1155.魔力を無理矢理通したら、改良されちゃった。
「これは、貴重な魔法金属『アダマンタイト』でできているんです」
親指将軍が使っていた広幅の大剣『斬魔刀 オオブリ』を見ながら、盾の付喪神フミナさんが教えてくれた。
この大剣は、濃紺だが、確か『アダマンタイト』は、『ドワーフ』の里で聞いた知識によれば、光沢のある青色だったはずだが……。
そして、『アダマンタイト』は、最も硬く重い魔法金属だということだった。
この『斬魔刀 オオブリ』は、『アダマンタイト』の性能を活かした、敵を斬り、粉砕することを目的とした頑強な剣といった感じだ。
あと、『アダマンタイト』は確か……磁力を操ることができる性質があると言っていた気がする。
また魔力を通しにくいが、逆に魔法を遮断することができるとも聞いた。
まだ使い方のイメージは、湧いてこないが、貴重な性質であることは間違いないだろう。
今ふと思ったが……魔法が遮断できるということは、魔法陣とかも破壊しやすいのかもしれない。
それと、磁力を操ることができるなら、磁気を帯びたものを引き寄せる事もできるのかもしれない。
超電磁の力とかが使えたら……合体ロボとかもできちゃうのかな?
……いかん、悪乗りしてしまったようだ。
「『アダマンタイト』は、光沢のある青色なのではないですか?」
気になったので、訊いてみた。
「そうです。この剣も、将軍が使っていた当時は、綺麗な輝く青色でした」
「なぜこんな色に……」
エメラルディアさんが答えてくれ、フミナさんも首を傾げた。
剣を手に取ってみた。
……かなり重い。
これを自在に使いこなすのは、かなり厳しいんじゃないだろうか。
もちろん『限界突破ステータス』の俺は、大丈夫だが。
何かこの剣からは、汚れというか穢れというか……そんなものを感じる。
魔力が通りにくい性質ということだったが……なんとなくの思いつきで、魔力を流してみる……
確かに……魔力が流れていく感じが、あまりない。
元々の性質が影響しているのかもしれないが、なんとなく、全体に魔力の詰まりのようなものを感じる。
やけにその感覚が気になる。
少し乱暴だが、ぐっと魔力を押し込むイメージで流してみる……
おお!
途中から、スポンッと抜けるように、一気に魔力が通った。
そして、剣の表面がひび割れ、靄のように消えた。
まるで悪魔が霧散する時みたいな感じだ。
剣は、青く輝いている。
本来の輝きを取り戻したみたいだ。
さっきステータス画面を見た時は、『状態』表示には何も表示されていなかったが、『状態』には表示されない何かの異常があったのだろう。
もしかしたら、浄化系のスキルを使えば、もっと安全に元の状態に戻せたかもしれない。
そして俺が乱暴に魔力を通さなくても、魔力調整の天才児リリイちゃんに頼んだ方が良かったかもしれない。
すべて今更だな……。
念のため、『波動鑑定』をすると……
……え、『名称』が『斬魔刀 オオブリ改』となっている。
どういうことだ?
“改”って……?
そして、なんと『階級』が『極上級』から『究極級』に上がっている!
どうして……?
魔力を通して、穢れというか詰りのようなものを、取っただけなのに……。
念のためフミナさん達に確認したが、この武器の本来の『階級』は、『極上級』で間違いないそうだ。
そして、『名称』に“改”という表示もなかったとのことだ。
そうすると……今、無理矢理魔力を通したことによって、何か変化を与えてしまったということになる。
詳細表示を確認すると……
『本来魔力が通りにくい『アダマンタイト』素材に、上質で濃密な魔力を通したことにより、素材性能及び武器性能が改良された状態。
低確率で起きる素材変性の一形態。
この変性では、『アダマンタイト』の能力が向上し、頑強さが向上しつつも、魔力を通すことで軽量化できるようになっている。
また磁気操作能力及び魔法破壊能力が付加されている』
……と表示されている。
なんかよくわからないが、めっちゃパワーアップしてる感じなんですけど!
魔法破壊能力って、凄くない!?
魔法陣は、もちろん破壊できるんだろうし、魔法攻撃とかも破壊できちゃうのかもしれない。
磁気操作能力はよくわからないが……やっぱり超電磁の力とかだったりして……。
今後の検証で、確かめよう!
頑強さは、今までとの比較ができないので、どのぐらい向上しているのかわからないが、さっきよりも魔力が通しやすくなって、魔力を通すと軽くなっているのはわかる。
かなり、使いやすくなったと言えるだろう。
ちなみに、リリイに待たせてみると、余裕で軽々持ててしまった。
もっともリリイは、レベルが高いから普通の状態でも持てただろうけどね。
なんか……元の状態に戻せたと思って喜んでいたけど、それ以上の状態になってしまった。
フミナさんとエメラルディアさんも、驚きつつも喜んでくれている。
ニコちゃんとリリイは、剣の美しさに見惚れている感じだ。
俺は、この大剣を一度『波動収納』にしまった。
こうすることで、波動情報がわかるので『波動複写』でコピー生産できるのだ。
基本的には、親指将軍の『死体人形』に使ってもらうつもりだが、『波動複写』して俺も武器としてもストックしておこうと思っている。
もちろん、密かに続けているコレクションとしての保存もしておくが、必要が生じたときに使えるように、別に俺の武器フォルダにも入れておくのだ。
この剣は、リリイとニコちゃんにも、一本ずつ渡してもいいかもしれない。
リリイは、親指将軍の『死体人形』のマスターだし、予備的な意味も含めて持っていたほうがいいだろう。
ニコちゃんは、親指将軍が使っていた指人形型の『魔法の武器』である『パペットバレット』を継承している。
だから、同じく親指将軍が使っていたこの大剣も、継承してもらってもいいだろうと思ったのだ。
ということで、『波動複写』でコピーして、リリイに二本、ニコちゃんに一本渡した。
今後もしかしたら……親指将軍の『死体人形』と、リリイとニコちゃんが、大剣を持って共に戦う姿が見れるかもしれない。
親指将軍の『死体人形』はともかくとして、幼いリリイとニコちゃんが、自分よりも大きな剣を持って戦うのは、なかなかに凄い映像になりそうだ。
おまけにニコちゃんは、その時に左手で指人形も操作しているかもしれない。
まぁいずれ、そんな活躍が見れることを期待しよう!
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