1160.迷宮防衛の、対策。
「どうしてアバターボディーにも、魔法AIが組み込まれているの?」
俺は、疑問をぶつけてみた。
普通に考えたら、迷宮管理システムの指示を受信できる装置があるんだから、単独で魔法AIを組み込む必要はないと思うんだよね。
「はい、それは予備的なもので、保険のようなものです。
何かの事情で、本体である迷宮管理システムがコントロールできなくなった場合に起動し、迷宮管理システムとほぼ同様の思考プログラムで行動できます。
ですから、自力で帰ってくることも可能になります」
「なるほど……。
……併用もできるのかな?
つまり迷宮管理システムの指示を受信させたまま、魔法AIを起動させ、独自行動させることもできる?」
「可能です。
またこの機能をうまく使えば、並列思考状態で発生した問題に対処することも可能です。
通常は、迷宮管理システムとアバターボディーは、同一思考の並列処理状態ですが、魔法AIを起動させれば、並列思考で行動することが可能になります」
「その場合は、どんなメリットがあるわけ?」
「一番想定されるのは……緊急事態への対処です。
仮に迷宮が制圧される危機に陥った場合に、アバターボディー三体を並列思考状態で防衛行動させる。
その間、本体の迷宮管理システムは、迷宮のシャットダウンに取り組むというような行動が可能になります。
魔法AIを稼働させずに、並列処理状態でも同様のことができますが、並列思考にしてアバターボディーを単独で動かした方が、迷宮管理システムの負担が減り、当該作業に集中できるわけです」
「なるほどね……」
「それからアバターボディーシステムの最大の欠点は、アバターボディーが破壊され回収できなかった場合に、高度な技術である受信装置、魔法AI、帰還転移装置が、何者かの手に渡る危険があることです。
そのような事態を避ける意味もあって、アバターボディーが三タイプ用意されています。
仮に何かの事情でアバターボディーが損傷し、回収する必要が発生した場合に、他のアバターボディーで回収に向かえるわけです」
「なるほど、そういう意味もあるわけだ。そう考えると、一番回収が容易な小さい『幼女タイプ』で外出したほうがいいわけだね」
「それが合理的な判断となります」
「迷宮の防衛の話に戻ると……最悪、最終フロアに攻め込まれた時に、アバターボディーを起動して、武器などを使用して時間を稼ぐということが、できるってことだよね?」
「はい。ただそれは最後の手段です。
よほど強力な武器でもない限り、有効な防衛手段にはなり得ないと判断します。
あくまで時間を稼ぐという程度でしょう」
「そうだね。でもどうせなら、有効な武器も考えて、装備しといたほうがいいよね?」
「同意します。一つの方策になり得る可能性はあります。アバターボディーを使った防衛構想も、検討の余地ありです」
「有能な検知システムが使えるわけだから、弓矢や銃の系統の武器を使えるようにしたら、いいかもしれない。
そうだ! 『マシマグナ第四帝国時代』に使われていた『レイピアガン』という銃としても、剣としても使える『魔法の武器』があるから、それを装備しておこう。時々、迷宮内で訓練するといいよ」
「ありがとうございます。さすがマスターです。そういたします」
俺は、早速、『波動収納』から『レイピアガン』を三本取り出して、渡した。
『高速飛行艇 アルシャドウ号』の付喪神であるエメラルディアさんがメインの武器として使っているが、他にも何人かに渡してある。
俺も持っていて何度か使ったが、使い勝手の良い武器なんだよね。
迷宮管理システムの機能をうまく使えば、正確な射撃ができて、意外と防衛戦力になるんじゃないかと思う。
「迷宮の防衛策としては、他には何か案はあるかな?」
「はい、提案できる策としては……まず長期的な対策として、ダンジョンマスタールームがある最終フロアの手前及び周辺にフロアを増設し、守備を強固にすることです。
これはフロアの増設になるので、時間がかかりますが、長期的には有効です」
「なるほど、周辺にフロアを増設するのはわかるけど、手前には、すでにシークレットフロア第三層があるから、その間に増設なんてできるの?」
「はい、可能です。
このダンジョンマスタールームを中心とした最終フロアは、『コアフロアシステム』が採用されています。
最終フロア全体が迷宮の中核として一体化していて、土中を移動することが可能なのです。
ですから、現在のシークレットフロア第三層の後に、さらにシークレットフロアを増設することも可能になるのです」
さらっと言ってるけど……何そのビックリ機能!
最終フロアが移動可能なわけ!?
でも土の中を、どうやって移動するんだろう?
よくわからないが……土の中にフロアの増設ができるんだから、今あるフロアを移動することもできるのか……。
「それはすごいね」
「はい。ですがあくまで、長期的な対策です。
短期的には、現在のシークレットフロアに、魔物を満たしておくという手もあります。
もちろんレベルの高い魔物を生産してです。
ただこれも、時間稼ぎ程度にしかならないと思います」
「そうだね」
今回現れた『上級悪魔』のレベルを考えれば、この迷宮で生産可能な上限レベルの魔物を解き放っても、時間稼ぎにしかならないだろう。
「もう一つは……実現可能か分かりませんが、前マスターが万が一、悪魔などに狙われて迷宮が危険に晒された時に、防衛手段として活用できると言い残してくれたことがあります」
おお、それは凄そうだ!
「どんなこと?」
俺の質問に答えてくれたイチョウちゃんが語った内容は、驚くべきものだった。
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