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1171.伯爵の、依頼。

 『ボタニカルゴーレム』の検証も終わり、昨日の事件について話すために『冒険者ギルド』出かけようと思っていたら、お客さんがやって来た。


 豪華な馬車が、門の前に止まったのだ。

 なんか……毎朝のルーティーンになってきている気がするが……。


 ちなみに、門はまだ破壊されたままなんだよね。


 馬車から降りて来たのは……いつものように、ムーンリバー伯爵家の孫娘ルージュちゃんと、その母親のベニーさん、叔母のムーランさんだ。


 と思っていたら……なんとムーンリバー伯爵も現れた。


 馬車がもう一台あったようで、ルージュちゃんの父親で長男のムーディーさんまでいる。


 そして、次男で衛兵隊独立部隊隊長のムーニーさんと、もう一人女性がいる。


 何か……一家総出という感じだけど。

 多分昨夜の襲撃事件のことで来たのだろう。


 俺は、伯爵家の皆さんを出迎え、屋敷の中に案内した。


 ムーニーさんが連れていたのは、奥さんのミッティさんだった。


 応接室に案内して、話を始めようかと思った矢先、新たなお客さんが来た。


 ギルド長だった。


「ギルド長は、私が呼んでおいたのだよ」


 伯爵がそう言った。

 ギルド長を呼んでいたということは、やはり昨夜の件で来たようだ。


「すみません、昨夜は、お騒がせしてしまいまして」


 俺は、そう言って頭を下げた。


「貴公が謝る必要はない。襲われた側なのだからな。それに……今更目立つなと言っても、無駄だろうからな。フッフ」


 なんとなく……苦言を呈されてるような気がしないでもない。


 でも最初の頃と違って、だいぶ印象は柔らかくなっている。


「わざわざお越しいただいたご用件は、昨日の襲撃事件の件ですよね?」


「そうだな。では早速本題に入らせてもらう。昨日の襲撃については、ムーニーから詳しく聞いている。訪ねてきたのは、その件で頼みがあるからだ」


「頼みといいますと……?」


「昨夜襲ってきた連中が持っていた、特殊な魔法道具についてだ」


 おっと……やっぱり返してくれって話かなぁ?


「はい……」


「貴公の戦利品となっておるが……その存在を秘匿したい。衛兵隊で検証用に預かっていた物も、今返却する」


 あれ、……返してって話じゃないの?


「秘匿といいますと……?」


「実は……国に対する報告では、危険な魔法道具については報告から除外し、秘匿しようと思っているのだ。

 もちろん、『ドクロベルクラン』が別のクランを逆恨みして、夜襲したこと、その際にゴーレムで攻撃したこと、果ては魔物化したこと、キング魔物が現れたことは報告を上げるが、その際に使っていた魔法道具については、伏せるつもりなのだ」


 ほう……なんで正直に報告しないのだろう?


「なぜ魔法道具についてだけ、秘匿するのですか?」


「正直に報告を上げると……おそらく国のある機関が、それを欲しがる。

 貴公に戦利品として渡したにもかかわらず、理由をつけて没収しようとするはずだ。

 下手をすれば配下を使って、強奪するやもしれん。

 もし奪われた場合……戦力として使うだろう。

 無慈悲に兵士の腕を切り落としてでもな……」


「そんなことを……」


 確かに悪魔の影響下にあると思われる今の公国では、無慈悲なことを何でもやる可能性が高い。

 だが……普通に考えて、公国を影から支配しているでいるあろう悪魔と、今回の黒幕と思われる『黒の賢者』が繋がっているなら、あの魔法道具を公国の戦力に組み込むことは、余裕でできると思うんだが……。

 まぁその事は、今考えてもしょうがないが。


「それでもまだそれが、魔物討伐とかに使われるなら救われる。

 だが、人々を制圧するために使われる可能性もある。

 だから国が欲しがるような戦利品については、存在を秘匿するのが一番だ。

 国に渡して、良いことは一つもない。

 衛兵にも緘口令(かんこうれい)を引くから、貴公が承諾してくれれば、秘匿できる」


「それがいいじゃろうのう。

 国は……何するかわからん。

 その戦利品があることで、国に目をつけられたら面倒じゃしのう」


 ギルド長も、ムーンリバー伯爵に同意しているようだ。


「わかりました。そういたします。うちのクランのメンバーにも、緘口令を引いておきます」


「助かるよ」


 ムーンリバー伯爵が、安堵の表情で言った。

 そして、ムーニーさんが預けていた戦利品の魔法道具を返却してくれた。


 伯爵は、この件で急いで来てくれた。

 やはりこの人は、人々の為を思っている。

 信用していい人だ。


 悪魔の影響下にある『アルテミナ公国』でなくても、普通の国の為政者なら、強力な魔法道具は欲しがるはずだ。

 それに取り入ろうとすれば、むしろ積極的に差し出してもおかしくないし、場合によっては、自分が手に入れて戦力にしてもおかしくない。

 だが伯爵には、そんな発想は無い。


 今後は……俺の本当の目的を明かし、協力体制を築いた方がいいかもしれない。



「『黒の賢者』についての情報は、どうされるのですか?」


 俺は、気になる点を確認した。


「その点については、報告をあげようと思っている」


「国の中枢が腐り切っているとは言え、その周辺には、まだまともな者も残っているはずだ。

 その情報を知っていれば、警戒したり、新たな情報を得ることもできるかもしれんからな」


「そうですか。分りました。

『黒の賢者』の情報は、今までは全くなかったのでしょうか?」


「うむ。そんな話は聞いたことがない。だが今後、注意が必要だろう」


「そうですね」


「『ドクロベルクラン』の生き残りは、どうするのですか?」


「そうなのだ、それが問題なのだ。奴らから、秘匿する情報が漏れたら困るからな……」


「少なくとも……幹部の二人は、死罪に値する罪じゃろう。さっさと処刑してしまうのが、良いのではないか?」


 ギルド長が、結構乱暴な意見を言った。

 でもまぁこの世界では、普通のことなのだろう。


「確かにな……処刑を決めたとしても、ぐずぐずしていては公都に移送しろなどと言われるかも知れんからな……」


「下っ端のおかっぱどもは、どうする?」


 ギルド長が、渋い顔で訊いた。


 “下っ端のおかっぱ”って……俺的には、めっちゃツボだが……笑える雰囲気ではないので、必死に笑いを噛み殺す。


「そうだのう……死罪にできなくもないが、普通の量刑なら犯罪奴隷として終身刑が妥当なところではあるな……」


 伯爵も決めかねているようだ。


「ムーニー様、大変です!」


 なんだ!? 

 話の途中で、衛兵が駆け込んできた!




読んでいただき、誠にありがとうございます。


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次話の投稿は、明日の予定です。


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