1187.いい感じの、フレンド機能。
(君に名前をつけてもいいかな?)
俺は、『自問自答』スキルに新しく発現した『オペレーターコマンド』に尋ねた。
脳内イメージは、明るく可愛い後輩女子社員風である。
(はい。可愛いのでお願いします!)
(可愛いのって言われても、めっちゃ困るなぁ。俺としては、わかりやすい方がいいんだけど……。
オペレーターのオペはさすがに微妙だから……レーター……レター……レタとかどうかな?)
(……は、はい、レタで構いません。先輩のセンスじゃ、しょうがないですよね。レタちゃんと呼んでください)
微妙な感じだが……了承してくれたみたいだ。
(わかった。レタちゃん、改めてよろしく)
(はい、先輩)
(ところで、君はどんな機能を担当してくれるの?)
(はい、脳内で様々な処理を行うことができます。
多分……現状で一番役立つのは……『使い魔人形』を起動させた場合の操作及び情報収集ですね。
先輩が通常行動の時に、自律行動モードで稼働中の『使い魔人形』に目を配るのは大変です。数が多いですからね。
一体一体に定期的に感覚共有して、状況確認するだけでも、かなりの作業です。
その間は視界の中に小さな画面が現れますので、視界が狭くなります)
(確かに、主要なところには自律行動モードで放してあるけど、面倒くさいから何もない限りは確認してないからね)
(その処理を、私が行うことができます。
もちろん必要に応じて、先輩の視界に投影することもできます。
同時に何体もの『使い魔人形』を確認できます。
もっと積極的には……定期的な情報収集もできちゃいます!)
(なるほど! それはいいね! 感覚共有は、集中してるときはいいけど、何かをやりながらだとすごい大変なんだよね。
それを君がやってくれるから、俺には何の負担もなく状況が確認できるわけね)
(はい。他にも同時並行で処理したいことがあれば、言ってください。大概のことはできると思います)
(わかった。ありがとう!
ちなみに、君もナビーみたいに顕現して人型になることができるの?)
(可能性はあります。試してみないと分かりませんが……今のところは必要性を感じておりません。
私の本分は、あくまで脳内での各種の処理ですから。
外に出る必要は無いかと思います。
それに、顕現状態になった場合、『基本ステータス』『サブステータス』『スキル』全て先輩と同じ能力になりますが、魔力については共有ですので、顕現体が多くなればなるほど消費が激しくなります。また顕現しているだけで、一定量の魔力を消費しますから、そういう意味でも顕現体が増えると、その分だけ魔力を消費してしまいます。
現状は、ナビー先輩だけでいいと思います)
(なるほど、それもそうだね。さすがオペレーター、冷静な現状分析だね)
(お褒めいただきありがとうございます!)
ふと思ったが……『怠惰』スキルのタイディちゃんも、顕現できたりするんだろうか……?
(ちょっとあんた、何言ってんの! 引きこもりだって言ってんだろうが! 体の外に出そうしてどうすんのよ、まったく!)
やばい、俺の心の声が筒抜けで、タイディちゃんにキレられた……トホホ。
気を取り直して……
(レタも脳内で自由に活動しもらって、俺が必要とする時だけ話しかければいいのかな?)
(はい、そうしてください。それが一番体の負担を少なくします。決してサボりませんよ。できることをやっておきますから。
なるべくこの体の機能を把握しておきたいですし。
先輩は、ほとんどの機能をちゃんと使えてませんからね)
なんとなく……めっちゃ明るく可愛くディスられた気がするのは、気のせいだろうか……?
なぜ俺は、自分の分身体に、こんなにもディスられるのか……?
自分を責めないで……褒めてあげようよ……トホホ。
(先輩、それから私とナビー先輩は、阿吽の呼吸で連携してますから、ご安心を!
早速ですけどナビー先輩から、他のスキルについて報告があります。
それでは、ナビー先輩、お願いします!)
