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1172.戦闘中だけど、欲しいスキルはいただきます!

「どうしたあー? そんなに慌ててー」


 すごい形相で駆け込んできた衛兵に、独立部隊隊長のムーニーさんは、相変わらず間の抜けた感じで問いただした。


「は、はい、昨夜拘束した『ドクロベルクラン』の幹部が、ま、ま、魔物化しました! 

 収監していた南区部隊の施設が大破、多数の負傷者が出ています! 

 衛兵および近くにいた冒険者で応戦していますが、強くて歯が立ちません」


 なんと!? あいつらまで魔物化したのか!?

 なんで今頃……?


 装備を全て外して、ほぼ丸裸にしていたはずなのに……。


「まずいですね。話の途中ですが、私は討伐に向かいます!」


 俺はそう言って、ニアとともに応接室を出た。


 庭で待機していた冒険者のみんなに、走りながら状況を伝える。

 そして万が一に備え、この屋敷の警戒を強めてもらうように頼んだ。


 ムーニーさんが一緒に来ているので、『飛行』スキルを使ったり、跳躍移動したりができないのが辛いところだ。

 走るスピードも、常識はずれのスピードにはできない。


 このままでは、被害が拡大してしまう……。

 誰か戦えそうな戦力が……そうだ! 『スライム』たちだ!


 俺は、迷宮都市を巡回させている百七体の『スライム』に念話して、近くにいる子たちに集合をかけた。


 近くにいない子たちについては、迷宮都市全体の警戒に当たるように指示をした。


 それから……迷宮都市周辺を自由に散策している『エンペラースライム』のリンちゃんにも、念話を入れて応援を頼んだ。


 リンちゃんは、都市外にいて人に見られる心配がないから『飛行』スキルか『跳躍移動(テレポーテーション)』で、すぐに駆けつけてくれるだろう。


 少しして、南門近くの衛兵隊の詰所につくと……戦闘の真っ只中だった。

 衛兵隊の建物は、大きくずれている。


 二体の巨大な『魔物人(まものびと)』が暴れている。

 三メートルくらいの大きさになっている。


 トヤッキーは、蛇の『魔物人(まものびと)』になっていて、ボンズラーは、サメの『魔物人(まものびと)』になっている。


 負傷者が多い。

 これは……まずい感じだ。

 死者が出ているんじゃないだろうか……。


 戦闘しているのは、実力のある衛兵と冒険者だけに限ったようだ。

 誰の判断かわからないが、いい判断だ。


 残りの衛兵と冒険者は、怪我人の救助と治療に当たっている。


 トヤッキーとボンズラーは、かなりの攻撃を受けているが、『魔物人(まものびと)』になっているので、すぐに再生してしまっている。


 それにしても……メインで戦っている冒険者たちは、かなり強い。


 あの冒険者たちには、見覚えがある。


 前に南門にイノシシ魔物とバッファロー魔物が襲ってきた時に、バッファローのキングを倒した後、残りのバッファロー魔物の殲滅を手伝いに来てくれた冒険者たちだ。


 いい連携で攻撃を決めているが、再生してしまうから、倒せていないんだよね。

 『魔物人(まものびと)』の倒し方が、わかっていないわけだからしょうがないけどね。


「その『魔物人(まものびと)』は、心臓と頭を同時に潰さないと倒せないんです!」


 俺は、『拡声』スキルを使って、情報提供した。


 戦っている冒険者たちは、それを聞いて、俺の方を見て首肯した。


 スライムたちは、四十体ほど集まって来ている。


「ニアは、スライム達と一緒に、負傷者の救出と回復を頼む!」


「オッケー! わかったわ」


 ちょうど、リンちゃんも来た。

 俺より早く着くと思ったが、結構遠くにいたのかもしれない。


「蛇の方は、私が引き受けます! サメの方をお願いします!」


 俺は戦っている凄腕冒険者たちと独立部隊隊長のムーニーさんにそう叫び、蛇の『魔物人(まものびと)』に蹴りを入れて、サメの『魔物人(まものびと)』と距離を取った。


「リンちゃん、頼むよ!」


「わかった。あるじのため、がんばる!」


 俺は、『エンペラースライム』のリンちゃんと一緒に、この魔物の討伐に当たる。

 そして実は……念話で密かに、頼み事をしていたのだ。


 それは……この元トヤッキーから、スキルを奪うことだ。


 リンちゃんの『種族固有スキル』の『吸収』の『ランダムドレイン』コマンドを使えば、かなりの確率でスキルを奪うことができるのだ。

 もちろん『通常スキル』だけだが。


 『魔物人(まものびと)』になってしまったトヤッキーに、未だスキルが残っている事は確認済みだ。

 『波動鑑定』済みである。


 トヤッキーは、貴重な上級土魔法『土魔法——土素材の人形(ソイルゴーレム)』を持っているのだ。

 そしてもう一つ、俺が喉から手が出るほど欲しい『造形』というスキルを持っている。


 俺が戦って時間を稼いで、その間にリンちゃんにドレインを繰り返してもらう。


 スキルが奪えるまで、何度でもドレインしてもらうつもりだ。

 それまでは、殺さないようにしつつ押さえ込む。


 俺は、普段使いの『青鋼剣 インパルス』で、襲ってくる蛇頭を切り落とし、手足を切断して、再生するのを待つ。


 『魔物人(まものびと)』は、死んで魔物になる『死人魔物(しびとまもの)』とは違い、人の意識を保っているので、トヤッキーが何やら俺に向かって言っているが……そんな事は聞いてやらんのだ。


 トヤッキーを抑えつつ、ボンズラーの方を確認すると、冒険者たちと腕の立つ衛兵がうまく戦っている。


 互角以上に戦えているので、頭と心臓を同時に破壊するのは時間の問題だろう。


 バッファロー魔物の討伐の応援に来てくれたあの冒険者たちの強さは、破格の強さと言える。


 おっと、見ているうちに、冒険者たちが倒してしまった。


 やばいなぁ……こっちに応援が来てしまう。


「あるじ、終わった」


 おお、さすがリンちゃん!


「よし、じゃぁ倒しちゃうよ」


 俺は、インパルスを胸に突き刺し、そのまま頭を切り裂く為に、斬り上げた。


 討伐完了!


 俺のほうに応援に来ようとしていた冒険者も、この様子を見て、足を止めた。


 これでもう大丈夫だろう。

 周囲の状況を確認する。


 かなりの負傷者だ。

 この感じだと……死者が出ているかもしれない。


 あれ、あの子は……?

 前にカッパードに受付で絡まれていた新人冒険者の女の子だ。

 怪我人の治療に当たってくれているようだ。


 ん、ぐったりして瀕死というか、死んだように見えた人が体を起こした。


 よく見ると……回復薬をかけてたようだ。

 かなりいい回復薬を使ってくれたのだろう。


 一瞬、回復スキルを持っているのかと思ったが……回復薬だった。

 効果の感じから見て、おそらく中級以上の回復薬だろう。

 この前俺があげた回復薬よりも、効果が高い感じだからね。


 結構高価なはずだが、人のために迷わずに使ってあげていて、素晴らしい。

 なにより、駆け出し冒険者がよく逃げ出さずに、怪我人の治療に当たったものだ。

 感心な子である。




読んでいただき、誠にありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] > 負傷者が多い。 > これは……まずい感じだ。 > 死者が出ているんじゃないだろうか……。  うーん、このモブに厳しい世界観(しかも時代を問わない) > そしてもう一つ、俺が喉から手が出…
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