126.領内救命、完了。
俺達が次に向かったのは、『イシード市』から真っ直ぐ北上したところにある『セイネ』という街だ。
この街にも通常では二日ほどの行程なのだが、オリョウの爆走により半日で着いた。
この街でも周辺のスライムを集めて、一緒に戦いレベルを上げて巡回警備要員とした。
魔物の討伐と人命救助も同様に行った。
この街は、マグネの街と同じ人口五百人程の街らしいが、生き残っていた人は二百人にも満たなかった。
ただ生き残った人の話では、逃げ出した人もいたようなので、もう少し生存者がいるかもしれない。
まだ夕方前の時間だったので、俺達は次の『テシード市』に向かった。
『セイネ』の街から北東の方角だ。
通常で一日半の行程だが、オリョウの頑張りで数時間で着くことができた。
ギリギリ日があるうちに着いたので、俺達は同様の手順で魔物討伐及び人命救助を行った。
もちろん近隣のスライムを集めての育成も同時に行った。
そして、そのまま北西方向にある『ホクネ』の街に向かう。
『ホクネ』の街までも、通常二日かかる行程であり、オリョウの爆走でも三割位の行程しか進めなかった。
いかんせん『テシード市』を出発したのが夕方だったからね。
俺達はここで野宿する事にした。
◇
翌朝、日の出と共に動き出した俺達は、『ホクネ』の街でも同様に魔物討伐と人命救助、近隣スライムの育成を行った。
これで領都の西側にある二つの都市と二つの街は、魔物討伐・人命救助が完了した。
南の『ナンネ』の街は、セイバーン公爵軍が開放してくれている事だろう。
残るは、領都よりも南東の方角にある『チュウネ』の街、その更に東にある『タシード市』、更に南東に降った『トウネ』の街の三つだ。
今いる『ホクネ』の街は、ピグシード辺境伯領の北西の端であり、最終目的地の『トウネ』の街は南東の端にあたる。
領内を横断する形になり、大分時間がかかるが頑張るしかない。
次の目的地である『チュウネ』の街までは、今いる『ホクネ』の街から『テシード市』に戻り、更に領都に戻り、そこから向かう形になる。
これは通常行程で六日以上の道のりだ。
オリョウが爆走したとしても、一日半か二日かかる計算になる。
俺は、むしろマグネの街から出発した方がはるかに近い事に気づいた。
そこでサーヤの転移でマグネの街の家に戻ることにした。
この『家馬車』は『管理物件』であるにもかかわらず、移動が可能な事から一緒に転移することも可能なのだ。
再出発する時に、普通にマグネの街の門から出て行くと、不自然だし騒ぎになってしまう。
そこで、霊域の代行者『ドライアド』のフラニーに、マグネの街の最遠の村であるオリ村の先の林に転移してもらった。
フラニーの転移は距離の制限があるのだが、フラニーの所在を一番マグネの街に近い大森林の端にすれば、そこからの距離計算なので、オリ村より先の林に転移できたのだ。
俺達は、このサーヤとフラニーの転移の合わせ技で、昼過ぎには『チュウネ』の街に着いていた。
ここでも同様に、魔物討伐、人命救助、スライム育成を行った。
そして更に半日かけて、『タシード市』近くの村に着き、そこで野営した。
◇
翌朝『タシード市』で魔物討伐、人命救助、スライム育成を行い、なんとか夕方には『トウネ』の街に着き同様に魔物討伐、人命救助、スライム育成を行った。
領都を出てから三日が過ぎていた。
俺達は近くで、野営をしようと思ったのだが……
よく考えたらもう目的は達成したので、サーヤの転移でマグネの街の家に戻ることにした。
この転移があると、一瞬で戻れるから凄い助かる。
ちなみに今回訪れた三つの都市と四つの街の近くの目立たない場所に、レントンに頼んで小さなログハウスを設置してきた。
荒らされないように、周りの草でカムフラージュもしてもらった。
これをサーヤの『管理物件』に登録すれば、今度はいつでも転移で行ける。
超らくちんなのだ。
普段登録していなくても、転移する前に登録すれば良いようだ。
