145.助太刀の、魔物退治。
音は、関所の向こう、つまりセイバーン公爵領の街の方から聴こえた。
嫌な予感がする……
俺達はすぐに関所門をくぐり、セイバーン公爵領に入った。
なんと……ここからでも見える!
なんだろう……
マンモスか……?
いや象の魔物だ!
どデカイ象魔物が四体……
これまたどデカイ蛇魔物六体と戦っている。
なんだこれは……怪獣大戦争か!
どうも領境にある山脈から出てきたようだ。
運悪くセイバーン公爵領軍の一団と至近距離だ。
セイバーン公爵領側の関所の街を出て、こちら側に向かっていたようだ。
魔物達が興奮状態でかなり危険だ。
もしどちらかの街の方に突っ込んで来たら大変だ。
ただ魔物達は気づいてないか……気にしてないようだ。
すぐに街を標的にする感じではない。
今のうちに瞬殺すれば……
そう思った時だ———
兵士の一人が弓を射ってしまった……
やっちゃったよ……。
魔物達は領軍を確実に認識してしまった。
象魔物も蛇魔物もレベル30台でかなりデカイ。
いかに精強な公爵軍といえど、危ないんじゃないだろうか。
あっ———
蛇魔物が一瞬で、領軍を薙ぎ払ってしまった。
ほとんどの兵士が吹っ飛ばされている。
急いで助けないと———
今回連れて来ていたのは、ニア、リン、シチミ、オリョウ、サーヤ、ナーナ、リリイ、チャッピーだ。
「ニアは怪我した兵士達の回復を! オリョウ、サーヤ、ナーナ、リリイ、チャッピーは蛇魔物をやってくれ! 残りのメンバーは俺と一緒に象魔物をやる! 行くよみんな! 」
「オッケー! 」
「リン、わかった! 」
「オイラに任しとけい! 」
「あちしが来たー! 絶対助けるっしょ! 」
「はい」
「わかりました」
「わかったなのだ。すぐにゴチンしちゃうのだ! 」
「わかったなの。チャッピーがんばるなの! 」
みんなの動きに迷いは無い。
最短効率の動きだ!
シュッ———
———ビュインッ
オリョウの魔法銃が蛇魔物の脳天を穿つ!
何でもないことのようにオリョウが瞬殺した!
完全に魔法銃を使いこなしてる。
狙いも正確で、なによりもカッコいい!
ナーナの演舞の様な槍術が蛇魔物に迫る———
華麗な槍の五連突きが蛇魔物の顔面を穴だらけにする!
そのまま地面に縫い止められた蛇魔物は、脱力し沈黙した。
いつ見ても、ナーナの槍さばきは素晴らしい! 達人の域だ。
チャッピーが放った『魔法のブーメラン』は、大きく旋回しながら三回蛇魔物を捉え、綺麗に三等分にした。
そしてチャッピーのもとに戻るのかと思われたブーメランは、最後に方向を変えて蛇魔物の脳天を直撃した。
お陀仏だ!
チャッピー、完全に使いこなしている。
滞空時間も伸びているようだ。
この子も天才に違いない!
……親バカの自覚はあります……すみません。
リリイは、素早い軌道で蛇魔物に突っ込んでいる———
だが蛇魔物は意に介さず、大きな口を開けて待ち構えている。
やばい!
そのまま飲み込まれるのでは……
俺のそんな心配も余所に、リリイは更に加速する———
そのまま口に突っ込むのかと思った瞬間、リリイは横にずれながら、すれ違いざま蛇魔物の上顎を『魔鋼のハンマー』で思いっきり叩いた!
———バオンッ
凄まじい破壊音を残し蛇魔物の顔が破裂した!
エゲツな!
顔が爆散してしまっている。
なんて威力だ……
魔力の伝達がより洗練されているようだ。
それで破壊力が増しているのだろう。
ほんとこの子すごい!
やっぱり天才だ!
……親バカです……ごめんなさい。
サーヤが『家馬車』の屋根に乗って構えると、突然、空中にどデカイ岩が出現し蛇魔物を押しつぶした!
サーヤが種族固有スキル『納屋倉庫』を使い、保管してあった巨岩を転送したようだ。
こういう使い方ができるとは……
戦闘に活かせるとは……
この前サーヤが、大森林の迷宮前広場にある俺の家の横に、レントンと一緒に巨大な倉庫を作ってたんだよね。
ケニーと相談して硬い岩石を運び込んでたんだけど、攻撃用のものだったとは……
俺はサーヤの工夫に賞賛を送りたい。
スキルってやっぱり、使いこなせてなんぼなんだね。
未だに使いこなせていない俺とは大違いだ。
巨岩はサーヤによって転送回収され、頭を潰された蛇魔物の死体だけが転がっていた。
そして最後の一体の蛇魔物は公爵軍の方に向かっていたのだが、兵士達を回復していたニアが対処するようだ。
『如意輪棒』を取り出すといつものように———
———ピクシーホームランッ
今日もかっ飛ばしていた!
なんでもない事の様に瞬殺した!
もう次元が違う感じ……。
周りで見ていた公爵軍の兵士達が、全員口をあんぐり開けている。
さっきからの仲間達の活躍に衝撃を受けて、呆けたようになってしまっている。
よだれ垂らしちゃってる人もいるけど……大丈夫かな……。
残りは象魔物だが、これもリンとシチミにかかれば、瞬殺だ。
問題はどう倒すかということのようだ。
倒すスピードと、いかに綺麗に倒すか……
これは最近の暗黙の了解なのだ。
食材として考えた時に、なるべく可食部分にダメージが無いように倒す方がいいのだ。
リンもシチミも、綺麗に早く倒す為に『魔法杖』を選んだようだ。
それぞれの『魔法杖』の一撃が、象魔物の脳天を穿った———
やっぱりこれが一番食べる部分を傷つけないよね。
そして俺はというと、最後の一体を遠目から投石攻撃した。
落ちていた石を投げただけだが、見事命中した。
脳天直撃で瞬殺した。
最近密かに練習してたから、狙い通りに命中して嬉しい。
手近な物で遠距離攻撃出来るように練習して『投擲』スキルも身に付けたのだ。
遠くからクイックスローで投げたので、誰も俺が倒したとは気づかないだろう……。
俺達は回復していたニアの応援に集まった。
もっとも、ほぼ終了していたが……。
護衛の兵士に守られた軍服を着た綺麗な女性が出てきた。
どうもこの部隊を率いてるのは、この人のようだ。
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