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128.会議の、時間。

 俺は大森林の迷宮前広場にいる。


 あの白衣の男の潜伏場所を見つけてから、一旦サーヤ達とともに家に帰り、全員を連れてこの迷宮前広場に転移したのだ。


 そして霊域の霊獣達を含む主要メンバーを緊急で集めた。


 この領内で起きた壊滅的な被害の事は、すでにみんなに言ってあったのだが、その首謀者でかつ霊域や大森林にもちょっかいを出してきた首謀者の一人と考えられる白衣の男の潜伏場所を見つけたことを報告した。


 ただ、転移で逃げられる可能性があるので、確実に奴を仕留める作戦が必要なのだ。


 もちろん俺は『自問自答』スキルのナビゲーターコマンドのナビーにも相談してみたが、やはり転移を封じる良い方法は思い浮かばなかったのだ。


 ということで、各自の知恵を集めたいという話をした。


 みんなで考えたら、何か良い手が浮かぶかもしれない。


 みんな真剣に考えてくれたのだが……


 だがやはり確実に仕留める方法となると難しい。


 転移というのは本当に厄介だ。


 出た案としては……


 ○張り付いて奴が外に出てくるのを待つ———いつになるか分からないし、出てくるかもわからないので、厳しい。却下。


 ○冒険者のふりをして迷宮攻略をする。最下層手前まで行ってそこから一気に攻める———あの迷宮は普段冒険者が来るような迷宮ではないので、すぐに目立って警戒されるだろう。却下。


 ○俺の魔法銃やキンちゃんの必殺技などで迷宮ごと破壊してしまう———地下十階層まで確実に届くか不明だし、大環境破壊になるかもしれない。却下。


 ○転移を阻害するような魔法道具を探す———実在するかどうかもわからない魔法道具で、探す術もない。却下。


 ……ということで、すぐに有効な案は出なかった。


 一旦の結論は、今のまま監視を続けるしかないということになった。


 後は各自で何かいい案が思いついたら、もう一度検討しようということにした。


 ただ作戦を考える為にも、迷宮の中に潜入して詳しい状況を探る必要があるという意見は多かった。


 この意見はもっともだし、俺もそう思っているのだが……

 その時に気づかれて、逃げられたら終わりなんだよね。

 だから難しい……。


「あるじ、リン行ってくる。『隠密』スキルと、体色変化で透明になって隠れられる。もし見つかっても迷い込んだスライムのふりする……」


「うん、それならいいかも! スライムだったら何とかなりそうな気がするわ……」


 リンの突然の提案に、ニアが頷く。


 確かにそれはいいかもしれない……


 今のリンの力なら『上級悪魔』などが来ない限り、やられることは無いだろう。


 そしてリンの『隠密』スキルとステルス機能なら、見つからない可能性も高い。

 見つかっても、スライムなら警戒されない可能性が高い。


「わかった。リンお願いするよ。そのかわり絶対危険は犯しちゃ駄目だよ」


「うん、リンわかった。あるじの為、頑張る! 」


 そういうとリンは、嬉しそうに二回バウンドした後に、追加で三回バウンドした。


 俺は早速リンと一緒にサーヤの転移で、白衣男の潜伏迷宮近くのログハウスに移動した。


「リン、焦らなくていいからね。ゆっくり確実に、安全に注意して偵察するんだよ。何日かかってもいいから。何かあったらすぐに念話して」


「リン、わかった。あるじの為頑張る! 行ってくる! 」


 そう言って楽しそうに出て行くリンを見送った。


 帰ってくるまでに数日かかるかもしれないが、いつでも念話はつながるし、リンを信じて待とうと思う。




  ◇




 俺は大森林の迷宮前広場で、『アラクネ』のケニー達と打ち合わせをしている。


 白衣の男の件とは別件だ。


 ちなみにサーヤ達マグネの街居残りメンバーは、街に戻り衛兵隊の手伝いに参加している。


 打ち合わせというのは、最近この大森林と霊域で確認された新たな出来事についてだ。


 最近異常な頻度で、霊域では『霊獣』が誕生し、大森林では魔物……それも初めから浄化された『浄魔』が誕生しているらしい。


 霊域に住んでいる普通の生物が、大量の霊素を浴びて極稀に『霊獣』として目覚めることは、今までもあったらしい。


 だが、このところ『霊獣』として覚醒する者が増えているというのだ。


 そして大森林では、野生の生物が大量の魔素を浴びて魔物化することが起きるわけだが、それも増えているらしい。


 しかもその魔物は、仲間達のように浄化された魔物である『浄魔』として生まれているというのだ。


 ケニーは『鑑定』スキルを持っているから、それがわかるのだろう。


 これは通常では考えられないことのようだ。


 ニアもフラニー達も首をかしげている。


 みんなで出した一応の仮説としては、この大森林の魔物達を一斉に浄化した『浄化の光』の作用が残っているか、もしくは『浄化の光』によって、ここの魔素が変容したのかもしれないという説だ。


