1425.チャッピーの、家族。
今後の段取りがようやく終わり、みんな動き出した。
俺もすぐに動き出すべきなのだが、もう一つだけやらなければならないことがある。
それは、救出したチャッピーの家族についてのことだ。
俺は『蜂の巣砦』に戻り、待機してもらっているチャッピーのおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんと話をすることにした。
俺の血を飲ませてあげた後は、混乱してる最中だったし、チャッピーやタマルさんとの再会の感動で、俺とゆっくり話をできる状況じゃなかったからね。
「グリム様、孫のチャッピーをお助けいただき、ありがとうございました」
「チャッピーから今まで何があったのかを聞きました。本当にありがとうございます」
「チャッピーを家族のように育てていただき、本当に、本当にありがとうございます」
「グリム様、本当に、本当にありがとうございます。
今のチャッピーの姿を見て、あなた様に出会えてどれほど幸せだったのかわかります。
本当に、本当に……うう……」
部屋に入るなり、チャッピーのおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんが涙を流しながら、何度も何度も頭を下げてくれた。
「いえいえ、どうぞ頭を上げてください。
私の方こそチャッピーに出会えて、どれほど幸せで豊かだったか。
こんなに素敵な子に育ててくれて、私がお礼を言いたいくらいです」
俺もそう言って泣いてしまった。
チャッピーは、今まで亡くなったお父さんお母さんたちのことを話すことはほとんどなかった。
どんなに辛い思いでいたかは想像して余りあるものがあるが、それを言葉に出すことなく、じっとひとりで抱えていたのだ。
そしていつも天真爛漫に、明るくしてくれていた。
そんなチャッピーだが、家族と再会を果たしてからは泣きっぱなしである。
もうチャッピーの血縁はタマルさんだけだと思っていたが、複雑な形での再会ではあったが、とにかくまた出会えて良かった。
タマルさんも嬉しそうだ。
だが、彼女はもう泣いていない。
再会を果たし、無事に悪魔の支配から脱却した後も、彼女は勇者として気丈に振る舞っていた。
タマルさんも、やっと落ち着いて家族と話ができるだろう。
亜人の村の中核的な存在だったバディード村の村長さんであるチャッピーのおじいさんは、ターガーさんといい、その奥さんはシャムルさんという。
タマルさんのお父さんとお母さんでもある。
新しい種族『聖魔不死人』になったせいもあるかもしれないが、とてもエネルギーに満ちていて若く見える。
おじいさん、おばあさんと言いつつも、ナイスミドルと美熟女だ。
まぁ年齢的にも若いからね。
五十代前半くらいだと思う。
チャッピーの父親でタマルさんの兄にあたるタイオンさんは、かなりのイケメンでとても若い。
多分三十歳前後じゃないだろうか。
チャッピーのお母さんも若くて美人さんだ。
ミッピーさんという名前で、ネコ耳が三色という珍しい色合いだ。
もしかして三毛猫系とかだったりするのだろうか?
「チャッピー、どうする?
しばらく家族と一緒にいるかい?
そうしてもいいんだよ」
俺は、チャッピーにそんな声をかけた。
「ありがとなの〜。
でも……チャッピーは、リリイと一緒にやることがあるなの〜。
この国の人のために、この国を救うためにがんばるなの!」
チャッピーは目に涙をためながら、健気にそんなこと言った。
そんな姿を見たら……涙腺が弱ってるおじさんは、すぐに決壊しちゃうじゃないか……。
「チャッピー、国のための戦いは私がするから、家族と一緒にいてもいいんだよ」
叔母であるタマルさんが優しく声をかける。
「うん、大丈夫なの〜。
いつでも会えるなの〜。
チャッピーは、ご主人様とリリイといつも一緒なの!」
そんなチャッピーの言葉を聞き、俺の涙は止まらなかった。
もう、びちょびちょです。
リリイがチャッピーを抱きしめている。
「グリムさん、私たちの事はお気になさらず、チャッピーと今まで通り一緒にいてください。
この子の意思を尊重してあげて下さい」
父親のタイオンさんが神妙な顔で言った。
他の皆さんも頷いている。
「分りました。今まで通り家族として大事に、共に生きていきます。
それから……皆さんももう私たちの家族です。
これから共に生きていきましょう」
俺がそう言うと、皆涙を流して俺の手を握ってくれた。
こういう感動のシーンは苦手なんだけど、今日はしょうがないよね。
涙が止まらない……。
何も語らなくても、チャッピーたち家族の様子を見ているだけで、おじさんは自然と涙が流れてきてしまうのですよ……。
『限界突破ステータス』でも抗えないことが、結構あるんだよね。
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