1145.使い魔、大集合!
雷の直撃を受けて、ネズミ魔物のキングが、仁王立ちのまま硬直している。
だが、さすがに死んではいない。
レベル55だけはある。
おや、……あれは?
光り輝く獣?
虎みたいな感じの姿だが、黄色の揺らめく炎のような光を全身に纏っている。
敵ではないようだが、『波動鑑定』をかける……
おお、『種族』が『ライジュウ』となっている。
ライジュウ……雷獣ってこと?
「雷鳴斬!」
ライジュウが言葉を発した!
前足のかぎ爪でネズミのキングを切り裂き、一撃のもとに倒してしまった!
……強い!
雷に打たれ動けない状態だったとは言え、レベル55のキングを一撃で倒すとは……。
改めて『波動鑑定』で確認すると……このライジュウは、レベルが45だ。
格上の相手を、一撃で倒してしまったらしい。
「私は『ライジュウ』のピッカリー、『雷使い』様にお仕えするために、まかり越しました。やっとお会いできました……」
『ライジュウ』は、『雷使い』の虎耳の女の子ラムルちゃんの前に行き、伏せのような姿勢で挨拶をしている。
ラムルちゃんは、驚いているが、すぐに笑顔になった。
「お友達になってくれるの?」
「お望みとあらば、友にもなりましょう。あなた様をお守りいたします」
「ありがとう! 私はラムル、よろしくね」
ラムルちゃんは、そう言いながら『ライジュウ』に抱きついた。
黄色の光炎は、熱いわけではないようだ。
ラムルちゃんは、全く気にしていないからね。
あれは単に、光のオーラみたいなものなのだろう。
俺が行くまでもなく、突然現れたライジュウが倒してくれた。
『雷使い』のラムルちゃんにも、『使い魔』と言える存在……相棒が現れたみたいだ。
『精霊神アウンシャイン』様がメッセージで言っていた“必要な出会い”というのは、このことだったのかもしれない。
今までも『使い人』の子たちには、『使い魔』が現れていた。
ある意味『使い人』にとって、『使い魔』との出会いは“必要な出会い”と言えるだろう。
『使い人』になった子で、『使い魔』が現れていないのは、もうリリイとチャッピーだけだ。
——シュン、シュン、シュン、シュン、シュン
俺がそう思ってしまったからか……何か現れたようだ!
何かの回転音のようなものが響いたのだ。
それは……ニアたちが戦っている倉庫の上だ!
倉庫の一部を破壊し仁王立ちしているクマのキングに対して、何か……大きな竹とんぼのようなものが、飛んで襲いかかっている。
黄色い大きな竹とんぼのようなものは、一旦屋根の上に着地した。
てか……ライオン?
でもサイズは、猫くらいだ。
タテガミが独特だ……ひまわりの花びらみたいになっている。
『波動鑑定』をかけると……『スピリット・サンフラワーライガー』となっている。
『スピリット』と入っているから、霊獣のようだ。
『サンフラワーライガー』とあるが……ライガーって、もしかしてライオンと虎のハーフのこと?
そして、タテガミは確かにひまわりみたいな感じだ。
この世界には、『サンフラワーライガー』という珍しい通常生物がいて、それが霊獣として覚醒したってことなのかなぁ……?
さっき空を飛んでいた時は、直立した状態で上を見て、ひまわりのようなタテガミが高速回転して、竹とんぼのように飛んでいたんだよね。
そしてこの霊獣も、すでに強い。
レベル52だ。
「フラワースピン!」
お、もう一度、さっきみたいに竹とんぼ状態で、飛行した。
そして、フェイントをかけるように揺れながら飛行して、速度も微妙に変えながら、一気に熊のキングの首を切り裂いた!
さすがに切断には至っていないが、大量の血を吹き出し、熊のキングが悶絶するように暴れている。
ニアたち、大丈夫かな?
