1399.新造船は、ウサギ型。
ミネちゃんが最初に作った『浮遊戦艦 ミニトマト』は、ベースが飛竜船なので、サイズ的には大型の屋台船くらいのサイズだったが、今回の新造船はその二倍くらいのサイズになっている。
特筆すべきはその意匠で、この世界の人にはとても船とは思えないものだ。
これは俺の希望をゴリ押したもので、船の形ではない。
俺の元いた世界のエジプトにあったスフィンクスのような形をしているのだ。
動物が伏せをしているような形である。
これは、俺が好きだったリアルロボットアニメの木馬型戦艦をオマージュしたものだ。
黒をベースにした船体色にして、『ブラックベース』という名前にしようと思っていた。
だが今回、急遽『アルテミナ公国』奪還戦に投入するにあたって、『アルテミナ公国』の人たちが親しみを持ちやすいように意匠変更をしたのだ。
基本的な伏せの姿勢は変わらないのだが、頭部パーツをウサギの形にした。
ウサギが伏せをしたような形になっていて、月の黄色をベース色にしている。
『アルテミナ公国』には、『月兎』といった珍しいウサギがいるし、守護神たる『アルテミス』様の使いとも言われている。
そんなウサギにデザインを変更したわけである。
そして名前は、『イエローベース』にしようかとも思ったが、まぁテスト用の船だし『ラビットベース』という名前にした。
そもそも俺がほんとに作りたい木馬型のオマージュ戦艦は、もっと巨大なものだから試作船の今回は、可愛い感じの名前でいいだろう。
少しして、中区上空に『ラビットベース』が到達する。
「この国の民を傷つける事は許しません!」
「月光の勇者タマル、推して参る!」
『ラビットベース』の前足の部分に立って、トワイライトさんとタマルさんが叫ぶ。
二人とも『共有スキル』にセットされている『拡声』スキルを使って、声を届けている。
もちろん『キンちゃん放送局』も二人の動きを追っているので、空中モニターにも写し出されている。
空中モニターと言っても、投影ユニットが映像を投影しているだけであって、空中にモニターが存在しているわけではない。
便宜的に空中モニターと呼ぶのが便利なので、そう言っているだけだ。
『ラビットベース』が高度を下げ、トワイライトさんは船の上から『月光弓』を連射する。
空中にいる『獣インプ』は、次々に撃ち落とされていく。
タマルさんは船を飛び降り、『獣ジャキ』たちを屠っている。
この映像を見た市民たちは、感動し盛り上がることだろう。
これでもう中区はいいね。
後は敵を殲滅するだけだ。
俺は、次に南区のモニターを確認する。
南区でも同様に、『獣インプ』と『獣ジャキ』が大量に出現していたのだ。
南区は、中堅以上の冒険者が多く、冒険者の戦力が充実している。
公国軍が迫っている事は皆わかっていたので、冒険者たちのほとんどは、迷宮に入らず防衛のために残ってくれていたのだ。
だから南区では、最初から安定した戦いが繰り広げられていた。
とは言っても、レベル40の敵なので、実力のある中堅冒険者でもサクサク倒すと言うわけにはいかない。
それに、敵が大量発生している為に、パーティーの連携も取りにくい状況なのだ。
だが、冒険者たちは焦ることなく、しっかり戦えている。
それは、冒険者たちを指揮して戦ってくれている人たちがいるからだ。
まずは、先日迷宮のエリアマスター討伐を果たしたBランクパーティー『金獅子の咆哮』のレオニールさん達だ。
彼のクラン『強き一撃』のメンバーだけでなく、周辺の冒険者にも適宜指示を出して、戦闘を指揮してくれている。
もちろん戦いにおいても先頭に立って戦っているので、強力な戦力になっている。
もう一組のBランクパーティーで、『ツリーハウスクラン』のメンバーでもある『闘雷武』のみんなも、大活躍だ。
リーダーのアミスさんを筆頭に、他の冒険者たちへの指示出しと、フォローもしてくれている。
そしてもう一組と言うか、もう一つの集団が良い働きをしてくれている。
それは、ニアの残念親衛隊改め自警団組織『ニアーズハイ』のメンバーたちだ。
リーダー格の十二神将を中心に、各所で良い働きをしてくれている。
本来は自由でバラバラな冒険者たちであるが、うまい具合に機能的に連携している。
やっぱり現場にしっかり指揮をとってくれる人材がいると、全然違うね。
ちなみに『冒険者ギルド』のギルド長やギルドのスタッフたちは、迷宮の入口付近を固め、近づく『獣インプ』『獣ジャキ』を倒してくれている。
彼らが担当してくれているのは、迷宮の状況確認だ。
迷宮の魔物に異変がないか、確認してくれているのである。
万が一にも、迷宮外に溢れ出すなんてことが起きたら困るからね。
今のところ、迷宮は何ともなさそうだ。
以前迷宮都市が三方向から魔物の襲撃にあった時も、迷宮は大きな反応を示さなかったので、今回も多分大丈夫だろう。
こんなことを思ってしまうと、フラグになりかねないのだが、きっと大丈夫なはずだ……。
大丈夫に違いない。
何かあっても、ギルド長がフラグをへし折ってくれるだろう。
絶対そうに違いない。
……逆にここまでフラグっぽい思考を重ねれば、フラグにならないんじゃないかと自分を納得させている今日この頃……。
まぁそんなことはどうでもいいか。
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