1419.ジャーマンは、ダメでしょ!
ビャクライン公爵の操縦により稼働しているメカワイバーンは問題なく格闘戦を繰り広げている。
ビャクライン公爵もならし運転的な感じで、殴る蹴るといったオーソドックスな格闘戦をしている。
特別な動きをしているわけではないので、コマンドルームにいるハナシルリちゃんたちも大丈夫だろう。
コマンドルーム自体強固な作りだし、腹部に内蔵する際に緩衝性能を十分に待たせてあるからね。
オーソドックスな打撃戦でゾンビワイバーンと互角に戦っているんだから、メカワイバーンは充分強いと言って良いだろう。
ん! ゾンビワイバーン少し距離をとった。
……あの感じ……ブレスか?
ビャクライン公爵も気づいたようで、背中の羽根パーツを前方に弧を描くように動かした。
ガード体勢だ。
メカワイバーンの羽根パーツは、攻撃に使ったり防御に使うパーツなのだ。
おお、ゾンビワイバーンが火を吹いた!
ゲームやラノベの知識では、いろんなタイプのワイバーンがいるが、この世界のワイバーンは火が吹けるらしい。
そしてゾンビになっても火が出せるようだ。
あんなブレスを北門の外壁の上に向かって吐かれたら、臨戦態勢の多くの兵士がやられてしまう。
まぁ草原にいる兵士に対してもそうだけど。
要注意な攻撃だ。
このブレス攻撃を今見れた事は大きい。
何かしらの対策を考えることができるからね。
メカワイバーンは、正面からブレスを受けたかたちだが、翼によるガード機能で十分に凌いでいる。
なかなかに優秀な機体だ。
ナビーはメカワイバーンから離れる時に、ビャクライン公爵に粉々にして倒さないように言ってあるらしい。
ある程度ダメージを与え、無力化するようにという話をしていたようだ。
それもあってか、じっくり戦っているので、いい感じの格闘戦が繰り広げられている。
『ムーブトレースシステム』の機能も問題ないと言っていいだろう。
だがあのブレスの存在が分かったからには、早めに無力化したいところだ。
ビャクライン公爵もそう考えたようで、正面から殴るのを止めて、フェイントをかけてゾンビワイバーンの後に回り込んだ。
そして、翼ごと抱きついて拘束した。
と思ったのだが、拘束ではなく技の予備動作だったようだ。
その直後には、大きな衝撃音とともに大地が揺れた。
ものすごい揺れだ。
最初にゾンビワイバーンが上空から急降下した時と同じような揺れだ。
この揺れで、また都市内の家屋が倒壊したかもしれない。
と言うか、ビャクライン公爵何やっちゃってんだよ!
ビャクライン公爵は、ゾンビワイバーンにジャーマンスープレックスを決めていたのだ。
メカワイバーンって、そんな動きができちゃうの?
いや、そこに驚いてる場合じゃない。
この戦い方はダメだよね。
迷宮都市内に被害が出る可能性があるし。
そして、コマンドルームにいるハナシルリちゃん達は大丈夫なんだろうか……?
後でお説教案件だな。
まぁそれはともかく、ゾンビワイバーンは今の一撃で、一時的に動きが止まった。
それをメカワイバーンが掴み上げて、上空に飛び上がった。
そして、そのまま飛び去った。
完全ではないが無力化したから連れ去ったのだろう。
ナビーが後を追うように空を飛んでいる。
このまま離れたところに行って、『箱庭ファーム』に回収するつもりのようだ。
まぁ次のブレスを出す前に、速攻で対処できたからいいけどさ。
でも最後にジャーマン決める必要があった?
まぁあんな動きができるということがわかったのは、大きいけど……。
ビャクライン公爵って……ほんと微妙だよね。
褒めていいのか、怒っていいのか……。
一応これでゾンビワイバーンを全て無力化できた。
一旦『仮面の勇者マスカレード』とメカワイバーンはこのままフェードアウトさせておけばいいだろう。
「どうした宰相よ!
自慢のゾンビワイバーンは、仮面の勇者殿が倒してしまったぞ!」
『拡声』スキルで声を張り上げたのは、トワイライトさんだ。
おそらく宰相も、あっけなく無力化されたゾンビワイバーンを見て、唖然としているのではないだろうか。
トワイライトさんの呼びかけにも、全く反応しない。
「宰相よ、今度はあなたが姿を現しなさい!」
再度トワイライトさんが呼びかける。
すると、突然馬車がこちらに向かって走り出した。
御者がいるわけではないのに、馬が走りだしたのだ。
しかも……なんだ!?
馬車が五台に増えている。
もともとあった馬車の後ろから、四台が左右に出てきて五台が横並びになっている。
最初から五台あったのか……?
いやそんな感じはなかったと思うが……一体どこから……?
最初からあったけど何かの術で隠蔽していたのか?
それとも召喚したのか?
それにしては魔法陣の輝きなどはなかったが……。
いや、今はそんなことを考えてもしょうがないな。
それよりも、この突如出現した馬車……何か嫌な予感がする。
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