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106.偵察で、殲滅。

 俺達がいるオリ村より先に、街道を南に行くと、街道が二股に分かれているようだ。


 南東方向に向かう街道は、『チュウネ』という街に続いているそうだ。

 南西方向の街道を行くと領都に着くらしい。


 二つの街道とも近くに大きな森があり、ほとんどの魔物がそこから出てきたのではないかとの事だった。


 普段は、当然のことながら人の街まで襲ってくる事は、ほぼ無いそうだ。


 何かの力が働いてるのかもしれない……嫌な予感がする……。


 確かに、この街の少ない戦力で戦うには道が一つに絞られるここがいいかもしれないが……


 魔物は人と違って、必ずしも道だけを通るわけでは無い。

 “危険な賭け”な気もする……。


 俺は密かに『波動検知』で魔物の気配を探る。


 確かに主な魔物は、二つの街道を通ってきているが……


 かなりの数だ……この感じ……百は超えているね。


 この防衛陣地では持たないかも……


 俺は暫し黙考する……。


 ……むしろ俺達で打って出て、倒してしまった方が安全だし早い。

 人目がない方が暴れやすいし。


 ここだと俺達も戦いにくいし、衛兵や志願兵に死傷者が出る可能性もある。


 いくら回復魔法があると言っても、即死するような攻撃を受けたら無理だろうし。



 俺は衛兵長に一つ提案をした。


 魔物の数を把握する為に、俺達で様子を見てくるという提案をしたのである。所謂、偵察任務だ。


 仮に魔物と出くわしても、ニアがいれば何とかなるので危険も最低限だと説明した。



 危険すぎると衛兵長には反対されたが……


「大丈夫! 私達に任せときなさいって。無理はしないから。あなた達は魔物が来た時に備えて、しっかり体制を整えといて」


 ……ニアが押しきってくれた。


 衛兵長もニアには、かなわないようだ。


 ということで、俺達だけで偵察に出ることになったのだが……


 クレアと名乗ってくれた金髪美人さんが、ついて行くと言い出した。


 なぜか目を潤ませて必死だ。


 ありがたいけど、これは阻止しないと……


 ニアもそう思ってくれたらしく、機転を効かせて彼女に役割を与えてくれた。


「有志で参加した街の人達をフォローする人間がいないと死傷者が出ちゃう。あなた、衛兵長の次くらいに強いと思うから、それを担当して。死者を一人も出したく無いの。あなたがそれを担当してくれないと私が安心して戦えないわ」


 ニアが説得してくれた。


 衛兵長も頷いてくれている。


「わ、わかりました。仰せの通り、私に出来る事を致します。呉々もお気を付けて」


 クレアさんが了承してくれた。

 一瞬歯を食いしばったように見えたが、しっかりと顔を上げて引き受けてくれた。


 ニア、グッジョブ!


 ……ニアって時々ちゃんとしてるんだよね。



 そんな一悶着もありながら、俺達は早速出発した。

 偵察という名の殲滅作戦だ!