レタちゃんがそう言うと……脳内に今度は、美人秘書風のナビーさんが現れた。
まぁいつもの服装なんだけどね。
(マスター、『絆』スキルの能力が拡張しています。
『友達登録』機能が、改変されています。おそらくマスターの心の願望を反映したものでしょう。確認してください)
(わかった。早速確認してみるよ!)
能力の改変とはどういうことだろうか……?
楽しみだ。
早速確認すると……
なるほど、新しい技コマンドができている。
もともと『絆』スキルの『絆登録』コマンドの一機能であった『友達登録』が、『絆登録』から独立して、単独の技コマンドとして発現したようだ。
しかも内容は、『絆登録』とは全く違っている。
今までの『友達登録』は『絆登録』コマンドの中の一形態で、『心の仲間登録』とほとんど差がなかった。
そんなこともあり、俺は一度も使っていない。
両方とも相手の承諾が必要で、承諾を得られれば登録でき、『絆』メンバーとなって、『共有スキル』や念話などの恩恵が受けられるのである。
ところが独立した『友達登録』コマンドは、単にフレンドとしての登録であって、『絆』スキルの恩恵は、適用されないのだ。
つまり『フレンドリスト』に入っただけでは、俺の特殊な固有スキル等の情報を知られる事はないのだ。
しかもこの『フレンドリスト』に登録するのに、相手の承諾は必要ない。
俺が一方的に、友達認定して登録しておけば良いのである。
ではその登録に、何のメリットがあるのかと言えば……これがすごくいい機能だった。
まず第一に、必要があるときに、俺から一方的に念話を繋げることができる。
相手は、俺の『フレンドリスト』に入っていることや念話のことを知らないので、びっくりするだろうが、危険を知らせるときなど、緊急時に使えるわけだ。
それから、『絆』メンバーと、『フレンド』メンバーへの新機能として、『危険警報』という機能が発現していた。
これは、『絆』メンバー及び『フレンド』メンバーについて、『身体力(HP)』が三割以上減った場合に、俺の脳内に警報が鳴るというものだ。
これにより友人や知人の危険を察知し、助けに行ったりできるわけである。
俺としては、かなり安心な機能だ。
俺の仲間たちの中でも、貴族メンバーや、『フェアリー商会』の一般のメンバーは、『絆』メンバーにはなっていない。
でもこの『友達登録』なら、相手に知られることもないし、危険があったときには察知できる。
こんな機能が欲しかったんだよね。
それでさっきナビーが、俺の願望によって能力が改変したんじゃないかと言ったのだろう。
ただこの『危険警報』機能を、常時稼働させておくと、俺の魔力を常時一割ぐらい消費することになるようだ。
だが俺の膨大な魔力量からすれば、一割くらいどうって事はない。
この機能により得られる安心に比べたら、全く問題ない量である。
俺はすぐにこの機能をオンにして、『絆』メンバーになっていない、知り合いを登録した。
登録自体は、その人を頭にイメージするだけでできるのだが……数が多いから一気にはできない。
一旦は、この秘密基地にいる人たちだけにした。
今後、今まで関わってきた人たち、『フェアリー商会』のスタッフ、迷宮都市でお世話になっている人たち、『ツリーハウスクラン』のメンバー、など随時登録していこうと思う。
というか……こういうことを、『オペレーション』コマンドのレタちゃんにやってもらえばいいんだろうか……?
(先輩、その通りです! 私がやっておきます! 任せてください!)
おお、すごい!
めっちゃ助かる!
なにこの俺得な機能!
(ありがとう! レタちゃん)
俺は思わず、イメージの中でレタちゃんを抱きしめてしまった。
(先輩、それはセクハラです!)
(マスター、いい加減にしてください! ぶちますよ!)
(チッ)
嬉しさのあまり調子ぶっこいてしまい……可愛い後輩のレタちゃんに怒られ、ナビーにはすごまれ、『怠惰』スキルのタイディちゃんには、舌打ちされてしまった……トホホ。
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