいた。

 サーヤの話では、かなりの量の魔力を帯びているので、何かの素材や触媒として使える可能性が高いとの事だったからだ。


 先程の『究極級』になった装備を、衛兵隊に提供する事も一瞬考えたが……


 どう考えても『究極級』百セットは異常だ……。

 ありえな過ぎるので……自重した。


 通常の戦いなら『上級』でも問題ないはずだ。


 ナーナの話では、『上級』の武器や防具を手に出来るのは、一部の裕福な貴族や凄腕の冒険者、軍や騎士団の団長クラスくらいのようだ。


 そう考えると今回の『上級』クラスの武具は、かなりの破格の装備になるらしい。

 これでも十分騒ぎになるようなレベルのようだ……。


 回復薬なら薄めて階級を下げる事も出来るが……。

 武器や防具の階級は、どうやって下げればいいかわからない。

 というか、命を守る為に作ったんだから、階級を下げる事を考えるのはナンセンスだね……。




  ◇




 俺は守護の屋敷に戻って、みんなと一緒に朝食をとった。


 朝食が終わった頃に、タイミング良く衛兵長とクレアさんと代官さんが訪れた。


 衛兵長とクレアさんからは、昨日の騒動の追加報告があった。


 犯行開始時刻直前に集まって来た不穏分子達は、計画には深く関わっていなかったらしい。

 元々街にいた素行の悪い連中を、かき集めただけのようだ。

 ただ単に暴れて憂さを晴らしたいとか金目当てとかだったらしい。


 ただ衛兵長としては、普段から問題だった半グレ集団をほぼ一網打尽に出来たので、それはそれで良かったようだ。


 ある程度までの計画を知っていたのは、リンの潜入調査時に屋敷の中にいた三十人ほどのならず者達のようだ。

 犯行時は各所にばらけていたが、二十人ほどが生き残っているそうだ。

 残りは、下町エリアで化け物に変わっちゃったから死亡しているのだ。


 それからザコーナ商会のお店の方にいた不動産部門を担当していたガラの悪い者達も、計画を知っており混乱に乗じて孤児院を破壊しに行く予定だったそうだ。彼らも捕縛された。


 しつこく孤児院を狙っていたとは……まったく腹が立つ!


 捕縛された者達は、全て犯罪奴隷として領都に送られ復興の為の人足になる予定だそうだ。


 ある意味犯罪奴隷というのは、労務刑についてる囚人という事なのだろう。


 そして中心にいたポンコツ商人は既に死んでいるわけだが、資産は全て没収されるらしい。



 一通りの報告が終わったところで、俺の方から衛兵長に装備についての話を切り出した。


「衛兵長、もしよろしければ私が用意した武具を衛兵隊の皆さんで使っていただけませんか? 」


 そう言って、俺は武具一式を魔法カバン経由で『波動収納』から取り出して並べた。


「これは……」


 衛兵長は驚いて言葉も出ないようだ。

 クレアさんは目がキラキラしている。


「昨日も言ったけど、衛兵隊の装備が軟弱すぎて危ないのよ。みんな街の人達の為に危険に立ち向かうんだから、もっといい装備をつけないとダメよ。これは全て魔物素材を元に知り合いの武具職人に作らせた物だから、遠慮しないで使いなさい。もちろん代金の心配はいらないから。無償提供よ! 」


 ニアが固まっている衛兵長達に、そう説明してくれた。

 当然この話は、ニアと事前に打ち合わせ済みだからね。


「これは凄いわねぇ……おそらくかなりの性能よ」

「これが魔物素材で作ってあるのですか……シンプルだけど洗練されていて騎士団でも充分使えそうな仕上がりですわ」


 同席していたシャリアさんとユリアさんも、武具を手に取りながら驚いている。

 自分が褒められたようで、少し嬉しい。


「こんな逸品……とんでもありません。それに昨日お借りした剣も、お返ししようと思ってお持ちしました」


 衛兵長がそう言うと、昨日貸した剣を俺に差し出した。同様にクレアさんも差し出してきた。


「その剣はそのままお使いください。今回提供する武具に剣もありますが、今お持ちの剣は予備として使ってください。お二人が衛兵隊の武力の中心なのですから」


 俺はそう言いながら、出された剣を押し戻した。

 そして今回提供する武具の種類と数量を書いた紙を差し出した。


 衛兵長とクレアさんは受け取ろうとしなかったが、代官さんが「失礼します」と言って手に取った。


「な、なんと……この数は……今の衛兵隊の人数のみならず追加募集分を合わせた数よりも多い! 将来的に予定している百人規模を賄える数です。これほどの数をどうやって……? 」


