1412.新種族、誕生。
俺の血を飲ませたタマルさんのお父さんとお母さんが、苦しみだした。
これ大丈夫かな?
何か体から蒸気のようなものが出ている。
前に悪に染まっていた吸血鬼に試しに少し飲ませたときには、死にそうになっていたんだけど……。
「父様! 母様!」
「おじいちゃん! おばあちゃん!」
タマルさんとチャッピーが、思わず声を上げる。
「大丈夫です。悪魔因子が消滅しているのです」
『アルテミス』様がそう言ってくれたので、みんな落ち着きを取り戻した。
おお! 今度は全身から赤黒い靄のようなものが噴出した。
それが全身を包み込んで、黒い繭のようなものになった。
黒い繭に包まれるとともに、仰向けの体勢で横たわっている。
この感じ……『吸血鬼』の人たちが『聖血鬼』に変性した時と同じだ。
繭はすぐに光り出した。
そして弾けるように、消し飛んだ!
二人が、起き上がる。
元はいかにもゾンビという感じの黒ずんだ土色のような肌だったが……今は綺麗な白い肌になっている。
全身が薄っすら光っているようにも見える。
「お、おお……な、なんだこれは?
体が軽い……。
そして頭もすっきりとしている。
力が漲るのを感じる。
……ん、タマル!? チャッピー!?」
「あゝタマル! チャッピー!」
タマルさんのお父さんとお母さんが、正気を取り戻したようだ。
タマルさんとチャッピーに気づき、声を張り上げた。
目には大粒の涙を浮かべている。
「父様! 母様!」
「おじいちゃん! おばあちゃん!」
タマルさんがお父さんに、チャッピーがおばあさんに抱きついた。
そして、四人は一つの輪のようにくっついて抱き締めあった。
嗚咽する四人を見て、俺も含め周りの者たちみんなが泣いている。
涙に霞む視界の中で、俺は何とか頑張って『波動鑑定』をかける。
んっ、やはり……。
『種族』が……『聖魔不死人』となっていた。
元は『悪魔死人』となっていたから、やはり新しい『種族』になったようだ。
そして……『聖血鬼』の皆と同じように、『状態』が『グリムの眷属』となっている。
どうやらまた俺の眷属が増えてしまったようだ。
————新しい種族『聖魔不死人』が創造されました。
『聖魔不死人の主』になりますか?
おお! 突然頭の中に声が響いた。
確か『聖血鬼』が誕生した時も、こんな天声が流れたような気がする。
———— 『聖魔不死人の主』になりました。
『聖魔不死人』族の基本情報が確認できるようになりました。
今後一定の範囲内で、『聖魔不死人』族に権能を与えることができるようになります。
また、天声が頭の中に響いた。
出たよ、相変わらず俺に尋ねておきながら、俺の答えを聞かずに決定しちゃうやつ。
ほんといつも思うけど、何なのよこれ!
まぁそれはさておき、『聖魔不死人』に焦点を当て、詳細表示と念じてみる。
すると……『種族』の特徴が表示された。
『『悪魔死人』が変性して発生した新しい種族。
悪魔因子が浄化され、聖なる属性になった種族。系統としては聖獣に近い。
『悪魔死人』の特徴である『魔芯核』が維持され、そのエネルギーで心臓も稼働状態になっている。
これにより聖なる属性の種族であるにもかかわらず、魔属性も持っている。
その影響で、高い魔力と強靭な肉体を獲得している。
特殊な条件を満たさない限り消滅しない不死の存在となっている。
極めて特殊なアンデッドで、通常の食事以外でも、太陽光を全身に浴びることで、活動エネルギーが補給される』
なるほど……『魔芯核』が体の中にあるのか。
そして止まっていた心臓も動いていると。
『魔芯核』の影響なんだろうけど、聖属性の生物でありつつ魔物のような魔属性もあるってことか。
そして……高い魔力と強靭な肉体って事は……魔法攻撃をしても強いし、物理攻撃をしても強いっていうことなのかな?
めっちゃ凄いじゃないか!
太陽光を浴びてエネルギー補給できるというのは、『聖血鬼』たちと同じだな。
なんかこの『聖魔不死人』もめっちゃすごい『種族』だと思うんですけど。
無敵っぽいなぁ……。
まぁ、とにもかくにも、悪魔因子を消滅させ、悪魔隷属状態を脱却できたから良かった。
そして聖なる種族になれたし。
これでチャッピーは、死んだはずだったおじいさんやおばあさん再会できたことになる。
そして、お父さんお母さんや村のみんなとも再会させてあげられる。
……良かった。
それにしても本当に、上手くいってしまった。
『アルテミス』様のアドバイスがなければ、思いつかなかったかもしれない。
『吸血鬼』たちや『吸血生物』たちが俺の血で『聖血鬼』や『聖血生物』に変性したのは、もともと血に対する敏感な体質を持っているからだと思っていた。
だからそういう特殊な状況でなければ、血を飲ませるという発想には至らなかっただろう。
だが、『アルテミス』様にはある程度可能性が見えていたのだろう。
悪魔因子融合状態で、かつゾンビという極めて特殊な状態だったわけだが、この場合にもなぜか俺の血が効いてくれたのだ。
いろいろ検証してみたい気もするが、それは後の話だ。
今は、成功したことを素直に喜ぼう。
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