 防衛陣地を出てしばらくすると街道が二つに分かれる分岐点に着いた。


 南西の街道を、ニア、リン、シチミ、フウ、オリョウの高レベルなメンバーで、担当してもらう。

 基本的に魔物は全て殲滅。

 魔物の死体は三割程度残し、それ以外はシチミの『時空間収納』で回収ということだけ決めた。

 後は自由にやってもらうことにした。

 随時念話できるから、何かあったらその時対処すれば良いだろう。


 そして俺はレベル低めの新メンバー達と一緒に南東方向の街道に向かう。


『家馬車』は現在フォウが一頭で引いてるが、フォウの力からすれば全く問題ない。


 こっちの街道に向かってきている魔物達は、五十体以上はいる。

 レベルは、5〜20位のようだ。


『波動鑑定』すればはっきりわかるが、見ないとできない。

『波動検知』では、大体しかわからないのだ。

 俺が熟練すれば出来るようになるのかも知れないが……。


 新メンバーの訓練とレベル上げに丁度良いだろう。


 ということで、接敵後は、『家馬車』を戦闘陣地の核として使う事だけ決めて、あとは自由にやらせてみることにした。


 俺は監督に徹する予定だが、危なくなったらすぐに救援に入るつもりだ。



 そろそろ接敵する———


 最初に押し寄せてくるのは、バッファローとイノシシの魔物だ。


 集団を引き連れるように駆けてくる。

 俺には、おいしい牛肉と豚肉が走って来るように見える。

 この前、イチミが出してくれたバッファロー美味しかったからね。


 それに続くように、ネズミやウサギの魔物などが迫る。


 おお……戦闘の口火を切るのはフォウのようだ。


 体が光を発している———


 種族固有スキル『黄金の道(ブロンドロード)』を使うようだ。


 体が上気し、神々しい黄金の光を纏う。


「アタイに任せな! やってやろうじゃん! 」


 黄金の塊となって、魔物の群れに突っ込んだ———


 大きな光の弾丸となったフォウは、バッファロー魔物達の迫る巨体も全く意に介さず、正面から突っ込んでいく。

 ただひたすらに、まっすぐ駆け抜ける。

 まるで競走馬が最終コーナーを回った後のようだ。

 ただただ、ゴールに向かって突き進む一直線の走りである。


 魔物達を弾き飛ばしながら走り抜けていくその後には、輝く一筋の道ができている。

 まさに“黄金の道”だ!


 その後をトーラが続いて駆け抜ける。


「私、主様と遊びたい! あんたたち邪魔! 」


 周囲の魔物達を目に見えない風の刃が切り刻んでいる。

 種族固有スキル『タイガークロウ』は、直接の斬撃だけでなく、剣爪の起こす烈風刃で離れた敵も切り刻むことができるようだ。

 中距離程度までなら充分通用する便利な攻撃のようだ。


 そして『家馬車』の周りでは、タトルが何か技を出すようだ。


「ワタクシ、必ずマスターのお役に立って見せるのですわ! 仲間はワタクシが守るのですわ!」


 一瞬光ったが……あれはおそらく種族固有スキル『亀城(タートルキャッスル)』だろう。


『家馬車』を中心に防御障壁を張ったようだ。

 この障壁は物理攻撃、魔法攻撃両方に耐性がある強固なものだ。

 それでいて、こちら側からは攻撃できるという非常に優れたものなのだ。


 このスキルのお陰で、無理に『家馬車』の中にこもらなくても戦える。


 みんな外に出てきて、身構える。


 魔物達がある程度の距離に近づくと、突然、周囲の草が急激に伸び魔物に絡みつき動きを封じた。


「ぼくに力を貸して! 伸びて! 巻き付いて! 」


 レントンの種族固有スキル『多感作用(アレロパシー)』によるものだろう。

 周辺の草に働きかけて、急成長を促すとともに、巻き付けさせたようだ。


 動きを封じられた魔物は、ただの的でしかない。


 サーヤ、ナーナ、アッキー、ユッキー、ワッキーがそれぞれクロスボウを射出する。


「えいっ」

「やっ」

「それっ」

「はいっ」

「ういーんっ」


 ミルキーは『魔法の弓』を使うようだ。


 あの『魔法の弓』は階級が『上級(ハイ)』で、魔力を流して弦を引くと魔力が凝縮された矢が実体化する。

 つまり矢を補充する必要がない優れた武器なのだ。


 もっとも、魔力が尽きれば矢も尽きるわけだが。


「仕留める! いっけーー! 」


 ミルキーが矢を放つ———


 シュッ———

 ———ビュイーンッ

 ———ボウンッ、ボウンッ、ボウンッ


 突き抜ける一直線の軌道が、次々に魔物に風穴を開ける。


 すごい威力だ!