 代官さんが腰を抜かさんばかりに驚いている。


「私を誰だと思っているの! “妖精女神の御業”に決まってるでしょう! ……と言っても作ったの知り合いの武具職人だけどね」


 ニアが(おど)けながら、場の空気をほぐしてくれる。


「グリムさん、これ相当な武具だと思うけど、階級は何かしら? 当然わかっているんでしょう? 」


 シャリアさんがそう質問してきたので、正直に答える事にした。

『鑑定』スキルなどを持つ人が見れば、すぐにわかる事だからね。


「はい、階級はすべて『上級(ハイ)』クラスになるそうです。もっともクロスボウは『下級(イージー)』ですが」


「「「上級! 」」」


 衛兵長、クレアさん、代官さんが同時に驚きの声を上げる。

 シャリアさんとユリアさんは、二人で目を合わせながらニヤっとしていた。


「ふふ……街の衛兵隊が全員『上級』クラスの武具を装備してるのは前代未聞ですわね……」

「そうですわね、お姉さま。これ自体が、一つの伝説になりそうですわね」


 シャリアさんとユリアさんが、なぜか凄いニヤけ顔だ。


「き、金額にしたら……一体いくらになるのやら……」


 代官さんが半分呆けている。


「大丈夫です。先程ニアも言いましたが代金は一切必要ありません。それよりもこの街の為に、そして何よりも衛兵隊の皆さんの安全の為に使って欲しいのです。受け取ってください。お願いします」


 俺は折角作ったし、遠慮せずに使って欲しかったので、逆に頭を下げた。


「そうよ。あなた達、これはちゃんと受け取りなさい。ニア様やグリムさんの気持ちを無駄にするつもり? 」


 シャリアさんが、ちょっとだけ圧強めに援護してくれた。


「使って人々を守る事が一番の恩返しですよ。クレアさんがこの武具を使ってくれたら、シャリアお姉さまも少しは安心するわ。あなたを心配して、装備をプレゼントしようとしてたくらいなんですから」


 ユリアさんも優しい笑顔で後押ししてくれた。

 後半はイタズラな笑みを浮かべていたけどね。


「ち、ちょっとユリア、何言ってるの! 」


 シャリアさんが頬を赤らめている……


 なんかレアな表情だ。すごく可愛い。


 衛兵長とクレアさんと代官さんが、互いに視線を合わせて頷いた。


「わかりました。ありがたく受け取らせていただきます。必ずこの武具に恥じぬ働きをしてご覧に入れます」


 衛兵長が代表して、そう答えてくれた。


 無事に受け取ってもらえる事になったので、この武具についての説明を一通りした。


 主に魔物素材の特徴である使い込むほどに性能が向上する可能性がある事を中心に説明し、大事に使ってくれるように頼んだ。



 迎賓館の空いている部屋に、百人分の武具を全て並べた時には、衛兵長達が腰を抜かしそうになっていた。


 俺の持っている魔法カバンが高性能な事は知っていた衛兵長だが、改めて驚いたようだ。

 もちろん本当は魔法カバンからではなく、魔法カバンから出す体で『波動収納』から出したのだ。


 改めて百人分が並ぶと、壮観で何か神々しいオーラを発しているような気がする……


 衛兵長達はその雰囲気にも圧倒されたのかもしれない……。






読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。

感想をいただいた方、ありがとうございます。

誤字報告していただいた方、ありがとうございます。助かりました。


次話の投稿は、17日の予定です。


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