1167.二冊に記載されている、スライム聖女。
『スライム その神秘と可能性』という本の中には、特殊なクラスチェンジと思われる変わった『スライム』の記述はあったが、肝心の特殊なクラスチェンジをするための条件については、記載されていなかった。
著者である『スライム博士』自身が、よくわかっていなかったようだ。
本を書く時点で判明している情報を、全て載せているという感じで、噂レベルのものも載っているのである。
ただ俺にとっては、結構いい情報ではあった。
特殊なクラスチェンジの条件はわからなくても、特殊なクラスチェンジの例と思われる特徴のある『スライム』の記述があったからね。
『小悪魔 インプ』や『小悪魔 ジャキ』の死骸を吸収すると、クラスチェンジの時に『ハイスライム』か『マジックスライム』を選べるようになる。
このことから類推して考えれば……何か特殊な生物の死骸を吸収したら、新しいクラスチェンジが発生するかもしれない。
吸収するものが、影響する可能性が高いと思うんだよね。
それから、本の中でも触れられていたが、もう一つの可能性は、特殊なクラスチェンジではなく、初めから『スライム』の亜種みたいな感じで、存在している可能性だ。
特に、水中にいる『スライム』は、その可能性が高いと記述されていた。
特殊なクラスチェンジによって現れるのではなく、初めから違う系統の『スライム』がいる可能性があるのだ。
『コウリュウド王国』の王立研究所に、何か資料がないか、後で訊いてみようと思う。
それから……長いあとがきの中に、自分には弟子がいて、『スライム』たちにすごく好かれる女の子だと書いてあった。
『スライム博士』の弟子で、スライムたちに好かれているから、『スライム聖女』と呼んであげることにしようと、楽しげに書いてあった。
もしかしたら、この『スライム博士』の弟子だった女の子が、将来『スライム聖女』になったのかもしれない。
この本の中には、『スライム聖女』の記載はそれしかないから、一般に知られている『スライム聖女』が世に現れる前に、書かれたものだろう。
そうでなければ、当然もっと記載されているはずだからね。
もう一つの本『幸福を呼ぶ百八体のスライム』には、『スライム聖女』の話がバッチリ載っていた。
この本は、どうも二百年くらい前に書かれた本で、本が書かれた当時から百年前、つまり今から三百年前に『スライム聖女』がいて、『スライム』たちを引き連れて街を綺麗にしたり、人々を助けたり、病気の治療したり、魔物を倒したりという活躍をしたと書かれている。
当時の人たちからは、絶大な支持を得ていて、崇められるような存在だったと記されている。
この国では、今は『スライム聖女』の話はそれほど有名ではないみたいだが、この本が書かれた二百年前当時は、有名だったらしい。
吟遊詩人の人気演目の一つだったとも、書いてある。
そして、この本には『スライム聖女』のように、百八体の『スライム』を集めることができれば、願いが何でも叶うだろうと記されている。
はっきり言って、都市伝説を作った犯人は、この本じゃないかと思う……まぁ断言はできないけどね。
著者は、ジェレミーとなっている。
著者についての詳しい記載はない。
ほとんどの部分が『スライム聖女』と『スライム』たちの活躍を記したもので、賞賛する物語といった感じだ。
あとは、『スライム』を集めて願いを叶えて、幸せになろうと呼びかけている本と言える。
ただ、『スライム』を崇めるような本だけあって、百八体の『スライム』を集めて、生贄として殺すみたいなことは書いていない。
今の都市伝説の内容になっているその部分は、他の誰かが作ったか、都市伝説が流布していく中で、付け加わってしまったものだろう。
この本はあくまで、『スライム聖女』と『スライム』の活躍を、面白おかしく書いていて、それを讃えているのだ。
そして、第二の『スライム聖女』の登場を期待するいう感じで締めくくられている。
新たな知識という意味では、この本から得る事はあまりなかったが、読み物としては結構面白いと思う。
このストーリーをベースにして、紙芝居を作って子供たちに見せてあげたらいいかもしれない。
そうすれば、この国の人たちも、もっと『スライム』を大事にしてくれるようになると思うんだよね。
二つの本を読んでも、すぐに使える情報はなかった。
儀式を行える神殿についての情報も、見つけることができなかった。
だが、『スライム』の可能性がまだまだあるということがわかり、非常に参考になった。
俺は、この世界で最強の生物は『スライム』じゃないかと思っているのだが……そういう思いがより強くなった。
今のままでも強いのに、いろんな種類の『スライム』が加わったら……もう『スライム』軍団だけで世界征服とかできちゃいそうだ。
もっとも、『スライム』たちってみんな可愛くて、純真で優しい性格をしているから、そんなことは絶対にしないだろうけどね。
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