1400.『黒の賢者』、再び。
南区では、他にも派手な戦闘が繰り広げられている場所がある。
『ツリーハウスクラン』周辺だ。
さすがに今回は、『ツリーハウスクラン』を狙ったように現れたわけではないが、念のためクランに残しておいた戦力が、その周辺に押し寄せてきた『獣インプ』『獣ジャキ』を倒しているのだ。
今のクランの防衛戦力は、冒険者長をしているニャンムスンさんのパーティー『美火美』と残っている冒険者たちだ。
クランから大きく離れているわけではないが、クランの外で散開して戦っている。
まぁその辺の判断は任せると事前に言ってあったので問題はない。
クランには『デミトレント』たちがいるから、もしクラン内に入って来ても、ある程度は凌ぐことができる。
もし状況が厳しくなれば、念話が入るから俺の方で対処する予定だ。
そしてクラン農場にいる動物たちは、自由に行動させている。
動物たちはみんな俺の『絆』メンバーなので、『共有スキル』を使って怪我人の治療をしたりできる。
それ故に自由行動にして、周辺の人々の治療などを行ってもらっているのだ。
今のところ、クラン周辺も特に問題はなさそうだ。
南区は、冒険者戦力も厚いだけに、敵の殲滅ももう終わりそうだ。
そう思っちゃったのがフラグになったのか……『コマンドルーム』のモニターが、新たな敵の姿を捉えた。
うーん、もう一波乱あるってことか……。
突如として現れたのは、『魔物人』だ。
また現れたのか!?
本来は、セイバーン公爵領での戦いで『正義の爪痕』を壊滅させたことによって、駆逐したと思っていたのだが、前にも捕まえた『ドクロベルクラン』の奴らが『魔物人』になっていた。
あの時『黒の賢者』が何かした疑いが強かったが、今回も『黒の賢者』が何かしたようだ。
なぜなら、今『魔物人』になっている奴らは、捕まえて牢に入れていた奴らだからだ。
捕らえていた貴族やその私兵やゴロツキたちが、魔物化したらしい。
今、キンちゃんから報告が上がってきたのだ。
『キンちゃん放送局』の撮影ユニットの操作担当になっているキンちゃんの仲間の『ライジングカープ』が、状況を捉えていたらしい。
牢には『黒の賢者』もいたから、あいつが何かした可能性が高い。
この混乱した局面を好機と見て、魔物化薬を使ったのだろう。
『正義の爪痕』の開発段階では不完全だった『魔物化薬』だが、やはり何かしらの改良が加わって、すぐに人を魔物化させることができるようになったのだろうか?
だがそうだとすれば、もっと頻繁に使ってもおかしくない。
公国軍の兵士たちを魔物化させても良さそうなものだ。
それをしないという事は、何か問題があるのか?
改良の試作品ということで、数が少ないとかの可能性もありそうだな……。
もしくは、『正義の爪痕』がやっていたように魔物化促進ワインを定期的に摂取させる下準備は必要だが、魔物化のトリガーとなるものを強いマイナスの感情ではなく、何かの薬に置き換えることができたとかなのかもしれない。
そうであるなら、『黒の賢者』と特に関係が深い者だけが魔物化するということも説明がつく気がするが……。
まぁ今考えてもしょうがないか。
後でゆっくり検証すればいいだろう。
キンちゃんからは、レベルの報告もあった。
『魔物人』は、それぞれレベル40くらいまで上がっているらしい。
これも厄介だ。
『魔物人』は、頭と心臓の両方を潰さないと倒せない。
五十体以上現れているから……手間取ると厄介だな。
そんなふうに思って見ていると、モニターの映像が奥の方からゆっくりと現れる黒い影をとらえた。
『黒の賢者』だ。
こいつだけが魔物化していないという事は、やはりこいつが何かをしたのだろう。
しっかりと拘束していたはずだし、十分な身体検査もしていたはずだが、悪魔契約者だけに何かできたのかもしれない。
もしくは、この混乱に乗じて手助けする者が現れたのかもしれない。
そう思った矢先だ——
「ヒョッヒョッヒョヒョ、皆殺しだぁぁぁ!
この国の人間を皆殺しにしてやるぅぅぅ!
さあ今こそ約束を果たそう!
我の魂と体を食らい、その力を現せぇぇぇぇ!」
絶叫にも似た奇声を上げた『黒の賢者』を見ると……体がモコモコと盛り上がり変形していく。
うわ、真ん中から縦に裂けた!
そして、ほっそりとした背の高い黒い影が現れた。
ドス黒い波動を纏っている。
こいつは……悪魔だ!
しかも角が三本! 上級悪魔だ!
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
誤字報告も、助かっています。ペコリ。
次話の投稿は、明日か明後日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から『評価』をお願いします。励みになります。★★★★★
『ブックマーク』と『いいね』も、お願いします。
何卒、よろしくお願いします。