 ただこれは……あくまで仮説であって、真実は全くわからない……。


 本来、魔物が誕生したならば討伐する予定でいたのだが、『浄魔』であることから倒さずに、『テイム』しているらしい。


『テイム』すると、俺の『使役生物(テイムド)』として『絆』リストに登録されるので、念話で話せるようになる。

 コミニケーションをとって、仲間にしたことを説明しているようだ。


 ちなみに霊域で新たに覚醒した霊獣達は、霊獣になった時点で言葉が話せるので、先輩の霊獣達が話をして仲間にしているらしい。


 霊獣達は基本的に『使役生物(テイムド)』ではなく、『心の仲間(チーム)』メンバーにしてあるので、『テイム』はしていないとのことだ。


 故に、勝手に『絆登録』メンバーになることはないと思っていたのだが……


 確認すると……


 なぜか『心の仲間(チーム)』メンバーに登録されていて、『絆登録』されていた。

 はて……?


心の仲間(チーム)』メンバーや『友達(フレンド)』に登録する為には、相手方の承諾が必要ということではあった。


 だが……相手が希望して仲間になりたい場合は……俺の承諾なしに勝手になれるということなのだろうか……。


 まぁよく考えれば、スライム達も保護した動物達も、俺の承諾なしに『使役生物(テイムド)』になっていたけどね……。


心の仲間(チーム)』も同じ感じなんだろうか……


 もしくは『絆登録』メンバーが勧誘して、相手が承諾すれば、絆親である俺の承諾はいらないということなのかな……友人紹介制度みたいな……


 まぁ考えてもよくわからないから……考えるのはやめよう。


 いずれにしろ霊域でも大森林でも、俺の知らない間に仲間が増えているということらしい。


 この感じ……もう慣れてきた……。


 特に問題は無いからいいけどね……。



 ただこのこと自体は、あくまで状況報告であって、本題ではなかった。


 議題はこれを踏まえた、いわばケニーの強化案的なものだった。


 この大森林の近隣の山脈やその周辺領域から有望な通常生物を連れてきて、大森林に住まわせるということをやりたいらしい。


 例えば、ケニーの蜘蛛族やアリリの蟻族にも特異な能力を持つ種類がいるらしく、それが大森林で魔物化すれば、かなりの戦力になると期待されるようだ。


 この大森林の戦力の充実を図る為にも、そういう生物を連れてきたいという提案だった。


 特に問題は感じなかったので許可した。


 もし魔物化できなくても、普通の生き物としてこの大森林で暮らしてもらえばいいだけだし。


 ここの仲間達は、必要無く普通の生物を狩って食べたりしないから、安全に暮らせると思う。


 一瞬拉致してくるような感じで躊躇したが、ここの方が安全だし、いいんじゃないだろうか……。


 同様に霊域にも分散して、同じ生物を住まわせる予定らしい。


 うまくいけば同じ生物を元にした『霊獣』と『浄魔』が誕生するかもしれないね。


 今、遊撃部隊を中心に『インプ』狩りを兼ねた遠征をしているようなので、その時に見つけたら実行することになった。


 もっともケニーやアリリは、同族系統の生物の居所はなんとなくわかるようで、個別に連れてくるようなことも言っていたが。



 もう一つケニーから提案があったのは、俺が禁止しているスライム達の『増殖』スキルを使った分裂のことだ。


 『増殖』スキルで分裂してしまうと、レベルが分散されて、せっかく上がったレベルが低くなってしまうので禁止していたのだが……


 大森林の中であれば安全だし、レベルも20程度までならすぐにあげることができるので、むしろ分裂した方が戦力増強になって良いのではないかという提案だった。


 全く考えてもみなかったが……

 現場の意見というやつだね……。


 確かにその通りかもしれない。


 通常の場所なら、分裂してレベルが下がることが危険につながるが、大森林なら危険はない。

 確かにレベル20位なら近隣から魔物を捕獲してきて訓練すれば、すぐにあげることもできる。


 ケニーの戦力増強方針として、繁殖できる者はできるだけ繁殖して仲間を増やすということをやっているようだが、スライムの増殖分裂がその意味では 一番早いかもしれない。


 そこで俺は、大森林にいる場合は、分裂増殖を禁止するのを解除して、各人の判断に任せることにした。


 レベルを上げたい者はそのままで、分裂したい者は自由に分裂して良いことにした。


 ただ九体のリーダースライム達は、いつ出動するか分からないので分裂しないようにお願いした。


 今後どれだけのスライム達が分裂して増えることやら……


 本当にこの大森林は、スライム達の森になるかもしれない……。







読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、1日の予定です。


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