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16.スキル、シェア。

 目覚めると辺りは明るくなりだしていた。


 ——朝だ。

 何も起きずに朝まで眠れた……よかった。


 一応、周囲を確認する……


 ……大丈夫みたいだ。


 迷宮入口に入って、『迷宮管理システム』のダリーを呼んでみたが……何も起きない。


 どうやら無事に、再起動復旧モードに入ったらしい。


 ニアたちはまだ寝ている。


 『ハイピクシー』のニアは、楕円形になった『ハイスライム』のリンの上で寝ている……


 これって……ウォーターベッドじゃないか!

 ……うらやましいヤツめ。


 『ミミック』のシチミは普通の宝箱状態でじっとしている。



 さて、これからどうするか……


 やっと落ち着いて色々なことが考えられる。


 そもそも俺はどうしてここにいるのか……


 ……全くわからない。


 ここに来る直前何してたかも思い出せない……

 ……ほんとに……部分的に記憶喪失だ……。


 今の仕事が農業だったということは思い出せる。

 だが、一人でやっていたのか、誰かとやっていたのか、全く思い出せない。


 今着ている服は、よく農作業のときに着ていた作業服だから、作業中だったか、作業に向かうところだったのではないだろうか……


 ポケットがたくさん付いた職人系の人がよく履いている作業ズボンに、作業シャツ、その上にポケットだらけのベストを着ている。

 よく釣り人が着ているようなやつだ……。


 レストランに野菜を納品に行った時に、よく“釣りの人だ”とからかわれたものだ……。


 ……でも相手の顔が思い出せない……


 ……家族のことも……バツイチ独身というのはわかるが……

 ……親兄弟や元妻……子供がいたかどうかなどは全く思い出せない……


 人に関することが、すっぽり抜けている感じだ……。


 着ている服以外何も持ってない……

 スマホもないし……

 ポケットにも何も入っていない……


 まぁいずれにしろ……今考えてもしょうがないか……

 思い出すのを待つしかないな……


 もう一つ謎なのは……


 ……俺の外見だ。


 ……スケルトンとの戦いの時の、あの光の前までは四十五歳のおっさんだった……


 ……でも光の後は……十八歳……そう多分高校3年の時の俺だ……

 何となく気持ちや感覚も若返っている気もする……


 確かに最近は歳のせいで腰とか膝とかにガタが来ていて、バリバリの部活少年だった高校の頃に戻りたいと思ったことはあるけど……


 いざ戻ると、戸惑いしかない……

 何せ心はおっさんのままなんだから……


 そもそも……

 あの光はほんとに俺が出したんだろうか……


 どこにも、それっぽいスキルとか技コマンドとかないし……


 もう一度出せと言われても、出せそうもない……


 そう思いながら、スキルの確認をしていると、『絆』スキルの『スキル共有』コマンドを思い出した。


 『絆』登録者の数に応じて、お互いのスキルを共有できるという超便利コマンドだ。


 テイムした使役生物(テイムド)は、自動的に、『絆』対象者として登録される。

 使役生物(テイムド)が二千体いるから……百体につき一つだから……二十も共有できることになる。

 すごい……


 でも、『絆』対象者であるニアたちや使役生物(テイムド)たちに共有させられるのは、俺の『通常スキル』だけだから、たいしたものはないんだよね……


 そもそも二十も持ってないし……


 ただ逆に、『絆』対象者たちが持つ『通常スキル』を、二十個共有して、絆親である俺が使えるようにできる。


 攻撃力がない俺にとっては、かなりありがたい。


 詳しく鑑定みないとわからないが、二千体もいるのだから、俺が使える『通常スキル』もいくつかあるだろう。

 『絆』対象者たちのお陰で、俺の強化が簡単にできそうだ。


 ただ、ニアたちはともかく、二千体もの使役生物(テイムド)たちを『波動鑑定』をして、『通常スキル』の詳細を見るのは、かなり大変だ……。

 二十個選ぶのもかなり大変な作業な気がする……


 まぁ焦る必要もないから、時間のあるときに確認して少しずつでもセットしていけばいいかな……


 いや、待てよ……


 『波動鑑定』するには、一体一体見ないといけないんじゃないか……

 つまり二千体全てを面接するみたいに……。


 そうしないとスキルの詳細が確認できないのではないだろうか……

