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131.卵焼きは、お任せ。

 俺が思いついた料理は……

 ズバリ! 卵焼きだ! 甘いやつだ。


 この世界では、オムレツのような料理はあるようだが、いわゆる甘い卵焼きは無いようだ。


 ただ、砂糖がそれなりに貴重らしいので、甘い卵焼きを作るのはコスト的に問題になる可能性がある。


 砂糖を安く調達できる手段があれば良いのだが……。


 まぁそれは今後の検討課題として……


 まずは卵焼きを作ってみることにする。


 ネコルさんにキッチンを借りて、早速調理開始だ。


 卵焼きは、よく作った得意料理である。


 卵焼きはシンプルに見えて、作る人の技量が出来を左右する料理なのだ。


 同じ卵、同じ量の砂糖を使っても、調理人の腕で味が全然変わる。


 以前飲食店で働いていたことがあり、その事実を知った時には、本当に驚いたものだ。


 まさか卵焼きが、調理人の腕で味が違うとは思ってもみなかった。


 練習として俺が作った卵焼きと、職人さんの作った卵焼きは全く同じ材料を使っていたが、全然味が違ったのだ。


 それ以来、俺は頑張って練習した。


 その実力を発揮する時が来た!




「ふわふわで、甘々なのだ! 美味しすぎて……美味しすぎて…… 」


「びっくりの味なの! 甘くて、凄すぎるなの! 」


 リリイとチャッピーが泣きそうになっている。


 他のみんなも幸せそうな笑顔になっている。


 というか、ワッキー既に泣いてる。


「こ、これは……う、うまい! 口の中でふわふわしながら広がる甘さ……」

「まぁ……ほんと! なんて美味しいのかしら……オムレツとは全然違うものね……」

「すごい! すごい! 甘いーーい! 」


 トルコーネさん、ネコルさん、ロネちゃんも感動してくれたようだ。


 そしてニアさんは……無言でかぶりついている。


 ……顔中卵だらけにして……


 もちろん無言になる前の“雄叫び”は当然あったのだ……。


「これは……ソーセージと一緒に食べるのもありですね。この甘さがいいと思います」


 サーヤがそんな発言をすると、みんな一斉に首肯した。


 確かに、いいかもしれないね。


 それぞれ単品でも食べられるけど、セットメニューにしてちょっとお得感を出すのもいいかもしれない。


 ということで、俺の『卵焼き』は看板メニューとして採用された。ヨッシャー!


 砂糖をそれなりに使うのだが、何とか二百五十ゴルから三百ゴルで販売できそうとの事だ。


 ただ、いずれにしろ卵がかなり必要になるので、今の烏骨鶏の数では足りない。


 霊域からもっと連れてくるか、もしくは牧場の村であるラクノ村から仕入れることを考えないといけないね。



 そんな時、外から蹄の音が聞こえてきた……


 扉を開けて現れたのは、衛兵長と代官さんだった。


「グリム殿、こちらにいらっしゃいましたか。よかった」


 どうやら二人は、牧場の件で来てくれたようだ。


「グリム殿、話し合ったのですが……やはり前例もなく……判断が難しいのです……」


 衛兵長が申し訳なさそうに口を開く。


「そうですか……」


 まぁそうだろうなぁ……勝手にはできないよね。


「ですが……私なりに考えたことがあります……」


 おお、代官さんが、何か策を考えてくれたようだ。


 代官さんの考えは……


 突然街にやってきた家畜動物を確保する為に、妖精女神の友人でありテイマーでもある俺に依頼して、テイムしてもらった事にする。

 その動物達を、オリ村前方の空地に牧場を作って管理する。

そして新しくやってきた避難民の受け入れ場所、いわゆる“避難民キャンプ”も一緒に作ってしまうというものだ。


 これを妖精女神が主導で、人助けの為にやったという形で、既成事実として牧場を作ってしまうという案らしい。


 これなら、避難民を助ける為と家畜などの有益な生物を確保する為という正当な理由とともに、この領の恩人である妖精女神のニアとその友人の俺がやったという事で、後から文句のつけようがないのではないかということだ。


