1154.将軍の魂の、願い。
「口を挟んで申し訳ありません。
将軍の魂がおっしゃる通りです。
これらの『死体人形』は、リリイ様の力をもってすれば、正しく使えます。
人々を守る剣となりましょう」
突然話に割って入ってきたのは、リリイの『使い魔』になった『オリジン魔物』の一種である『妖魔』の『ジャックランタン』のジャクラーだ。
囚われていた魂の一部が解放され、ホログラム映像のように現れた親指将軍が、自分の体を正しいことに使ってほしいとリリイに申し出てきたのだが、それについての賛同意見のようだ。
「君は、僕たちよりも、当の本人のリリイよりも、『死霊使い』について詳しいようだね。もう少し詳しく説明してくれるかい?」
俺は、ジャクラーに追加説明を求めた。
「はい、『死霊使い』の能力の主なものを、簡単に説明させていただきます。
……『死霊使い』は、多くのアンデッドを使役することができます。スケルトン、ゾンビ、怨霊などはもちろん、上位の強力なアンデッドであるリッチまでも、使役することが可能です。
『ヴァンパイア』などの『特殊アンデッド』を除けば、ほとんどのアンデッドに影響を与えられるのです。
ですが……アンデッドは『光魔法』や『神聖魔法』などの浄化系の攻撃に弱く、無力化されてしまいます。
『死霊使い』の力をもってすれば、浄化され活動停止した後でも、骨や死体など素体が残っていれば、再度使役することは可能です。
ですが浄化系のスキルを持つ者やアンデッドに特攻の武器を持つ者に対しては、これを繰り返しても意味がありません。
戦闘力の大幅なダウンとなります。
ところが、この『死体人形』は、特殊な加工がしてあり、浄化系の攻撃の影響を受けにくくなっているようです。
この『死体人形』を、『死霊使い』が使役するゴーレムとして登録しておけば、なおさら影響を受けにくくなります。
『死霊使い』に使役されている状態は、ただのアンデッドの状態よりも、浄化系の攻撃に対する耐性を持つのです。
整理すれば……一般に存在しているアンデッドよりも、『死霊使い』が使役しているアンデッドの方が強い、そしてそれよりも、あらかじめ強化された『死体人形』のほうが強い、ということになります。
……長くなりましたが、一旦ここまでの説明に止めます」
なんとなくだが……その場で土から作るゴーレムと、ゴーレムとして使役するために人形を作っておく場合の強さの違いと、同じかもしれない。
土から一時的に作ったゴーレムよりも、あらかじめ土素材の人形として作ってある人形を、ゴーレム化して稼働させた方が強力なんだよね。
同様に、普通にアンデッドを使役するよりも、強化された『死体人形』を稼働させたほうが、強いということなのだろう。
それに加えて、『死霊使い』という特殊なスキルの力が、さらにプラス補正をかけるということのようだ。
もしリリイが戦力として使えば、将軍の意向通り、正しい力として、人々を守る力として、使えるだろう。
しかも強力な戦力になるわけだ。
だが、やはりもう眠らせてあげたいという気持ちもあるよね……。
「グリムさん、将軍の意向に沿ってあげてください。彼はこういう人なんです」
エメラルディアさんが、そんな声を上げた。
フミナさんとニコちゃんも、頷いている。
親指将軍の魂が、微笑んだ。
「分りました。リリイ、親指将軍の意向を、汲んであげよう」
「わかったのだ! よろしくおねがいしますなのだ!」
「ありがとう皆さん。ゆっくり話をしたいんだけど……もう行かなきゃいけないみたいだ。……でも……私は戻って来る!」
親指将軍はそう言うと、右手の親指を突き出した。
そして安心した顔をして……光の粒子となって、立ち昇るように消えた。
「リリイ様、『死霊使い』スキルの技コマンドの中に『死霊魔法——死霊人形』があるはずです。
将軍の『死体人形』と他の『死体人形』たちは、その技コマンドで、一度起動させてください」
ジャクラーが、何やら手順をリリイに示している。
「わかったのだ」
リリイがそう言って、技コマンドを発動すると、動きを止めていた『死体人形』たちが少し動いた。
「これで、『死霊使い』が使える亜空間に、保管できるはずです」
「なんとなく……わかるのだ。やってみるのだ。死霊ポケット——回収!」
リリイがそう言うと、『死体人形』たちは、一瞬にして消えてしまった。
『死霊使い』専用の『アイテムボックス』みたいな亜空間に、回収したのだろう。
親指将軍の『死体人形』だけが武器を使っていて、その武器が地面に刺さったまま残っている。
広幅の大剣だ。
これはおそらく、親指将軍が生前に使っていたものだろう。
将軍は、今ニコちゃんが使っている『パペットバレット』という指人形の魔法道具とともに、大きな剣を使っていたという事だったからね。
「この剣は、将軍の遺体とともにあったんですね……」
「人々を守る剣だったのに、操り人形にされて悪用されていたとは……ほんとに悪魔ども、許せない」
フミナさんとエメラルディアさんが、剣を見つめながら言った。
広幅の巨大な斬馬刀のような剣だ。
『波動鑑定』をかけてみると……『名称』が『斬魔刀 オオブリ』となっている。
『階級』は『極上級』だ。
一応、『魔法の武器』のようだが、何かの技が組み込まれているという感じでは無いようだ。
ただ切れ味と頑丈さが特徴の剣みたいだ。
青みがかったというか……濃紺の剣だ。
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