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15.果物、美味!リンゴ編

「はらへった……」


 思わず口に出た。


「ほんっと、もう限界………この森、何か果物でもないかしら……」


 ニアもペコペコなことに気づいたようだ。


「あるじ、すぐ探してくる、待ってて」


 そういうとリンがビョンビョン弾みながら木々の間に入っていった。


 そして……一分もしないうちに帰ってきた。


 ——リンはやっ!


「あったよー」


 俺の前まで来ると、リンは誇らしそうに三回バウンドした。


 その後、球体の体の中から濃赤色の丸い果実が30個ほど出てきた。


 大きさはミカンほどだが見た目はリンゴだ。


 『波動鑑定』をしてみる。


 『マナップル』——魔力回復効果のある天然の霊果。魔法や霊薬の素材になる希少果実。栄養も豊富。


 これは当たりだ!グッジョブ、リン!


 俺は早速齧りついた。


 ——サクッ、パフッ


 ……おお……リンゴだ! リンゴの食感!


 ……口に広がる爽やかな香り、そして甘酸っぱい果汁のみずみずしさ……それでいて濃厚な味わい……


 ……体全体に染み渡るようだ……。


 うん、うまい! めっちゃうまい!


 そんな俺の様子を見て、ニアがリンゴに突っ込んだ。


 リンゴに抱きついたままかぶりつくと、「おおーー!」と一言叫んだ。


 その後は何も言わずに、一心不乱に食べ続けている。

 食レポとしては失格だが、その姿で充分美味いことを伝えている。


 リンも食べたようで、体をプルプル揺らしながら三回大きくバウンドした。

 リンの口にも合ったようだ。


 シチミだけ何かつまらなそうだ……。


 食べる必要ないんだもんね。

 でも食べようと思えば食べられるんじゃないかなぁ……


「シチミ、魔力回復効果があるみたいだから食べてみれば」


 シチミは、俺に『マナップル』を手渡され、気が乗らなそうに口に運んだ。

 といっても、宝箱の中に入れただけに見えるが……


 次の瞬間、シチミが箱の蓋をバタバタさせた。


「おー! なにこれ! オイラの全身に力がみなぎってくる!! 」


 シチミは、耐えられないとばかりに、変なステップを踏みながら、また箱の蓋を三回バタバタさせた。


 これでみんな仲良く美味しさを満喫だ!


 三十個の『マナップル』は、あっという間になくなってしまった。


 もっとも、半分ぐらいは俺が食べてしまったけどね……


「あるじ、まだいっぱいあるから、また取りに行く」


 そう言うとリンは、俺の返事も聞かずに、ビョンビョン行ってしまった。


 今度は五分ぐらいかかっただろうか……


「何個採ってきたんだい?」


「多分、三百個くらい」


 普通に答えるリン。


 え、……なんて数……

 そしてなんて早業……


「全部採ってきちゃったのかい?」


 心配になって訊くと……


「そんなことない。まだまだ、いっぱいある。もっと採ってくる?」


 そう言って、採りに行こうとするリンを慌てて止めた。


 採り尽くしてないなら良かったよ。

 とりあえず三百個もあれば、当面の食料としてはいいだろう。


 俺は、リンが採ってきてくれた『マナップル』を『波動収納』にしまった。


 さて、このまま一眠りしたいところだけど……


 ダリーに最終報告をしてあげないとね。


 ダンジョンの入り口に戻って、『迷宮管理システム』のダリーを呼んでみる。


 ダリーはすぐに現れた。

 立体映像なのに、どうやって動いているのか……

 ほんと不思議技術だ……。


 俺は、『アラクネ』のケニーのことや指示した今後の方針などを説明した。


 もっとも、ダリーは情報収集できていたようだが……


 これで安心して、再起動復旧モードに入るそうだ。


 しばらくは連絡が取れなくなるがしょうがない。


 俺はダリーと一緒に、一度ダンジョンマスタールームに戻ると、ダリーの指示を受けダンジョンの再起動に必要なコマンド入力をダンジョンマスターとして行なった。


 再会を約束して別れる時、ダリーは必ず完全復旧してみせると意気込んでいた。


 がんばれダリー!


 俺は心からのエールを送った。



 あー眠い……


 ……俺の固有スキル『怠惰』が休めと言っている気がする……

 いやきっとそうだ……そうに違いない……絶対休む……もう何が起きても休む……

 これは決してフラグではないのだ……決して………


 俺は何も起きないことを信じて、みんなで迷宮入り口前の広場の草の上で眠ることにした。


 本来、野宿は相当危険らしいが、ここは浄化された魔物しかいないし、俺がマスターだし、問題ないだろう。


 そんなことを考えつつ瞼を閉じると、一瞬で眠りに落ちた………。



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