1415.宰相、登場。
コマンドルームに戻り、戦況を確認する。
キンちゃんの報告によれば、北区の北門前の街道エリアと、中区全域と南区全域に広がっていた『獣インプ』及び『獣ジャキ』は、ほぼ鎮圧されているとのことだ。
南区に現れた『魔物人』も殲滅されている。
ただ、まだ油断はできない。
相変わらず公国軍がいた最後尾に位置している馬車が不動のままなんだよね。
その場に留まっているのだ。
中に宰相がいるのかどうかも、まだ確認が取れていない。
それにしても、あのゾンビ軍団は何だったんだろう……?
切り札的に出してきた感じだったが……本格的に戦う前に、俺たちに連れ去られた。
それなのに、それに対するリアクションがなさすぎる。
戦力にするために、わざわざ『悪魔死人』にしたんだろうに……。
もっとも、まさか一気に拘束されて連れ去られるなんて想定していないだろうから、何も対策できなかっただけかもしれないけどね。
ただ気になるのは、今回投入してきたあの五百体のゾンビで全てなのかという点だ。
あれで全戦力だとは思えない。
もしかしたら……様子見というか、テスト投入みたいな感じで出しただけな可能性もあるのではないだろうか?
そう思いつつ、コマンドルームを出ると……何か嫌な感覚が走った。
……この空気の振動……何かくる!
そう思った瞬間だ——上空からドデカい物体が降ってきた!
——デュギャャャッ
北門の前に広がる街道に大穴がいた。
凄まじい揺れだ。
大地震と思える程だ。
このぐらい揺れたら、迷宮都市内の家屋とかいくつも崩壊しているのではないだろうか。
その大穴の上には、巨体がある。
こいつは……ワイバーン!?
……亜竜ワイバーンか!?
この姿は、おそらくワイバーンだ。
セイバーン公爵領で発見した『マシマグナ第四帝国』の遺跡とも言うべき『勇者力研究所』の中に、ワイバーンの死骸があったので見覚えがあるのだ。
以前、『コロシアム村』で倒した『亜竜 ヒュドラ』ほどの大きさではないが、それでも巨大だ。
こんなデカい奴に暴れられたらまずい。
速攻で倒さないと。
俺は、『波動鑑定』をかける。
……ただのワイバーンじゃないのか……。
『種族』が『悪魔死竜』となっていた。
どうやらこいつも……ゾンビらしい。
そして多分だが……亜人の人たちと同じように、悪魔によって作られた存在だろう。
うぉ、……もしかして、この一体は……脅しなのか?
よく見たら、上空にさらに四体の『ワイバーンゾンビ』が旋回していた。
あいつらがまともに都市を攻撃したら、大きな被害が出てしまう。
しかも四体同時に暴れられたら、厄介だな。
これがほんとの隠し球だったのか?
「愚かな者どもよ!
お前たちが結束したところで、我らには敵わぬぞ!
迷宮都市太守ムーンリバー伯爵よ、我は宰相ダクムンドである!」
ん! 突然声が響いた。
しかも宰相の声のようだ。
やはり来ていたか。
俺は、『視力強化』スキルで視力を強化し、街道の奥に置かれた馬車を見る。
一人の男が出てきて声を張り上げている。
拡声の魔法道具を使って話しているのだろう。
あいつが宰相のようだ。
背の高い細身の金髪碧眼の中年男だ。
「ムーンリバー伯爵よ、公王陛下の命令である、武装を解除して投稿しろ!
そして亡きトワイライト公女殿下を語り、勇者の末裔を語る者どもを引き渡せ!
さもなくば、上空のワイバーンたちがこの都市を踏み潰すぞ!
今降下した一体の衝撃を見ただろう?
これが都市内であれば、どれほどの被害が出るかわかるだろう?
猶予は10分!
武装解除をした偽公女と偽勇者を連行してこい!」
宰相の更なる声が響いた。
まさかここにきて、脅して交渉してくるとは……。
俺は、すぐに外壁の上で待機しているムーンリバー伯爵の下に駆け寄った。
「まさかワイバーンが五体も現れるとは……。
あの巨体が降りてきたら、どれだけの犠牲者が出るか……」
ムーンリバー伯爵が呆然としている。
「伯爵、恐れてはなりません。
宰相の要求に応じたところで、あのワイバーンで攻撃しないという保証などありません。
むしろこれ見よがしに攻撃するでしょう。
悪魔に関係している者の言う事など信じられません」
トワイライトさんが、毅然とした表情で言った。
「はい、トワイライト殿下。
ただ……五体ものワイバーンに一斉に攻撃されたらどういたしますか?」
ムーンリバー伯爵が冷や汗をかいている。
「心配無用、ワイバーン五体、私が引き受けよう!」
いきなり声が響いた。
そこに現れたのは、宙に浮かぶ仮面男。
あれは……仮面の勇者マスカレード!
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