1410.『アルテミス』様の、提案。
トワイライトさんとタマルさんの協力で、素早くゾンビたちを回収した俺は、一度コマンドルームに戻った。
あの場所にいたメンバーも一緒だ。
そしてコマンドルームから出て、下の『蜂の巣砦』の九階部分に入った。
蜂の巣砦は、全九階層になっていて六階以上には人を配置していない。
一旦、この九階にて策を検討することにした。
もちろんここに五百人以上を収容することはできない。
あくまで対策を考えるための一時的な場所である。
と言っても、名案が浮かんでいるわけではない。
「あ! グリムさん、今……『アルテミス』様から交信が……変わります!
……………………あら、だいぶ疲れているわねこの子。
肉体的な疲れって、こんな感じだったわね。
なんか久しぶり。
あらいけない。
そんなことを言っている場合ではなかったわ。
この子たちを救う方法を教えてあげにきたんだった。
私の大事なグリムのためにね。うふ」
ムーンラビーさんは、イタズラな笑みを浮かべた。
中身は『アルテミス』様だけどね。
ムーンラビーさんの直感通り、『アルテミス』様が知恵を貸してくれるようだ。
「ありがとうございます。
一体どうすれば……?」
「まぁ落ち着いて。
可能性の問題を話すだけだから。
えっと、わかっているとは思うけど、この子たちは既に死んでいるわ。
既に死んだ者を、生き返らせることは基本的にはできないの。
世界の理に反するから。
このゾンビたちは、生前の魂がその肉体に囚われた状態になっている。
だから、本来であればできることは、囚われた魂を解放してあげることだけ。
成仏させて輪廻の輪に戻してあげる。
その魂をゆっくり休ませ、転生できるようにしてあげるということ」
「……やはり成仏させてあげることしかできないのでしょうか?」
「うう、うわぁぁぁ」
俺の問いかけを聞いて、チャッピーがまた泣き出してしまった。
「実はね……この子たちの状況は、それすらも大変な状況なのよ。
リリイちゃんが『死霊使い』の能力を持っているわね。
その力があれば、囚われている魂を解放し輪廻の輪に戻してあげることができる。
だけど、『悪魔因子融合状態』は特殊で強力なの。
『悪魔因子』は、魂にも絡みついているはずよ。
だから『死霊使い』の力をもってしても、解放できないかもしれない」
え、最後の手段と思っていた魂の解放すら難しいのか!?
「……じゃぁこのまま……どうしようもないということですか?」
「いえ、もう一つの可能性があるわ。
アンデッドのまま生きる道を選ぶのであれば……だけど……」
「え、……それって……悪魔の操り人形で居続けるってことですか?」
「違うわ。そんなことはダメよ。
魂の解放はできないでしょうけど、今の状態を解消することはできる可能性がある。
つまり『悪魔因子融合状態』と『悪魔隷属状態』を解消できるかもしれない方法があるのよ」
「それは一体どんな?」
「特別な方法……特別な人にしかできない方法よ。
でも、ここにはその特別な人がいるのよ。
神の力のようなものを発揮する人がね」
『アルテミス』様はそう言うと、俺を見てニヤリと微笑んだ。
「新たな種族を作り出すしちゃう人がいるのよ。
ねぇ?」
『アルテミス』様は、再び俺を見つめてニヤっとした。
まさか……俺の血か?
なんとなく、言わんとしてることがわかってきた。
吸血鬼の人たちに俺の血を飲ませたら……『聖血鬼』という新しい種族になった。
それをやれってことか?
「もうわかったでしょう。
高いエネルギーを秘めた特別な血を飲ませることで、悪魔因子を消滅させ、悪魔の隷属支配を脱させる。
そして、新しい種族へと変化させる可能性……。
それは、あなたの血よ。
『聖血鬼』『聖血生物』を創り出した時と同じことを試してみるしかないと思うわ」
……なるほど。
さすが神様だけあって、俺が『聖血鬼』『聖血生物』を誕生させてしまったことを知っていたようだ。
勝手に新しい種族を誕生させちゃって、もしかしたら神様に怒られんじゃないかと思っていたが、怒られないで済むようだ。
と言うか、今はむしろ積極的に新しい種族を誕生させることを推奨されている。
少し複雑な感じもするが、ゾンビにされた人たちを救える可能性があるのなら、やる価値は十分にある。
ただ……上手く悪魔因子を排除し隷属支配から脱却させたとしても、それと同時に違う種族になってしまう可能性が高い。
魂を解放して昇天させることは、おそらくできない。
だから『アルテミス』様は、魂の解放は難しいけど、悪魔因子は消滅させられる可能性があるという言い方をしたのだろう。
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