1396.戦力として活躍する、新人パーティー。
『希望の枝』のみんなも、大健闘だ。
敵の数が多いから、多少テンパっている感じはあるが、良い経験になっているだろう。
その中でも、やはりツリッシュちゃんの動きは抜群だ。
先祖伝来の『魔剣 月白』で、『獣ジャキ』を斬りまくっている。
レベル差が大きいから、一撃で屠るというわけにはいかないが、手数で圧倒して、一体づつ着実に倒している。
『月白』の能力で、閃光を発して目くらましができるので、今のところ敵に動きを止められることもない。
そして、ツリッシュちゃんよりも更にレベルが低いルージュちゃんも、なんとか戦えている。
『魔剣 風清』を上手く使い、風の攻撃を混ぜながら連続の斬りつけを行っている。
この剣は、風属性を帯びた剣で風を出す機能があるのだ。
レベル差から瞬殺というわけにはいかないし、多少の攻撃も受けているが、時折り剣からの風が彼女の髪を揺らし、回復している。
……もう使いこなしてるのか。
この剣の力を引き出せれば、傷を癒す回復の剣にもなると言われていたが、もうその機能を引き出している。
この感じからすれば、自分を回復できるし、他の者を回復することもできるだろう。
他のメンバーも協力して戦っている。
ツリッシュちゃんとルージュちゃんは、剣の性能もあって自由に戦っている感じだが、他のメンバーは迷宮探索のときのようにチームとして機能的に戦っている。
良い連携だ。
やはりタンクが多いパーティーは、安定するね。
男子メンバーの『タンク』ポジションのアマダくんとウラキくんが、前面に出てメインタンクとしての役割を果たしている。
アタッカーとしての役割もある『サブタンク』のレイくんとビダンくんは、後方で周囲を警戒している。
敵の数が多いので状況により囲まれる場合があるから、この配置にしているようだ。
これで全方位を守るタンクの壁が作れるわけだ。
良い判断である。
この体制での『アタッカー』は、本来『斥候』ポジションの狼亜人の少女セレンちゃんである。
リリイたちと同じ八歳児である。
以前参加した闇オークションで、父親のベオさんと一緒に保護した女の子だ。
彼女は、もともとこのパーティーでは一番レベルが高かったし、狼亜人の優れた身体能力もあって、剣と体術を混ぜた縦横無尽の攻撃を繰り広げている。
時には盾の前に出て接近戦を行い、時には盾の後ろから投擲武器を投げている。
この子もある意味天才と言っていい逸材なんだよね。
そして、『ロングアタッカー』として矢を放っているのが、彼女の姉のエクセちゃんだ。
父親のベオさん仕込みの弓の腕は、相変わらずだ。
いや、さらに磨かれている。
ハートリエルさんから、『魔鋼弓』という強力な弓をもらえたことも大きい。
ハートリエルさんは弓の名手だが、彼女の予備の予備的な弓をプレゼントしてくれたのだ。
ほとんど使う機会がないから気にしなくていいと言っていたが、かなりの性能の魔法の弓である。
矢を必要とせず魔力矢を発射できる強力なものだ。
『魔法使い』ポジションの狸亜人のポルセちゃんも、健闘している。
彼女は、当初から魔法スキルを持っていたわけではない。
それ故に、『エンペラースライム』のリンちゃんや『ミミックデラックス』のシチミが使っていた魔法の杖と同じ物を貸したり、魔法の巻物を使わせたりしていた。
だが日々の努力によって、彼女はなんと魔法スキルを発現させてしまったのだ。
彼女に発現したのは、『火魔法』だ。
しかも、いきなり中級の『火魔法』が発現したのだ。
それは、『火球』である。
『火魔法』は、街中では使いにくいのだが、彼女もリリイに近いくらいに精密な魔法のコントロールができるので、危なげなく使えている。
見事な戦いぶりだ。
『ヒーラー』ポジションのハウジーちゃんも、大きく成長した。
彼女は、『勇者の可能性』という『称号』も得ている。
うまく育ってくれれば、彼女も『勇者』の『称号』を得て、さらには『職業』としての『勇者』も得て、『真の勇者』になってくれるだろう。
早いか遅いかの問題だけで、俺は必ずそうなってくれると思っている。
彼女は『ヒーラー』だが、回復系の魔法スキルを持っているわけではない。
それゆえに、当初は『竹筒水鉄砲』を使った回復薬の散布で回復を行っていた。
努力家で、誰よりも上手い『竹筒水鉄砲』の扱いを見せていたので、この前ご褒美として、彼女専用の『回復ショットガン』を作ってプレゼントしたところだ。
射程範囲がかなり広いので、ツリッシュちゃんやルージュちゃんが突出しても、充分回復をしてあげられるのだ。
それからもう一つ、『魔法銃 マグナム』という銃も持っている。
これは、魔力弾を発射する魔法銃で当然攻撃用の武器だ。
俺が与えた物ではない。
彼女たちが迷宮探索中に、宝箱で発見したものだ。
その報告を受けたときには俺も驚いたし、『冒険者ギルド』でも結構な騒ぎになったらしい。
迷宮の宝箱から武器が発見されることもそれなりにあるのだが、魔法銃が発見されるのは極めて珍しいことだったのだ。
しかも、彼女たちは上層の中盤エリアまでしか行っていないので、その範囲の宝箱で出たから、驚きが大きかったわけである。
宝箱で得た物を冒険者がすべて『冒険者ギルド』に報告しているわけではないので、今までにもあったのかもしれないが、記録としてはほとんど残っていないのだと思う。
そんな貴重な銃は、パーティーで相談し、彼女が使うことになったのだ。
そして、しっかり使いこなしている。
このまま彼女が強力な銃使いになってくれれば、銃をメインにして戦う勇者が誕生するかもしれない。楽しみだ。
ちなみに俺が手に入れて、たまに使っている魔法銃ほどの高威力ではない。
あれは、大森林の『テスター迷宮』のダンジョンマスタールームの宝物庫で手に入れた特別な物だからね。
いずれにしろ、彼女はしっかり戦力として活躍しているのだ。
この新人パーティーは、今のところ危なげなく戦えている。
彼女たちからしたら、レベル40は完全な格上なのだが、そんな風には思えない立派な戦いぶりである。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
誤字報告も、助かっています。ペコリ。
次話の投稿は、明日か明後日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から『評価』をお願いします。励みになります。★★★★★
『ブックマーク』と『いいね』も、お願いします。
何卒、よろしくお願いします。




