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1108.薬師ギルドの、既得権益。

 変わったパーティーというほどではないが、薬師三人で冒険者になろうとしている本当の駆け出しパーティーがいたそうだ。


 薬師をやったほうが安定して稼げるし、危険もないと思うんだけど。


 面接を担当した『アメイジングシルキー』のサーヤも、そんな疑問を投げかけたそうだ。


 三人は幼なじみで、近所に住んでいる薬師のおばあさんから、薬草の知識や調合を習ったのだそうだ。

 子供の頃から習っていたらしく、まだ十八歳の彼女たちでも、ある程度の回復薬は作れると言っていたらしい。


 公都に住んでいたが、治安など色々な問題が悪化して、家族とその薬師のおばあさんの勧めで、自由な気風の迷宮都市に来たらしい。


 迷宮都市で薬師として働きながら、強くなるために迷宮にも挑もうと思っていたようだ。


 ところが迷宮都市は、『職人ギルド』から独立して『薬師ギルド』があるほど薬師の数が多く、生計を立てるのが大変らしい。

 そもそも……『薬師ギルド』に入ることが、認められなかったのだそうだ。

 新規の入会を、制限しているらしい。


 そして、ギルドに入らずに魔法薬を販売すると、身に危険が及ぶという情報をつかみ、事実上、薬師として活動できない状況に陥っていると嘆いていたそうだ。


 ギルドに入らずに魔法薬を販売した者が、濡れ衣を着せられて捕まったとか、暴漢に襲われて命を落としたとか、そんな話があるらしい。


 『薬師ギルド』の仕業ではないかと、噂されているそうだ。


 新規の参入障壁が高いというか……既得権益ががっちり守られているわけね。


 世知辛いというか…… 一種の迷宮都市の闇だな。


 大きな薬師の工房を回ったが、三人一緒に雇ってくれるところはなかったのだそうだ。


 そんな状況の中、冒険者一本で行く決意をしていたが、三人のパーティーでは心もとなく、冒険者登録だけして、まだ迷宮には入っていない状態でいたようだ。


 そんな時に、『ツリーハウスクラン』のことを知り、応募してきたとのことだ。


 冒険者としては役立たないが、クランで使う魔法薬を作ることができるので、冒険者としてダメなら、その仕事をさせてもらえないかと提案してきたそうだ。


 もちろん彼女たちの本来の希望は、薬師としても活動しながら、冒険者としても一人前になることだろうが。


 魔法薬は『フェアリー商会』で作っているし、この迷宮都市で普通に買ってもいいのだが、彼女たちにクランで使う魔法薬を作ってもらってもいいかもしれない。


 せっかく技術を持っているんだから、腕を鈍らせないためにも、魔法薬作りをやったほうがいいよね。


 本当なら『フェアリー商会』にスカウトしたいところだけど、冒険者になりたいわけだから、それはやめておく。


 『薬師ギルド』に加盟していない彼女たちが、どこかに魔法薬を販売したら文句を言ってくるだろうけど、内部で使う分には良いのではないだろうか。


 それでも文句を言ってくるようなら……『闇の掃除人』出動案件だな。


 まぁ面倒くさそうだから、あまり絡みたくはないけどね。


 薬師の三人は、人間性も問題がないというので、採用することにした。


 そもそも、これから迷宮に挑もうという本当の初心者パーティーだから、本来クランが支援すべき子たちなんだよね。


 魔法薬が作れるっていうのは、おまけみたいなものだ。



 その他何組かのパーティーの報告を受けた。


 そういうのも踏まえて、採用する冒険者を決めた。


 はっきり言って、俺が思っていたより女性の割合が高い。


 面接に来た人の半数以上が、女性だったらしいので、しょうがないんだけどね。


 クランに入ってもらう冒険者も、七割近くが女性になっている。


 採用した冒険者を簡単にまとめると……


 ○駆け出し冒険者と言えるFランク『初級(ビギナー)ランク』の採用は、五組二十名となった。


 ○新人冒険者と言っていいEランク『下級(イージー)ランク』の冒険者の採用は……八組四十三名となった。


 ○中堅冒険者であるDランク『中級(ミドル)ランク』の冒険者の採用は……二組十人となった。


 ○一流冒険者と言っていいCランク『上級(ハイ)ランク』の冒険者は、一組も応募してこなかった。


 ○超一流の冒険者……トップランカーとも言えるBランク『極上級(プライム)ランク』の冒険者は、一組の応募で、それが俺が直接面接した『闘雷武(とらいぶ)』の皆さんだ。一組五名となる。



 まとめると、採用した冒険者の合計は……十六組七十八名となる。


 面接した総数は、五十六組二百二十二人なので、一応絞り込んだかたちにはなっている。

 この総数の中には、冒険者ではない取引の申し出に来た商人とかも入っているけどね。


 人間性に問題がないという基準からすれば、もっと採用してあげられるパーティーがあった。

 だが、俺のクランに入る必要がない実力のあるDランクの冒険者たちは、見送らせてもらった。


 Dランクで採用した二組は、炊事係を引き受けてくれるというガングロおじさん五人組と、『ヘスティア王国』の第三王女を中心とした全身鎧五人組だけなのだ。

 いわば特例である。


 ただせっかく来てくれたDランクの冒険者たちも、できればこれをきっかけに良好な関係を築きたい。


 賛助会員とは違ったサブメンバー的な仕組みを作った方がいいかもしれない。


 ただ、中堅冒険者なので、お金には困っていないはずだ……会費をもらって賛助会員になってもらうのも、アリかもしれない!


 彼らが来た目的は、支援をしてほしいとかではなくて、面白そうだとか、大物を倒す為の仲間が欲しいとか、そんな感じだと思う。


 もし賛助会員でもいいと言うなら、賛助会員になってもらって、クランに自由に出入りしてもらっても良いだろう。


 うん、そうしよう!

 そんな案内をしてみよう!



 それにしても、すごい人数の冒険者を抱えることになってしまった。


 クランが、意図せず巨大組織になっている気がする。


 なんか……『フェアリー商会』のときの轍を踏んでいる気がするのは気のせいだろうか?


 このままどんどん規模の大きい組織になっていたらどうしよう……考えたら負けだな。


 まぁ、なるべく支援してあげたいし、アウェイな迷宮都市では、味方が増えた方が良いだろう。





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― 新着の感想 ―
[一言] > それでも文句を言ってくるようなら……『闇の掃除人』出動案件だな。  ここに来てから『闇の掃除人』はずいぶん腰が軽くなったような……治安が、治安が悪いのが悪いんや。 > クランに入っても…
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