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132.動物達の、保護。

 俺達は、サーヤの家に戻るのを止め、オリ村まで戻ることにした。


 元々マグネの街にいた想定のサーヤ達居残り組は、そのまま残ってもらった。


 別件でやってもらいたいことがあったのだ。


 まずサーヤ達には、一旦家に戻ってもらって、鶏達の飼育スペースの拡張をしてもらう。


 そして霊域にいる烏骨鶏達を追加で四十羽連れて来るように依頼した。


 全羽連れて来ようかとも思ったのだが……一応霊域に何羽か定住させてみようと思う。


 もしかしたら烏骨鶏の『霊獣』が誕生するかもしれないし。


 そう考えると大森林にも烏骨鶏を定住させても面白いかもしれない。

 烏骨鶏の『浄魔』も誕生するかもしれないからね。



 戻る道中、またパレードのように人が寄ってきてしまった。


 なんだか少し慣れてきた……。


 今馬車の中にいる人型ポジションは、俺とニアとリリイとチャッピーだけだ。


 リリイとチャッピーも慣れてきたようで、馬車の窓から顔を出して手を振っている。

 子供は順応性が高いらしい……


 俺は街を出る前に、少しだけ仮設住宅のエリアに寄った。


 本当はサーヤの家に戻ってゆっくりしてから、仮設住宅を訪ねて住み心地や困っていることがないか訊こうと思ったのだが……。


「ニア様、グリム様ありがとうございます。こんなに良い家に住まわせていただいて……」

「ほんとです。今まで住んでいた家より全然立派です」

「夢みたいです。ありがとうございます」

「このご恩は一生忘れません。何でもします。言ってください」

「あゝ女神様……」

「ご慈悲をありがとうございます」

「グリム様! 是非我が娘を嫁に……」


 みんなそれぞれ涙ぐみながら、俺達にすがりつくように感謝の言葉を述べてくれた。

 若干……変な申し出もあったのだが……。


「皆さん、困ってることはありませんか? 」


「大丈夫です。これ以上は望みません。ご飯も毎日、肉が食べられます!」

「ほんとに生きててよかった。こんなに美味しいものを毎日食べた事はありません」


 よかった。

 とりあえずは元気に過ごしてくれているようだ。


 何よりも衛兵隊やサーヤ達そして街の皆さんが、すごく頑張ってくれているのだろう。


 やはり町の住民が温かく受け入れてくれて、手伝ってくれているのがすごく大きい気がする。


 トルコーネさんも言っていたが、町の住民も妖精女神に救ってもらったという気持ちがあって、みんな感謝の気持ちが強いらしい。


 避難民に寛大にというか、むしろ積極的に助けてあげたい、女神様にしていただいたことを少しでも返したい、という気持ちで接してくれているようだ。


 俺達が何も言わなくても、恩返しというか恩送り……自分の受けた恩を、他の人に受け渡すということができているようだ。

 俺は心が温かくなった。


 身寄りの無い子達もいたようだが、一緒に避難してる途中で仲良くなった人達が面倒を見てくれていたり、一緒に暮らしてくれているそうだ。


 この街には孤児院は一つしかないらしいのだが、今のところは孤児院に入るのではなく仮設住宅で暮らしている。

 今暮らしてくれている人が引き取って、家族にしてくれるのが一番良いのだが……。


 あとこの人達の仕事もないと困るよね。


 もしかしたら元々住んでた領都や街が復興したら戻るかもしれないけどね……。


 衛兵長の話では、今後どうしたいかというところまでの聞き取りは行われていないらしい。


 ただ住民の数は街の今後の運営にも関わるので、代官さんの方で避難民達について意向調査などもしてくれると言っていた。





 ◇





 俺達は馬車を飛ばし、オリ村まで戻ってきた。

 もうすっかり夕方になっていた。


 周辺に魔物がいないのは『波動検知』で確認しているし、スライム達がある程度の間隔で巡回しているので大丈夫だとは思うが、こちらに向かっている家畜動物達を迎えに行くことにした。


 もう近くまで来ているからね。


 夜の間に野生動物に襲われて死んじゃってもかわいそうだし。


 俺達は、衛兵長にその旨を告げて出発した。


 二股の起点から南東の街道を進むと、動物達の集団がいた。


 牛、ヤギ、羊、が中心のようだ。野良スライム達もいるようだ。


 なんとなくスライム達が、この動物達を守りながら誘導しているような気がしないでもない。


 そんな行軍だ。


 何故か最後に茶色の鶏の一団がいた。

 鶏が長距離を歩いて移動してくるなんて、通常じゃ考えられない。


 誰かの保護や誘導がなきゃ無理だよね。


 やはりこのスライム達がやったんじゃないだろうか。

 スライム達が三十体位で、このグループ全体を取り囲むようにしてるからね。


 馬車が近づいていくと……全体の行軍が止まった。


 俺達が馬車を降りると、スライム達がビョンビョン弾みながら集まってくる。


 リンは、迷宮調査からまだ戻っていないのでここにいないが、いたら喜んだに違いない。


 集まったスライム達が、嬉しそうに三回バウンドしている。


 俺は『テイム』スキルの『集団テイム』コマンドを使ってみようかと思ったのだが……


 一応、声をかけてみることにした。


「みんな、俺の仲間になってくれるかい? 」


 するとスライム達が一斉に二回バウンドした。


 そして他の動物達も一斉に鳴き出した。


 『使役生物(テイムド)』リストを確認すると……


 どうやら、みんな仲間になってくれたようだ。

『集団テイム』コマンドを使う必要がなくなってしまった。


 俺達は、その後も動物達の気配を『波動検知』で探りながら、仲間にしていった。


 オリ村に戻る頃には、かなりの数になっていた。


 牛———五十六頭

 ヤギ———七十三頭

 羊———六十四頭

 鶏———九十五羽

 スライム———三十二体


 馬等の荷引き動物がいないし、豚もいない。

 種類が偏っているから、どこか特定の村の牧場にいたものが、まとめて逃げてきたのかもしれないね。



 ちなみに『虫馬(ちゅうま)』と呼ばれる虫型の荷引き動物の気配もあったが、敢えて近づかなかった。


 そのままでもオリ村に辿り着くコースにいたし、俺の仲間にするよりも『虫使い』のロネちゃんの仲間にした方がいいような気がしたのだ。



 俺は、オリ村の手前の街道沿いのスペースに動物達を誘導し、ここで待機するように念話で伝えた。


 新しく仲間になったスライム達には、引き続きこの子達の警護をしてもらうことにする。


 今日このエリアを巡回していたのは、リイチの率いるスライムチームだったので、リイチにも念話をして、この動物達と新しく仲間になったスライム達のことを伝え、警護を手厚くするように指示を出した。


 また、人族の街で暮らす俺の仲間にはいつもしている事だが、ステータス偽装して『共有スキル』などが分からないようにしておいた。


 オリ村に戻ると、今日到着した避難民達が、街道沿いで休んでいた。

 みんなほっとした顔をしている。


 俺達は、オリ村の広場に通され、夕食をとりながら衛兵長と打ち合わせを行なった。






読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、5日の予定です。


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