1175.フィギュアを作れるスキルと、動かせるスキル。
収監されていた『ドクロベルクラン』の二幹部が魔物化した事態の不幸中の幸いと言えるのは、トヤッキーが持っていたスキルを、二つ奪うことができたことだ。
『エンペラースライム』のリンちゃんが、頑張ってくれたお陰だ。
不謹慎かもしれないが、俺としてはラッキーだった。
土素材の人形をゴーレム化できる上級の土魔法『土魔法——土素材の人形』が、取得できた。
俺が持っている『植物魔法——植物由来の人形』の土魔法版だ。
早速、リンちゃんから『波動複写』でコピーして、俺のスキルとした。
もちろんいつものように、『固有スキル』の『ポイントカード』の『ポイント交換』で、スキルレベルを10にした。
そして、仲間たちも使えるように、『共有スキル』にもセットした。
これで奴らが作った土素材の人形も、ゴーレムとして稼働させることができる。
『ドクロベルクラン』の屋敷から没収した予備の人形も、俺の戦力として活用することができる。
そして、今後は自分で土素材で人形を作って、ゴーレムとして稼働させることもできる。
まぁ普通に考えると……土素材って、それほど強力なものはない気がする。
岩石のようなものも、土素材として認定されるなら、強力なものが作れるかもしれないけどね。
『ドクロベルクラン』で作っていたのは、土を焼いたレンガのような素材の人形なのだ。
素材としては、『魔竹』とか『ワイルド樫』の方が、硬くて強いと思う。
昨夜の襲撃で、『ドクロベルクラン』で作っていた土素材で人形は、『魔芯核シナプス』の機能で、砕いてもすぐに集まって復活していた。
そう考えると、『魔竹』より素材の強度が弱くても、『魔芯核シナプス』を装着すれば、結構戦える戦力になるのは、間違いない。
使い方や局面を工夫すれば、十分に役立つ戦力になるだろう。
もう一つ、リンちゃんが『ランダムドレイン』で奪ってくれた『造形』スキルは、俺が欲しいと思っていたスキルなのだ。
俺が持ってる『彫刻』スキルの上位版のようなスキルで、様々な作り方で立体物が製作できるスキルなのだ。
『彫刻』スキルの場合は、削って彫り上げて作るものに限定されるが、その限定がないのだ。
もちろん使う素材にも、限定がないわけである。
まさに……フィギュアを作るのにもってこいのスキルなのだ!
このスキルがあれば、様々な素材を組み合わせたり、自由な発想の作り方で……フィギュアを始めとした造形物が作れちゃうわけだ。
武具や魔法道具などの製作にも活かせるし、もちろんめちゃめちゃリアルなフィギュアとかも作れちゃうはずだ!
土素材で、美少女フィギュアを作れば、『土魔法——土素材の人形』を使って、動かすことも可能だ!
……ムフフ。
まずい……妄想が膨らんでしまう……今は不謹慎だ、抑えろ、自分!
何とか深呼吸をして、冷静さを取り戻し、リンちゃんから『波動複写』でコピーさせてもらい、自分のスキルにした。
そして、『共有スキル』にもセットした。
馬車の中でニヤけそうになるのを、必死で噛み殺しているのだ……落ち着け、自分!