 射ったミルキーも矢の威力に驚いている。



 今度はチャッピーが『魔法のブーメラン』を投げる———


 チャッピーにとっては、かなり大きめのブーメランになっているが、普通に扱えるようだ。


 チャッピーは、オーバースローのように上からブーメランを放った!


 魔力を帯びて赤く輝くブーメランが、回転しながら大きくなったように見える。


 魔力で刃を形成しているようだ。


 回転しながらウサギの魔物に迫ると———真っ二つにした!


 撲殺するのかと思ったが、魔力の刃で切り裂く攻撃のようだ。


 そのまま軌道を変えて、別の魔物に向かう。


 意思の力で、ある程度軌道コントロールができるようだ。


 二体追加で切り裂いた後、チャッピーの元に帰ってきた。


 さすが『魔法のブーメラン』だ!

 自動で手元に戻ってくる。


 中距離攻撃で相手は反撃できないし、チャッピーは一度の投擲で何体も攻撃できる。

 かなり強力な武器だ。本当に掘り出し物だった。


 チャッピーはセンスがあるようだ。

 完全に使いこなしている。チャッピーすごい!


 クロスボウ攻撃の合間を縫って近づくネズミ魔物に、リリイが攻撃を仕掛けようとしている。


 無理に出なくてもいいのに……チャッピーの活躍に刺激されたのかなあ……

 いかんいかん……ついつい親目線で見てしまう……。


 俺はいつでもフォローできるように鞭を構える。


「バイバイなのだ! ゴッチーーン! 」


 ジャンプで飛びかかりながら、魔鋼のハンマーでネズミ魔物の脳天を砕く。


 ネズミの魔物といっても、大型犬位あるのでリリイより全然大きい。

 自分より大きい魔物を一撃必殺なんて、リリイすごい!


 凄い威力だし、器用に魔力をコントロールしているようだ。

 うまく使いこなしているね、リリイすごい!


 今度はナーナだ。


 『家馬車』の一部に槍が仕込んであったようで、慣れた手つきで取り出し構える。


 迫るネズミ魔物を軽い槍さばきで串刺しにする。


 体に余分な力が全く入っていない、達人のような動きだ。


 槍も使い慣れたものなのだろう、体の一部のようだ。


 まぁ『家馬車』に内蔵してあったんだから、『家馬車』そのものでもある彼女の一部というのは、実態としても合ってるね。


 おそらく、サーヤと二人で旅してた時の接近戦はナーナが担当だったのだろう。


 他のみんなは、先ほど同様クロスボウで次々と魔物を穿っている。



 しばらく見守っていると、魔物の波もおさまり一段落ついた。

 危なげない戦いぶりだった。


 昨日のレベルアップ遠征が効いていたね。



 周辺にはまだ魔物が残っているが、どうやら無理には近づいてこないようだ。


 だがいずれ襲ってきても困るので、俺が高速で倒して回ることにした。


 みんなには、警戒を怠らないようにしつつ休憩するように指示を出した。


 俺は、ものの五分もかからず倒してきた。

 もう周辺にはいないはずだ。



 ニア達に念話をすると、向こうもほぼ片付いたとのことだ。


 ただ最後に大きな蛇の魔物がいて、今はそいつと戦ってるところらしい。

 どうも大きな蛇の魔物に追い立てられるように、魔物達が移動していたのではないかとのことだ。


 こっちにはいなかったけど……


 念の為、もう一度魔物の気配に集中すると……


 いた!


 街道から大きく外れている。


 二股になってる街道の付け根、つまり衛兵長達の防衛陣地の丁度正面にあたる草原を移動している。


 その先には俺達が先ほど倒したのと同じような魔物の集団がいる。


 いつの間に……


 少し距離が離れているので、気づかなかったようだ……。



読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、本当にありがとうございます。

誤字報告していただいた方、ありがとうございます。感謝です。

今後もお気づきになりましたら、ご指導願います。


次話の投稿は、14日の予定です。


もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。

よろしくお願いします。

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