 これ……きついな……

 いや……すぐには無理だ……


 ……これは……困ったときの俺自身、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーに頼るしかない……

 ナビーに呼びかけると早速答えをくれた。


(通常、『鑑定』を行うには、直接対象を目視する必要があると思われます。したがって本来であれば、二千体の使役生物(テイムド)を一体ずつ確認するしかありません。ただ、使役生物(テイムド)という特殊な関係にあることから、『絆』スキルの『絆登録』コマンドにあるテイムドリスト上から『波動鑑定』できる可能性があります。試してみてはどうでしょうか。それが不可能な場合は、やはり一体ずつ面接形式で『鑑定』するほかないと思われます)


 なるほど……


 ダメ元でやってみるか……


 もしダメでも、一体毎に会って、親睦を深めながらやってもいいか。

 時間かければいいだけだし。

 早めにみんなと会って、ちゃんと話したいとは思っていたからね。


 俺はテイムドリストに載っている一体を、試しに『波動鑑定』してみる。

 リストの一体に焦点を当てて……鑑定と念じる……


 ……おお……ステータス画面が表示された……


 どうやらできたようだ……

 これはラッキーだ!


 これで空いてる時間に少しずつでも『波動鑑定』を進めて、使えそうな『通常スキル』があれば、『スキル共有』のコマンドでセットすればいい。


 後は……コマンドの仕様だけ確認しておくか……


  俺は、『絆』スキルの『スキル共有』コマンドをオンにする。


 すると……


  空欄になっているスロットが左右に二十個ずつ出てきた。


 左側の列は、『ギブシェアスキル』と表示されている。


 これは多分、俺が『絆』対象者たちに共有させてあげるスキルのセットスロットなのだろう。


 右側の列には、『テイクシェアスキル』と表示してある。


 これは、俺が『絆』対象者たちから共有させてもらうスキルのセットスロットなのだろう。


 使役生物(テイムド)たちのスキルを確認するのは、時間がかかるから、俺の強化のためのスキルセットは後でゆっくりやることにしよう。


 俺の持ってる『通常スキル』を『絆』対象者たちに共有させる『ギブシェアスキル』の空きスロットに、セットしてみることにした。


 もっとも、ほとんど役立ちそうなものは無いのだが……


 空きスロットを凝視していると、“選択可能スキル一覧”という表示が現れ、俺の『通常スキル』が載っている。


 ここから選択すればいいようだ。

 なんてユーザーフレンドリーなすばらしい機能なんだろう。


 待てよ……


 これなら……わざわざ使役生物(テイムド)たちを一体ずつ『波動鑑定』しなくても、ここから選択すればいいのではないだろうか……


 俺はそう思い、『絆』対象者のスキルを俺のために共有する『テイクシェアスキル』の方の空きスロットを凝視してみる。


 ダメだ……何も表示されない……


 なぜだろう……


 困ったときのナビー頼みだ……

 ナビに訊いてみると……


(おそらく空きスロットに“選択可能スキル一覧”として表示される条件が、各スキルの詳細確認だと思われます。やはりテイムドリストから一体毎のステータスチェックをし、スキルの詳細を確認しないと選択リストには載らないと予測されます。スキルを知っているニアたちのスキルもリストに掲載されていないのは、おそらく本人から話を聞いただけで、『波動鑑定』によるスキルの詳細確認をしていないからだと思われます)


 なるほど……


 やっぱりできないわけか……

 そんなに甘くはないわけね……。


 俺は気を取り直して、当初の予定通り、俺の『通常スキル』を『絆』対象者たちに共有させる『ギブシェアスキル』にセットしてみることにした。


 野生生物を使役できる『テイム』スキル、価値あるものが見つけられる『財宝発掘』スキル、能力の成長も速くなる『促成栽培』スキル、あまり意味は無いかもしれないが『限界突破』スキルの四つをセットしてみた。


 他のスキルは俺自身がまだよくわかってなかったり、共有しても意味がなさそうな感じなので除外した。


 試しにシチミを『波動鑑定』してみると、ステータス画面に『共有スキル』という表示が増えて、先程の四つのスキルが追加されていた。





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