 その後に、領主に判断してもらって、その土地を俺に販売するか、もしくは新しい荘園の村として認めるかという形にすれば良いのではないかとのことだ。


 なるほど……先に既成事実を作ってしまって、それをやったのが恩人である妖精女神なら文句は付けにくいよね……。


 まぁそもそもあの領主夫人だったら文句は言わないと思うけど……

 ただ、今後誰がトップになるかわからないしね……。


「いいんじゃないそれで! 要は勝手にやっちゃうってことでしょう。大丈夫、大丈夫! それでいきましょう! 」


 ニアは相変わらず、能天気そのものだ。


 まぁ……それでいいか。


「そうですね。じゃあそうしますか。場所はどこにするのですか? 」


 俺が場所のことを尋ねると、既に考えてあるようで……


「場所は……やはり街道沿いの方がいいと思います。この街から大分離れますがオリ村より先の二股に分かれる分岐点までの間の街道沿いに作るのが良いと思います。東側か西側どちらでも作れます。場合によっては両方でもいいと思います」


 代官さんが、簡単な地図を広げて説明してくれる。


「街道から奥に入ると、長い農道を作るのが大変だと思うのよね。奥に広げるよりも街道の両側に作っちゃえば」


 ニアが現実的な良い意見を言ってくれた。

 俺もそう思っていた。


「そうですね……両側使って問題ないのであれば、その方がいいかもしれませんね」


 俺がそう言うと、衛兵長と代官さんが首肯してくれた。


「あともう一つ、私がテイムするということになっていますが、私がテイムしてしまうと私の所有物になってしまいますが…… 無理にテイムしなくても良いのではないでしょうか」


 俺の懸念事項をぶつけてみた。

 俺がテイムすると『絆』リストにも入ってしまうし。


 それに俺の所有物になるいうのも何か違う気がするんだよね……。

 みんなの財産だと思う。


「いえ、むしろテイムしていただいた方がいいのです。先々の事を考えれば考えるほど。

 大恩あるグリム殿がテイムしていれば、誰も何も言ってこないでしょう。

 そうでなければ、自分の飼育していた動物だとか難癖をつけてくる者がいるかもしれません」


 代官さんは、先の事まで見通して、色々考えてくれたようだ。


「でも……ほんとに元の所有者だったら、どうするのですか?」


「もし本当にそれが証明されれば、その時に返せばいいでしょう。一旦所有を離れて野生化したという理屈で拒否することも出来ると思いますが。なにしろかなりの距離を移動しておりますので」


 なるほどね……もし仮に本当の所有者が現れても、返す必要がない可能性の方が高いわけか。

 確かに、それはそうかもしれない。

 俺達が保護しなかったら、何頭生き残っているかわからないからね。


 盗まれたわけじゃないから、逃げ出した時点で所有権を失うという理屈は、この世界ならアリなのだろう。



 いずれにしても、無用な争いを避ける為にも、俺がテイムした方がいいようだ。


 まぁ実際そうした方が、動物達とコミュニケーションが取りやすいから、世話をする人を雇うにしても大分楽だと思うんだよね。


 アッキー達の話では、霊域から連れてきた烏骨鶏達もヤギ達もコミュニケーションが取れるから、全く手がかからないって言ってたからね。


 だから烏骨鶏達をもっと連れてきても、増えるのは卵を拾う手間位だと言っていた。




 こうして、結局牧場を作ることになった。

 “俺の牧場”と言って良いかどうかは少し微妙だが。

『俺の牧場(仮)』という感じだろうか。


 土地の購入に、とりあえずお金を払う必要がなくなったので、すぐに人を雇用しても賃金は払えそうだ。


 俺は衛兵長にお願いして、現在仮設住宅にいる避難民達や新しく来ている避難民達に酪農の経験がある者がいないか探してもらうことにした。


 経験者がいれば、リーダー的な役割をしてもらえるからね。


 さて、これからの段取りを考えないと……



読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、本当にありがとうございます。


次話の投稿は、4日の予定です。


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よろしくお願いします。

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