1173.もう一組の、Bランクパーティー。
「ニア、どう?」
俺は、負傷者を治療しているニアに、状況の確認をした。
「かなり酷いわね。ただ今のところは、死者はいないみたい。
死んでいてもおかしくない人が、結構いるんだけど……誰かが応急処置をしたみたい。
欠損部位は治ってなくても、何とか命を繋いでいる人が何人もいたわ。
私は、欠損部位の治療をもう少しするけど、状況的にはだいぶ落ち着いてきたから心配ないわ」
「わかった。じゃあ引き続き頼むよ。俺はもう少し、周囲の状況を確認するから」
「オッケー」
俺は、倒されたトヤッキーとボンズラーの遺体を確認する。
『魔物人』になった原因となるものがないかの確認である。
「やぁ、シンオベロン卿、奴の倒し方を教えてくれて助かったよ」
俺に近寄って話しかけてきたのは、先程の凄腕の冒険者たちだ。
俺の名前を知っているようだ。
「いえ、たまたま倒し方を、知っていたものですから……」
「前の南門場外での戦いといい、今回の戦いといい、本当に君は強いんだね。
あ、いや、貴族様に君なんて言っちゃ、失礼だったかな?」
「いえ、とんでもありません。ご挨拶が遅れました。グリム=シンオベロンと申します。気軽にグリムと呼んでください」
「そうかい、それは助かるよ。教養がないもんで、堅苦しいのは苦手なんだ。
俺は、冒険者パーティー『金獅子の咆哮』のリーダーレオニールだ。よろしく」
二十代後半といった感じのブロンドを短髪にしたワイルド系のイケメンだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。皆さん、お強いんですね」
「これでも一応、Bランクだからね」
レオニールさんは、ナイスガイな感じの笑顔を作った。
てか……Bランクなのか!?
現在二組しかいないうちの一組なのか!?
それを知らなかったのは、結構失礼だったかもしれない。
「Bランクの方達だったんですね。存じ上げなくて、失礼しました。最近冒険者登録をしたばかりなものですから……」
「いやいや、いいんだよ。それに君は、Bランクの我々より強いじゃないか?」
「いえいえ、とんでもないです」
俺が、苦笑いしていると……
「おお、レオニール、今回も活躍してくれたようじゃな」
そう言って、ギルド長が現れた。
ギルド長も、駆けつけたようだ。
「ギルド長! ……このグリム君に、倒し方を教えてもらわなければ、危なかったですよ」
レオニールさんは、そう言いながら苦笑いした。
「そうかそうか、それはよかったのじゃ。
ちょうどよかったわい。紹介しようと思っておったのじゃ。
このレオニールは、二組しかないBランクパーティーの一つ『金獅子の咆哮』のリーダーじゃ」
ギルド長がそう言って、レオニールさんの肩に手を当てて、俺に紹介してくれた。
でも……時すでに遅しなんですけど。
「はい。今それを伺って、恐縮していたところです」
「そうかそうか。この者たちは、名実ともに一流の立派な冒険者たちじゃ。冒険者としては、かなり先輩じゃから、いろいろ面白い話も聞けるじゃろうて」
「はい、そうですね。ぜひ、いろんなお話を、お聞かせいただければと思います。ご指導下さい」
俺はそう言って、レオニールさん達に頭を下げた。
「あー、困ったな……。俺たちに教えられることがあるなら、構わないが……君たちには、我々の大先輩でもある『闘雷武』の皆さんがいるじゃないか……?
しかし、どうやって口説き落としたんだよ?
あの先輩たちが、クランに入るなんて……」
「口説き落としたと言うわけでもないのですが……」
俺は、苦笑いをするしかなかった。
「まぁあやつらも変わっておるから、このグリムの変わってるところが、気に入ったのじゃろう」
ギルド長が、そんなフォローを入れてくれた。
「まぁ確かに変わってるというか……並外れた強さがあるしな、ハッハッハ」
レオニールさんがそう言って、愉快そうに笑った。
「そうじゃ、レオニールはクランも作っておるのじゃ。優良クランで、この前話さんかったかのう?
今『エリアマスター』の討伐に向けて、準備をしておるクランというのがこの者たちなのじゃ」
ギルド長が、そんな情報も教えてくれた。
確かに、そういうクランがあるという話を、この前ギルド長がしてくれていた。
「レオニールさんのクランは、何組のパーティーが集まってるんですか?」
ギルド長からは、前に五組と聞かされているが、話のネタとして尋ねてみた。
「俺達とCランクのパーティーが四組で、総勢で33人だ。
『強き一撃』っていうクランだ。周りの冒険者からは『一撃クラン』と言われている」
「そうなんですね。力のある方たちが、揃っていらっしゃるんですね」
「まぁ俺たちは、『エリアマスター』の攻略を目指して集まったクランだからな。
君のクランの新人を育成するという目的は、凄いと思うよ。
俺たちにはできないが、君のところみたいなクランが多くなれば、無駄に命を落とす冒険者が少なくなるよ」
「はい。私も、駆け出しの冒険者が、簡単に命を落とすことがないようにしてあげたいと思っているんです」
「あぁそうだな。俺も今まで何人も見てきたよ。
もしほんの少しの差で生きながらえていたら、一流の冒険者になったであろう者たちは、たくさんいたよ」
レオニールさんは、しみじみと言った。
「『エリアマスター』の攻略には、いつ頃向かわれる予定なんですか?」
「まだはっきりとは決めてないんだが……近いうちに行くつもりだ」
「ぜひ頑張ってください」
「ありがとう。今度ゆっくり酒でも飲もう」
「はい、ぜひお願いします」
俺は、そう言って頭を下げつつ、差し出された手を掴んで、握手を交わした。
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