『ツリーハウス屋敷』に着いた。
伯爵たちとともに馬車を降りると、みんな心配そうな顔で出迎えてくれた。
俺は、大体の状況を説明し、安心してもらった。
そして応接室に戻り、伯爵たちと再び打ち合わせを始めた。
「下っ端のおかっぱたちという連中のことだが……さっきの話で、死んだことにして密かに犯罪奴隷とするのはいいが、死んだことにする以上、市の犯罪奴隷として労役に就かせることは難しい。ギルドで使い道はないかね?」
太守のムーンリバー伯爵が、ギルド長に尋ねた。
「うむ、使い道は……なくはないが、奴らが『ドクロベルクラン』だった事は、みんな知っておるでなぁ……。
ギルドで見かければ、『ドクロベルクラン』の生き残りがいることが、わかってしまうと思うのじゃ……」
「なるほど……それはまずいな。シンオベロン卿の所では、使い道はないかな?」
げ、あんなおかっぱたち……絶対に関わりたくない。
性格も悪いし、絶対にやだな。
「すみません。使えそうにありません」
俺は、断言してしまった。
もしかしたら……俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーさんなら、熱血先生として更生させることもできるかもしれないけどね。
「困ったのう……」
ギルド長が渋い顔だ。
「ねぇねぇ、思いついちゃったんだけどさぁ、あいつら今回の襲撃に参加してなかったことにすればいいんじゃない!」
ニアが、めっちゃドヤ顔で意見を言った。
何かを思いついたようだ。
「ニア様、それはどういう……?」
伯爵が疑問顔だ。
「ねぇねぇ、ギルド長、『ドクロベルクラン』の人間で、今回の襲撃に参加してない奴らがいるでしょう?」
「……参加していない奴ら……? ……おお、おった! 迷宮内で『連鎖暴走』が発生したときに、荷運び人を見捨てて逃げた奴ら。
ギルドで拘束して、取り調べをしておりました。
これから、衛兵隊に引き渡すつもりでしたのじゃ」
ギルド長がポンと手を叩き、少しニヤッとした。
「ムーニーさん、そいつら普通ならどんな罪になるわけ?」
ニアが、ムーニーさんに問いかける。
「うーん、多分だけどー、犯罪奴隷落ちじゃないかなぁー」
「そいつらはさぁ、『ドクロベルクラン』のメンバーだったわけだけど、昨夜の襲撃については、罪は問われる?」
「いやー、普通は問われないねー。まぁ意図的に責任を負わせることは可能だけどねー」
「それよ、それ! あのおかっぱたちも、別の罪で拘束されていたことにして、襲撃に関わっていなかったことにすればいいのよ!」
「なるほど、さすがニア様ですじゃ。
先程の件で死んだことにする案は無しにして、生き残ったことにする。
だが、そもそも襲撃には加わってないから、別の罪での犯罪奴隷としてギルドで使う。
もちろん、市の犯罪奴隷として使っても、問題がなくなるわけですな」
ギルド長が目を輝かせた。
「そうよ、その通り! どっちにしろ国に対しては嘘の報告を上げることになるけど、大差ないでしょ?」
「なるほど、それがいいかもしれませんな。
奴らが襲撃に加わっていたことを知っているのは、ごく一部の衛兵だけです。
しかもムーニーの直轄の独立部隊だけですから、口止めもできます。
それにしても……あんな者たちの為にも、心を砕いてくださるとは、本当にニア様は女神様のような方ですな……」
ムーンリバー伯爵がそう言って、ニアを見つめた。
目が少し潤んでいる気がするが……事あるごとに、ニアに対する信奉が上がっている気がする……。
それはともかく……ニアさんのナイスなアイデアで、あいつらの処遇が決まった。
てか、なんであいつらのために、俺達は真剣に話し合っているんだろう……?
冷静に考えたら……腹が立ってきた!
ほんとに迷惑な奴らだ。
普通なら処刑されても、文句は言えない状態なんだけどね。
悪事の片棒を担いだとは言え、あいつらがあまりにも馬鹿すぎて、無下に処刑するという考えになれないのかな……まぁどうでもいいけど。
生きて償う方が、辛いこともあるしね。
「ギルド長はどうだね、ギルドの方で使うかね? 市の方で使うこともできるようになったが……」
伯爵が、ギルド長に尋ねた。
「そうじゃなぁ……まぁなんとかしよう。今まで散々若手の冒険者に迷惑をかけてきた奴らじゃから、償いをしてもらわないとのう。ある意味、死よりも辛い償いになるかもしれんのう」
ギルド長は、少し悪い顔で笑った。
そしてなぜか、ニアさんも悪い笑みを浮かべている。
この人……おかっぱたちに何かする気だよ。
まぁいいけどさぁ。
あいつらの自業自得だし。
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