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1157.第二世代型の特徴と、前マスターの方針。

「イチョウちゃん、この迷宮は本格稼働迷宮の『第二世代型』の二号迷宮ということでいいのかな?」


 俺は、改めて迷宮管理システムのイチョウちゃんに尋ねた。


「はい、そうです」


 元『癒しの勇者』で吸血鬼の始祖でもあるヒナさんから聞いた情報は、正しかったようだ。


「他の迷宮の情報とかは、あるかな?」


 多分ないだろうが、ダメ元で訊いてみる。


「他の迷宮に関する情報は、禁則事項となっており、アクセスできません。そもそも情報を所持していない可能性も高いです」


 やっぱりね……。


「この『第二世代型』迷宮の特徴を、簡単に説明してもらえる?」


「はい。それでは説明いたします……


 第一の特徴は、天然の迷宮に多く存在するアリの巣形状に構成されていることです。

 この主な目的は、天然の迷宮に偽装することです。


 第二の特徴は、ダンジョンマスター不在でも運営可能な『マスター不在稼働システム』が採用されていることです。

 先ほども説明しましたが、ダンジョンマスターがいない状態でも通常運営が可能で、迷宮管理システムの判断領域が極めて拡張されています。


 第三の特徴は、『マスター不在稼働システム』の採用で迷宮管理システムの判断領域が拡張されたことに伴い、情報収集等に役立てるために『アバターボディーシステム』が採用されました。

 これにより迷宮の外に出向いて、情報を収集することが可能になっています。


 第四の特徴は、迷宮の『増設拡大システム』です。

 階層構造ではなく、アリの巣構造にしたことによって、迷宮フロアの増設がしやすくなっており、フロアを増設し迷宮を大きくしていくことが可能です。


 ただこのシステムは、両刃の剣ともいえます。

 迷宮の規模が拡大すれば、それだけ必要とされるエネルギーも多くなり、吸い上げる魔素も多く必要になります。

 安定運営を考えると、拡大はマイナスともなります。

 事実、歴代のマスターも必要性を認めておらず、新たに増設したフロアは、過去に五つしかありません。


 現在の運営状態でも、前マスターの指示によりフロアの増設や拡張は行っておりません。


 もちろん、現マスターであるグリムお兄ちゃんの指示があれば、迷宮のフロアを拡張したり、増設することは可能です。

 『拡大モード』に設定すれば、無理なく少しずつフロアを増設することが可能です。


 拡大しますか?」


 まだ説明の途中なような気がするが……何を思ったのか、イチョウちゃんが訊いてきた。


「いや、今はやめておこう。必要があったらやると思うけど、それまでは現状のモードを維持してほしい」


「分りました。いつでも言ってください。


 ……以上が、主な特徴です。

 『第一世代型』との違いは、細かいことも含めれば、もう少しありますが、大きな特徴は以上です」


「わかった。ありがとう。

 ところで……この迷宮が、初心者用の迷宮と言われていて、比較的弱い魔物しか出ないとされているけど、それって何か訳があるのかな?」


「はい、それは前マスターが設定した条件を踏襲しているからです。

 前マスターは、天然の迷宮である『ゲッコウ迷宮』との差別化及び若手の冒険者の生存率向上のために、この迷宮を訓練用の迷宮と位置づけたのです」


 なるほど!

 そういうことだったのか。

 前マスターというのは……すごくいい人だったようだ。


「じゃあ、その設定を変えれば普通の迷宮のように、強い魔物をコピー生産して、放つことも可能なのかい?」


「もちろんです。この迷宮の最大生産可能レベルは60となっています。

 五種類の魔物が、レベル60状態で登録されています」


「なるほど……。そうなんだね……」


「設定を変更しますか?」


「いや、今のままでいいよ。

 多分前マスターが設定した各種の条件は、ほとんど変える必要がないんじゃないかな。

 だから、基本は現状を維持してほしい。変更する必要があるときには、言うから」


「かしこまりました」


「ちなみに……ふと気になったんだけど、宝箱もセットしていると思うけど、その割合ってどんな感じになってるの?」


「はい、設定では各フロアに一つは宝箱が設置されるようになっています。

 宝箱が開放され次第、補充される設定になっています。

 内容は、ランダムとなっていますが、回復薬の系統と下級の武具が中心となっています」


 各フロアに、必ず一つ宝箱があるなら、率はまぁまぁいいよね。


 でもなんで内容物が、回復薬とか下級の武具なんだろう?

 もっと良い物をセットしてあげればいいのに……。


 内容物は、なんでもっと良い物をセットしないの?


「前マスターの方針です。

 良い物を入れると強い冒険者も、宝箱目当て訪れてしまいます。

 すると、新人冒険者が宝箱を発見できる確率が減るからです。

 それから新人の冒険者が必要としている物という観点で、回復薬と武具にしているのです」


 なるほどね!

 良い物を入れちゃうと、中堅冒険者が来ちゃって、結局回復薬とかも若手の冒険者が取れなくなっちゃうからってことね。

 実力のある冒険者にとっては、あえておいしくない迷宮と思わせておくわけだ……。


 よく考えているなぁ……。


 確かにゲームなんかでも……序盤で回復薬とかが拾えると助かったもんなぁ。


 俺は、実は……もっと大盤振る舞いで、良い物が取れるようにしたらいいんじゃないかと思っていたんだよね。

 でも、言われてみれば、前マスターの考え方が正しいと思う。


「なるほど、そういうことなんだね。

 前マスターの発想は、素晴らしいと思うよ。

 もしかして……迷宮に放っている魔物も、一般的な魔物ばかり?」


「はい、その通りです。

 レアな魔物も、何種類か登録されていますが、生産していません。

 それを放つと、レア魔物目当てで実力のある冒険者が来てしまうからです。

 現在は、一般的な魔物で、特殊な攻撃をしない魔物をメインに放っています」


「なるほどね。そういうことか……徹底してしているな」


 ほんとに、初心者に優しいというか……なるべく命を落とさないように、配慮しているようだ。

 駆け出し冒険者が、経験を積みながらある程度までレベルがあげられる……それに集中できる迷宮を目指しているようだ。


 前マスターにならって、俺もこの方針を引き継ごうと思う。


 この迷宮のダンジョンマスターにはなったが、今まで通り、迷宮管理システムのイチョウちゃんに、運営してもらえばいいだろう。


 そして『ツリーハウスクラン』で育成する新人冒険者は、まずこの迷宮で、しっかり経験を積ませることにしよう。




読んでいただき、誠にありがとうございます。


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次話の投稿は、明日の予定です。


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