1158.お宝と移動砲台を、ゲット。
「マスター……グリムお兄ちゃん、宝物庫を確認しなくていいですか?」
迷宮管理システムのイチョウちゃんのホログラム映像の方が、思い出したように尋ねてきた。
それはいいんだけど……大きいイチョウちゃんに、グリムお兄ちゃんと言われるのは、ちょっと微妙だ……まぁいいけどさ。
宝物庫は、さっき第三宝物庫で『魔手甲 ゴールドフィンガー』を手にしただけで、しっかりとは見ていない。
せっかくだから、ざっと確認しておこう。
てか、それ以前に…… 『魔手甲 ゴールドフィンガー』を、フミナさんたちに確認してもらおう。
『勇者武具シリーズ』である可能性が高いからね。
さっき呼び寄せたときに、見ていたと思うが……親指将軍の件で、それどころではなかったからね。
改めて見てもらおう。
俺は、『魔手甲 ゴールドフィンガー』を『波動収納』から取り出した。
「あ、これ……先ほどもチラッと見たんですけど、『勇者武具シリーズ』です! 『打撃の勇者』のサクラコが使っていたものです」
俺が取り出したのを見て、フミナさんが教えてくれた。
やはり『勇者武具シリーズ』だった。
『打撃の勇者』のサクラコさんという人が、使っていたのか……。
フミナさんが教えてくれたが、『打撃の勇者』は体術で戦う勇者だったのだそうだ。
ただこの武具は、十本の指が鞭のように攻撃するから……もはや体術っていう感じじゃないよね。
まぁそんなツッコミは、入れなかったけどね。
それにしても……この怪しい動きをする武器を使っていたのが、女性の勇者だったとは……。
でも冷静に考えると、女性の方がまだマシだったかもしれない。
男でこれを使っていると、ちょっと変な感じだよね。
エロく感じてしまうのは、俺だけだろうか……?
まぁ自分で言っておいて、男の俺が使ったわけだけどね。
でも意外とこの武器を、気に入ってしまった。
元々鞭を使っていた俺だから、戦い方が体にしっくりきたんだよね。
今後、結構使うかもしれない。
何とか集めたいと思っていた『勇者武具シリーズ』を手に入れることができて、本当によかった。
ちなみに『打撃の勇者』のサクラコさんは、最終決戦の時に瀕死の重傷だったようだが、生還して、元の世界に帰っていったのだそうだ。
元の世界に帰還した勇者の一人だったらしい。
あまり長居はできないが、さっと宝物を確認していこう。
第一宝物庫は、硬貨がほとんどで、ダンジョンマスターの活動資金として使うものだそうだ。
ざっと確認すると、いろんな国の金貨、銀貨、銅貨、銭貨がきれいに整理して置いてある。
小さな宝箱がいくつもあって、種類ごとに整理されているのだ。
こうやって整理してあると、すごくいい。
もちろん古い時代……『マシマグナ第四帝国』の硬貨もあるのだが、現在でも使われている硬貨がかなりある。
『コウリュウド王国』の硬貨はもちろん、東小国群のすべての国の硬貨が、整理して置いてある。
これは、かなり便利だ。
どこかの国に行く時に、その国の硬貨をここから持っていけばいい。
もっとも、どこの国の硬貨でも普通に流通できるので、あえてその国の硬貨を持っていく必要はないんだけどね。
ただその国の硬貨を使っていた方が、旅人感が薄れていいという事はあるかもしれないけどね。
普通に使える……現代でも流通している各国の硬貨だけでも……全部合わせれば、二億ゴルくらいはありそうだ。
『マシマグナ第四帝国』の硬貨は、三億ゴル分くらいはありそうだが、レアすぎて流通に乗せられないから、事実上使えない。
俺の『波動収納』には、すでに死蔵コレクションとなっている硬貨が多数あるから、ここにある分は、このままここに置いておこうと思う。
現代でも流通している周辺国の硬貨については、今後使う可能性があるので、回収させてもらった。
一番多いのは、『アルテミナ公国』の硬貨だったけどね。
第二宝物庫は、装飾品が多い。
この宝石の類は、女子メンバーが喜びそうだ。
