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1413/1442

1404.突然現れた、水の大精霊の使い。

 アクアリアさんに、水魔法を使った浄化をやってもらうが、下手をするとその能力が多くの冒険者に知られてしまう可能性がある。


 ただ既に知っている冒険者も何人かいるので、多少広まっても止むを得ないだろう。


 彼女が『水使い』であるということだけは知られたくないが、珍しい水魔法が使えるという程度であれば、ギリギリセーフと判断した。


 俺との関係を悟られないために離れた場所に転移させたので、直接ではなく念話にて連絡が入った。


(この状況は……聞いてはいましたが、かなり広範囲ですね)


(見ての通りです。アクアリアさんの水魔法を広範囲に発射することは可能ですか?)


(これほどの広範囲には……難しいですね。

 でも少しずつでもやります。できるだけやってみます!)


 彼女は手のひらを前方にかざし、その方向にいる人々に『水魔法——清めの雨』を発射した。


 ある程度広範囲に拡散しているが……やはりこの広場すべてに清めの雨を降らすというわけにはいかないようだ。


 彼女の言う通り、何度か繰り返してやってもらうしかないだろう。


 そう思っていた時だ——


 ——ビュウンッ


 風切り音とともに、何かが降ってきた。


「いやぁーまいったなぁ。

 なんか大変な時に来ちゃったみたい。

 と言うか、そういう状況だからウンディーネ様が遣わしたってことか……」


 なんだ!?


 大きな虫の背中に……青いミニスカートの着物と下駄を履いた女の子がいる。

 五、六歳ぐらいに見える。

 青色の髪がボブカットになっていて、眉毛も瞳の色も青い。


「アクアリアちゃん、こんにちは!

 あなた、今代の『水使い』でしょう?」


 え、女の子がアクアリアさんに話しかけた。


 しかも、名前を知っているだけでなく『水使い』であることも知っている。


 周辺にいる冒険者は、呪いが解除されていない者も多く、ほとんど聞かれてないだろうからいいが、一体なぜ知ってるんだ?


「ええ、そうだけど、あなたは?」


「あー、私ね。私は、水龍のタツコ。

 水の大精霊ウンディーネ様から、あなたを助けるように言われて来たのよ。

 過去にも何度かその時代の『水使い』の子を助けてきたのよ。

 もう手慣れたものだから安心して」


 俺は、『聴力強化』スキルで会話を拾っているわけだが、耳を疑うような発言が……。


 水の大精霊ウンディーネ様……?

 水龍?

 過去に何度も『水使い』を助けてきた?


 ……なんかすごい話が展開されている。


「私を助けてくれるのですか?」


「もちろん、そのために来たんだし!

 本当はね、あなたや、あなたがほの字の殿方が、大精霊の神殿を見つけて訪ねてくるの待ってたんだけど、急遽、私の力が必要だろうって、送り出されちゃったのよ」


「え、……」


「あー心配しないで。

 私たちはストーカーとかじゃないから。

 水の大聖霊様は、『水使い』に加護と力を与える役目があるから、あなたのことをモニタリングしてたのよ。

 最初にいたあの勇者たち、ほんとムカつくわよね。

 今度私と一緒にコテンパンにしてしまいましょう!

 ついでに言っておくと、水の大精霊の神殿を守っている『人魚族マーメイド』たちも、みんなあなたのファンだから。

 よろしくーって言ってたわ」


 なんかこの緊迫した戦場とは場違いなトーンで、驚くべき会話が展開している。


 聞いているアクアリアさんも、唖然として言葉を失っている。


「おっと、ごめんなさい。

 余計な話をしすぎちゃったわね。

 そうだ、紹介が遅れたけどこの子は、珍しい水の上を走れるアメンボ型虫馬(ちゅうま)『アシタカ』のメンボウよ。よろしくね」


「は、はい、よろしくお願いします」


 アクアリアさんは、呆然としたまま挨拶をしているが、あの虫は虫馬(ちゅうま)なのか?

 しかも水の上を走れるのか?


 凄いな……でも今は、そんな事はどうでもいい。


「大体の状況は把握してるから、この呪いの状態を解呪したいわけでしょう?」


「はい……もしかして、何か良い方法が?」


「もちろんよ!

 アクアリアちゃんの『水魔法——清めの雨』を『アシタカ』のメンボウが背中に乗せている壺に注入して。

 そうすると、壺が増幅してこの辺一帯に雨として降らせることができるから!

 これは、特別な壺なのよ。

 本当は、私も人の姿でなく龍の姿に戻ったらブレスが出せるから、『浄化のブレス』で呪いを解くことができるんだけど、龍になったらみんなびっくりしちゃうでしょう?

 それにこの規模なら、メンボウの背中の壺で充分だから。

 さぁ早くやって!」


 アクアリアさんは、戸惑っているが言われるままに、ジャンプでメンボウの背中に乗った。


 そして、壺に手をかざし『水魔法——清めの雨』を放った。


 壺は、大人が入れるほど大きいが、それでも『清めの雨』が収まりきれるのだろうか?


 少し心配になったのだが、問題ないようだ。

 吸い込まれるように、壺の中に入っている。


「メンボウの背にしっかり掴まって!」


 水龍の指示に従いアクアリアさんが捕まると、メンボウがジャンプして、高く舞い上がった。


 すると壺から四つの腕が出て、腕の先から水が放出された。


 腕の先にシャワーの口みたいなものが握られていて、小さな水滴となって放射されている。


 それが雨のように、この広場一帯に降り注いだ。


 確かにアクアリアさんの『清めの雨』の効果範囲を、一気に広げられている。


 荒れ狂っていた冒険者たちがおとなしくなっていく。

 呪いで苦しんでいた冒険者たちも、元に戻っていく。


 一気に解呪できたようだ。


 もっとも二種類の呪いにやられた冒険者たちは、それぞれにぐったりしている。


 まぁ命に別状はないだろう。


 ただ狂乱していた冒険者たちは、お互いに傷つけあったりしているから、かなりの怪我人が出ている。


 その処置はしなければならない。


 そう思いつつ状況確認すると、すでに『魔物人』『獣インプ』『獣ジャキ』を倒し終わっていたピンク、ゴールド、ブルーの三人が、治療に当たってくれていた。


 さすがである。


 ニア、ミネちゃん、カジュルちゃんは、仮面を被った自称勇者であって、『勇者』の『称号』も『職業』も得ているわけではない。


 だが、俺的には、彼女たちは本当の勇者だ。


 こんなに活躍をしているんだから、少なくても『勇者』の『称号』くらい得てもいいと思うんだが。


 まぁこの世界のシステムに、文句や要望を言ってもしょうがないけどね。




読んでいただき、誠にありがとうございます。


ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。

誤字報告も、助かっています。ペコリ。


次話の投稿は、明日か明後日の予定です。


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『ブックマーク』と『いいね』も、お願いします。


何卒、よろしくお願いします。

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