『管理物件』スロットは限られているが、緊急の転移以外は、ゆっくりスロットを入れ替えてから、転移すればいい。
一度でも『管理物件』に登録したものは、外してもすぐに再セットできるそうだ。
事実上、数の縛りがないに等しいよね。
一刻を争う緊急事態に転移する可能性がある所だけ、『管理物件』に登録しておけばいいのかもしれないね。
周辺に巡回警備要員として置いてきたスライム達から、もしSOSが入ってもすぐに転移で助けに行けるようになったわけだ。
セイバーン公爵軍が解放してくれたであろう『ナンネ』の街には行ってないので作ってないし、領都『ピグシード』にもログハウスを置いてくるのを忘れてしまった。
というか……忘れたというよりも、領都を出発した時点では、このログハウスを近くに置く作戦を思いついていなかったのだ。
その後にこの手段を思いついたので、領都がすっかり抜け落ちてしまった。
まぁ今後また行くことがあれば、その時にログハウスを置いてくればいいだろう。
今回、各都市や街で仲間にしたスライムの数は、合計で四百二十五体にもなった。
みんな元々いたエリアの巡回警備をしてくれている。
ただその後も、『種族通信』を使って仲間を増やしているようだ……
何体になることやら……怖くて使役生物リストが確認できない……。
ちなみに今回の作戦で、レベルが高くなかった新加入の仲間達も、ミルキーの妹弟達を含めて全員レベル30を超えている。
一安心だ。
レベル30を超えれば、特殊な相手で無い限り瞬殺されるようなこともないだろう。
スキルも色々と増えているようだ。
今度ゆっくり教えてもらおう。
◇
俺達は久しぶりに全員揃って、サーヤの家でくつろいだ夜を過ごした。
本来ならこんなに早くマグネの街に帰れるはずもなく、普通はまだ旅の途中なので、しばらくはこの家か大森林や霊域で過ごすしかないだろう。
街に出て騒ぎになると、まずいことになるかもしれないからね。
まぁこの世界は、俺がいた世界ほど情報伝達が発達してないから、存在していた場所と時間の辻褄が合わない事は気づかれないかもしれないけどね……念の為だ。
ただ、サーヤ達居残り組は、元々このマグネの街にいる想定なので、普通に活動できるわけだが。
ちなみに、サーヤによると……
やはり俺達がすれ違った避難民が、マグネの街にやってきたようだ。
その人数の多さに衛兵隊も役人も皆あたふたしていたそうだ。
ちなみに食料は、俺達が討伐した魔物を何回かまとめて広場に置いておいたので、避難民達の人手を使って、解体しているようだ。
避難民達は、この街に来て以来、毎日のように解体や干し肉作りをしているらしい。
そして、やはり一番の問題は、捕らえてある盗賊達のようだ。
本来なら領都に送って処断したり、犯罪奴隷化したりするらしい。
ただこれも、規定を無視した衛兵長の英断で、すべての盗賊に奴隷紋を刻んで、奴隷契約を結んだらしい。
衛兵長を中心に衛兵隊で、この盗賊達を管理して労働力として使うようだ。
それはいい手だと思う。
もしかしたら、ちゃんと働いて更生できる盗賊がいるかもしれないしね。
奴隷紋を刻んで奴隷契約すると、禁止事項を設定できるので、縄を外しても人を傷つけたりはできないそうだ。
仮設住宅も追加が必要になったが、これもサーヤとレントンでうまくやってくれたようだ。
マグネの街の居残り組が、この数日間一番忙しかったかもしれないね。
マグネの街で普通にいろんな協力作業して、合間に俺に呼ばれては転移でやって来て、魔物討伐と人命救助をしてたんだからね。
本当によく頑張ってくれた。
今日はみんなでゆっくり休もう。
と思ったのだが……
みんな揃ったのが嬉しかったのか、全員ハイテンションで夜が更けるまでずっと皆で過ごすことになった……。
「みんな、もうこのぐらいにして、そろそろ寝よう。おやすみ……」
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