「大丈夫!? 僕に任せて! フラワーブリザード!」
ライガーは、ニアたちにそう言うと、屋根の上に四つん這いになり、熊のキングに向けて、タテガミを回転させた。
するとタテガミの花びらが一部抜けて、刃の吹雪となって熊のキングに襲いかかった。
熊のキングは風圧に押され、堪えている状態のところを、無数の花びらの刃で切り刻まれた。
全身から血を吹き出し、ゆっくりと倒れた。
どうやら倒したようだ。
「僕は、『猛獣使い』様を助けに来た『使い魔』の一人だよ。
『ひまわりライガー』の霊獣、ジュウシンだよ!
今後ともよろしく」
そう言って、チャッピーの前に立った。
基本二速歩行なのか……?
そして、サンフラワーライガーではなく『ひまわりライガー』と言っていたが……そういう呼び方もあるのか?
「チャッピーなの〜、よろしくなの〜、来てくれてありがとなの〜」
チャッピーはそう言うと、嬉しそうに抱き上げた。
直立しているといっても、猫サイズだから抱きかかえられちゃうんだよね。
チャッピーにまで、『使い魔』が現れてくれた。
なんかすごい展開になってきた……。
『ドクロベルクラン』の迷惑な夜襲だったが、何か新たな仲間が集まる呼び水になってくれているのだろうか……?
あとは、ここにいる兎のキングを倒すだけだ。
『美火美』のメンバーと『ボタニカルゴーレム』がよく持ちこたえてくれている。
残っていたゴーレムは、全て倒してしまっている。
兎のキングに集中して抑えてくれているが、キングの動きが早くて。かなり苦戦している。
まぁレベル的にも、完全に格上だしね。
『ボタニカルゴーレム』の検証としても、意味があった。
戦闘用の『ボタニカルゴーレム』なら、レベル50程度の魔物相手でも、ある程度持ち堪えることができる。
それがわかったのは、非常に大きい。
できれば、『美火美』のメンバーに倒させてあげたいが、現状では厳しい感じなので、俺が倒してしまうことにしよう。
そう思った途端……兎キングの首が吹っ飛んだ!
また何か現れたようだ。
……今夜は、本当にお客さんが多い日だ。
ん? どう見ても……カボチャが宙に浮いてる。
そして大鎌を持っている。
……あれって……ゲームなんかで出てくるジャックランタン?
手にした大鎌で、兎キングの首を刈り落としたのだ。
『波動鑑定』をかけると……『種族』が『ジャックランタン』となっている。
予想通りジャックランタンだ。
この世界にいるのか、ジャックランタン!
……少し嬉しい。
レベルは45だ。
驚いたことに、10もレベルが上の兎キングを一撃で倒したらしい。
そして、なぜか俺のもとにサッと飛んで来た。
ハロウィンで使われるようなカボチャの頭に、黒いマントを羽織っている。
カボチャの蔓のような手で、大鎌を担いでいる。
もう一方の手には、青白い炎を灯したランタンを持っている。
体は、蔓がぐるぐる巻いたもので、できているようだ。
上半身だけしかない。
空中に浮遊するのが、基本スタイルなのだろう。
「お初にお目にかかります。
私は『ジャックランタン』のジャクラーと申します。
『オリジン魔物』の一種で『妖魔』とも言われています。
ご心配なく、私は害なす者ではありません。
状況は、あらかた把握しております。
『死霊使い』スキルと少々縁がありまして……長い眠りから覚めました。
今回は『死霊使い』様に、お仕しようと思っております。
ご挨拶がわりに、魔物を倒しました。
まずは、『死霊使い』様の盟友であり、強き王であるあなた様に、ご挨拶申し上げます」
ジャックランタンはそう言って、俺の前で浮遊しながらお辞儀をした。
カボチャ頭のくりぬかれた目の奥には、瞳のように青白い炎が揺れている。
いまいちというか……まったく表情はわからない。
だが悪いものは感じない。
言い方は少し微妙だったが……リリイの『使い魔』になってくれるという事のようだ。
これで、今まで『使い魔』が現れていなかった子たちも、現れたことになる。
しかも、今回現れた『使い魔』は、みんなレベルが高く、そして強い。
非常にありがたい戦力補強だ。
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