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105.なぜか、パレード。

 俺が思いついたナイスなアイデアは……ズバリ養蜂だ。


 ロネちゃんの『虫使い』スキルがあれば、蜂達を自由に誘導することができる。


 養蜂用の巣箱を作って蜂達に活動してもらえば、安定しておいしいハチミツがとれるはずだ。


 前にサーヤに聞いた話では、料理で使う蜂蜜はたまに売っているらしいが、森の中で採ってきた物が売られているようだ。


 俺は元の世界にいた時に、養蜂もやろうと思って巣箱の作り方を勉強したことがあった。


 別件で忙しくなってしまって、分蜂のタイミングを逃し実現に至らなかった。


 だが巣箱の作り方は覚えている。


 米作りに続いて、もう一つ楽しみができた!


 一段落したらロネちゃんに話をして、チャレンジしてみたい。



 そんなことを思いながらニヤニヤしていた時……


 数頭の馬蹄の音が聞こえてきた。


 迎えが来たようだ。


 ———衛兵長直々のお出迎えだ。


「ニア様、グリム殿お待たせしました。ご案内いたします」


「わかりました。今行きます。表の馬車で仲間達を一緒に連れて行きますので、先導してください」


「は、はい、わかりました。もしや……この小さな子達もですか? 」


 衛兵長が怪訝そうな顔をする。


「大丈夫、この子達が強いから。私が守るし」

「リリイは、強いのだ!」

「チャッピーも戦えるなの! 」


 ニアの言葉に衛兵長も納得したようだ。


 俺達は表に停めてあった馬車に乗って、衛兵長の後について大通りに行く。


 トルコーネさん一家が大通りまで見送ってくれた。


 ネコルさんが、『家馬車』を見た時にひどく驚いていた。


 さすがに、こんな家の形をした馬車は中々ないだろうからね……珍しいよね……。


 ロネちゃんも、一瞬固まっていたしね……。


 俺達は衛兵長の後をついて中央通りを進む。

 そのまま南門を出れば、他の街などに行く街道になる。


 街道沿いには村が六つほどあるらしい。

 その一番先の村の周辺に防衛陣地を作ってあるそうだ。


 中央通りを進んで行くと、だんだん人が増えてきた。


 そしてなぜか、すごい歓声が上がる。


「妖精女神様ーー、ありがとうございます!」

「あゝ、女神様ーー」

「あ、あの竜馬(りゅうま)! この前助けてくれてありがとよー」

「ありがとう! 」

「あれが凄腕テイマーか、若いなぁ……。よお! 凄腕若旦那! 」

「かっこいいぞ! 若大将! 」

「きゃー! 若旦那ー! 」

「女神の使徒だ! ありがとなぁー」

「今度うちの店に食べに来なぁー」

「お礼に奢らせてくれー」


 な、なんだ……なんだこれは……


 どんどん……人が集まってくる……まるでパレードじゃないか……


 衛兵長が馬を横に寄せてニヤリと笑う。


 さては……この人、仕組んだね……。


「皆さんは、この街の英雄なのです。みんな助けられたり、家族を救われた者達です。よかったら手を振ってあげて下さい。みんな喜びます」


 衛兵長が満面の笑みでそう言ってくる。


 ……手を振れと言われてもねぇ……。


 俺はそう思ったのだが…… ニアはご機嫌で手を振りながら飛び回っている。


 全くあの人は……自由すぎるし……何も考えてないし……まぁいいけど……。


 そして今度は、兵士でない一般の人達が武器を持って待ち構えている。


 特に殺気は感じないが……


「女神様、私達も一緒に戦います。布陣にお加えください! 」

「「「お願いします! 」」」


 俺達が魔物退治に行くのを知って、一般の人達で戦える者が参加を表明してくれているようだ。


「あいわかった! 妖精女神様と共に戦いたい者は、後に続いて来て良し! 我らの手で魔物から街を守るぞ! 」


 そう衛兵長が煽るようなことを言うと、町中から一斉に「おお! 」と言う地響きのような声が沸き上がった。


 結構な数の有志が参加してくれるようだ。


 俺は、馬の手綱を持ちながら……といってもオリョウ達が勝手に進んでくれているので、俺は御者しているふりだけなのだが……沿道の人達に軽く会釈をすることしかできなかった。


 子供達も『家馬車』の中から外を覗いて、ちょっとビビっていたようだ。


 ……そんなこんなで街の南門を出た。


 門から出ると両側には畑や果樹園などが広がっている。

 素晴らしい田園風景だ。

 今度ゆっくり村々を回りたい。

 衛兵長の話では、それぞれに特徴があるらしい。


 このエリアは荘園と呼ばれるもので、荘園毎に栽培作物などが決まっていて、それを担当する為に村が置かれているのだそうだ。

 といっても、決まった年貢を収めれば、それ以上の収穫物は村で売って収入にできるらしい。


 逆にこれが無いと村人は、生活が出来ないのだそうだ。


 領主が賃金をくれる訳ではないらしい。


 その分自由度は高くて、決まった作物さえしっかり納めれば、自分達で独自の作物を作っても良いのだそうだ。


 領主や貴族の直轄荘園は、従事者を直接雇用して賃金を払い、収穫物は全て販売したりするそうだ。


 ここの荘園も基本的には領主のものだが、管理はマグネの街の守護がするらしい。

 六つの村は、マグネの街の管轄との事で、街の一部ともいえるらしい。


 街道沿いに村があると聞いていたが、街道から見える村もあれば奥に入ったところにある村もあるようだ。

 すべての村が街道から見えるわけでは無い。


 衛兵長が馬を近づけ、ざっくり説明してくれる。


 最初の村であるベジ村は街道の右側つまり西側にあって、主に野菜を栽培しているらしい。


 次の村のラクノ村は、左側つまり東側の奥の方にあるらしい。街道からは見えない。牛、豚、鶏などを飼育してるようだ。


 次のポテ村も西側の奥にあって街道からは見えない。芋類を作っているらしい。


 次のグレ村は東側の少し奥でやはり街道からは見えない。葡萄の栽培が中心のようだ。質の良い葡萄酒を作っているらしい。


 次はコム村で、西側にあり、かろうじて街道から見える。小麦栽培が中心との事だ。


 最後の村が東側で街道から見えるオリ村で、オリーブ栽培をしているようだ。



 俺達はかなりの速度で移動している。

 一番離れたオリ村までは、ゆっくり行くと一日ぐらいかかる距離はあるようだ。


 ちなみに、オリョウとフォウには余裕のスピードだ。

 本気で走ったらこんなものではないだろう……。



 オリ村に着く頃には、夕方になっていた。


 街道を封鎖するような形で防衛陣地が作ってあった。


 といっても、たいした物は作られて無い。

 木の柵のようなものを立ててあるだけだ。


 そりゃそうか……急に壁が作れるわけはないし……大森林の仲間達で感覚が麻痺していた……。


 そして、俺達は衛兵長から作戦を聞くことにした。




 

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次話の投稿は、13日の予定です。


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