実際フミナさん、エメラルディアさん、ニコちゃん、リリイは、かなりテンションが上がっている。
ただ、数はあまり多くない。
大きな宝箱二つ分ぐらいだろう。
多分だが……長く稼働している迷宮とは言え、マスターの不在期間が長ければ、新たに金銀財宝が集まる事はないわけだよね。
マスターが存在していれば、マスターが集めるという事はあるんだろうけどね。
ただ逆に、マスターが存在しているから、消費するということもあるだろうけど。
宝石類は、いまいち価値もよくわからないし、じっくり見ないと希少度でもわからないので、普通に使っていいものかどうかの判断も難しい。
後でじっくり見たほうがよさそうなので、改めて女子メンバーを連れて、宝石を見にこようと思っている。
今日のところは、ウィンドウショッピング感覚で、見るだけにしてもらった。
気持ち的には、この子たちに好きなのをあげたいところだけど、今度みんなでじっくり見た時でいいだろう。
第三宝物庫は、武器などが中心だ。
一番のレアな武器は、『魔手甲 ゴールドフィンガー』だったが、他にも一通りの種類の武具は置いてある。
『階級』は、『上級』が多いようだ。
普通の人なら、目を輝かせて喜ぶような装備も結構あると思うが、俺たちにとっては、普通という感じだ。
取り立てて喜ぶような逸品はない。
まぁ『勇者武具シリーズ』とかが基準になっちゃってるから……普通の冒険者が見たらすごい装備でも、あまり喜べない感じになっているんだよね。贅沢な話だが。
かといって、クランの新人冒険者に使わせるには、良すぎるというか……年代的に古い時代のものが多いから、レアすぎて、簡単に使わせてあげられる感じではないのだ。
よく探せば、意外と掘り出し物があるかもしれないが、まぁ今度ゆっくり見ればいいだろう。
今日は、ざっと確認するにとどめることにする。
「そういえば、これを忘れていました。こちらにどうぞ」
イチョウちゃんが、何か思い出したようで、俺たちを第三宝物庫の隣の大きな扉の部屋に案内した。
そこに入ると……なんと大砲のような装置があった。
「これは、移動魔砲台です。車輪付きの移動可能な台座に魔砲がセットされています。台座は魔法道具になっていて、魔力を通すことで、自走することができます」
おお、なんか凄そうなのが出てきた!
縦長の台座に大砲が乗っていて、その後に人が乗れるようになっている。
人が落ちないように、両側にガードがついているのだ。
台座には車輪が付いている。
まさに移動砲台だ。
『コロシアム村』での戦いの時に、俺の分身『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーが使った『パレットバレット』とパレット形状の浮遊砲台があるが、それの劣化版という感じだ。
浮遊はできないが、自走して移動ができるわけだ。
ナビーが使った『パレットバレット』に搭載されていたのは、超高性能の魔法の狙撃銃だったが、これは大砲……魔砲である。
おそらく上空にいる大型の魔物を倒したり、拠点を防衛するのに使える装備だろう。
これはいいかもしれない。
『ツリーハウスクラン』の防衛用に、置いておこうかな……。
ただ威力が高いだろうから、周辺被害が出ちゃう可能性が高い。
実際……使えるとしたら、上空にいる魔物の群れを撃ち落とすとか、そんな使い方しかできないだろうけどね。
『波動鑑定』すると……『名称』が『魔砲 ハイパー魔砲ランチャー』となっている。
『階級』が『極上級』だ。
魔力を充填して蓄積して発射するようで、次射を打つためのチャージに時間がかかるみたいだ。
連射がしにくい一発武器という感じかもしれない。
まぁ『限界突破ステータス』の俺が使えば、すぐに再充填できて連射できるだろうけどね。
これは、使えそうなので回収させてもらう。
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