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1096.チャラ男、再び。

 (じゃあ、君はその王女様に会いたいんだね? もし会えたら、王女様に君を渡すよ)


 俺は、新たに『絆』メンバーとなった牛くんに、念話で語りかけた。


 彼の話によれば、この迷宮都市にいるという第三王女への補給物資を運んで来たとのことだった。

 そして、王女とは仲良しだったとのことだ。


 (会いたい気持ちはありますが、あなた様に助けられました。あのままでは、私は意図せず人の命を奪っていたかもしれません。この恩を返すためにも、あなた様に仕えさせてください)


 なんかこの子……めっちゃ律儀だ。


 (でも君を見たら、王女様はそばに置きたがるんじゃないかな?)


 (そうかもしれませんが、王女様は賢いお方です。ことの経緯を知れば、無理に連れ戻すことはしないと思います)


 (そうか、わかった。実際に会えた時に考えればいいね。ところで、王女様はどこにいるかわかる?)


 (はい、冒険者として、迷宮に挑んでいます。冒険者の集まるところに行けば、いずれ会えると思います)


 (え、冒険者なの?)


 (はい。もう一年くらい冒険者をしているはずです)


 驚いた。

 第三王女とは言え、一国の王女様が、冒険者をしているのか……。


 (よく国というか、国王が許したね?)


 (王女様は、勇ましい方で、普段から鎧を身に付けていました。強くなるために、迷宮都市に行くと前から決めていたようです。最初は反対していた国王様も、根負けしたのです)


 (そうだったんだ)


 (はい、冒険者になって一年が経ったお祝いという名目で、物資を届けることになっていたのです)


 (そうなんだ。でも補給部隊が来なかったら、王女様が心配するんじゃない?)


 (突然現れて驚かせる計画だったので、王女様は補給部隊が来ることを知らないと思います)


 なるほど、サプライズってわけね。


 なんとなくだが『ヘスティア王国』の国王も、親ばかな予感が……。


 (知らないのか。だったら、心配して探しに行くような事はないと思うから、すぐに見つけられると思うよ。冒険者の知り合いが多いから、聞いてみるよ)


 (ありがとうございます)


 (そういえば名前は?)


 さっきテイム状況の確認をするときに『波動鑑定』したが、名前をちゃんと見ていなかった。


 (モバスチャンと申します。王女様がつけてくれた名前です)


 微妙に執事っぽい名前だが……


 (モバスチャン、これからよろしくね)


 俺は改めて挨拶をして、歩を進めた。




 ◇




 『ツリーハウス屋敷』に戻って来たが、冒険者の面接が終わっていない。


 数は、だいぶ減っているが。

 でも、この分なら夕方には終わりそうだ。


 門をくぐり庭に進むと、俺が連れている白牛を見て、子供たちが声を漏らしながら一斉に集まって来た。


 大きさと綺麗さに驚いたようだ。

 不思議と怖がっている感じはない。


 子供たちに、モバスチャンという名前のこの牛が、クランの仲間になったことを伝えると、歓声が上がった。


 リリイとチャッピーは、俺が抱きかかえている女の子が気になるようで、心配そうに見上げている。


「リリイ、チャッピー、この子が道で危ないところを助けたんだけど、お父さんもお母さんもいないし、帰るところもないみたいなんだ。お世話をお願いしてもいいかい?」


「わかったのだ! リリイにお任せなのだ!」

「チャッピーもお世話するなの〜。お姉さんになるなの〜」


 二人は、声を弾ませた。

 張り切っているオーラ全開だ。


「イチョウちゃん、この二人がお世話してくれるから、安心してね」


「……イチョウ、お兄さんがいい」


 イチョウちゃんが、少し不安げな表情で呟いた。


「大丈夫だよ。ちゃんと一緒にいれるから。でも、お仕事もあるから、このお姉ちゃんたちと遊んでて」


「……わかった」


 イチョウちゃんは、意外にあっさり聞き分けてくれた。


 リリイとチャッピーが両側から手を繋ぎ、他の子供たちのところに連れて行った。



「お、いた! お兄さん、いやグリムさーん、よかった、会えて! もう人が悪いなぁ……『キング殺し』なんだったら、そう言って欲しかったよ」


 俺に声をかけたのは、なんと、迷宮の『スターティングサークル』で地図売りをしていたチャラ男氏だ!


 昨日声をかけてきた時は、「兄ちゃん兄ちゃん」と言っていたのに、今はお兄さんとかグリムさんになっている……調子のいい奴だ。


「どうして、ここに?」


「『キング殺し』がクランを作って、メンバー募集してるって言うから見に来たんだよ」


「……クランに応募して来たわけじゃないよね?」


「なに? オイラも応募できるの? じゃぁ応募しちゃおっかなぁ」


 相変わらずチャライ……。


「ただ様子を見に来ただけ?」


「あのさぁ……俺の地図どうだった? 役立ったでしょ? 『貝殻提灯アンコウ』四体も倒したって?」


「ああ、あの地図に書いてあったフロアで、見つけることができたよ」


「でしょ、でしょ? イケてるっしょ、俺の地図!」


「まだ序盤しか行ってないけど、ある程度の正確性はあるようだね」


「なんだよー、そんな意地悪な言い方しないでくれよなぁ。多少のばらつきはあるもんさ。……ところで、他のエリアの地図もあるけど、どう?」


 そうか……やはりこいつは、地図を売りつけに来たわけね。

 そうじゃないかと思ったんだよね。


「昨日買った『南エリア』の地図と同じ値段ならまとめて買うけど」


「えぇぇ、あれはおまけの価格じゃないかぁ。信用できるってわかったんだから、正規の値段で買ってくれよぉ〜」


「………………」


 俺は、あえてノーリアクションでスルーした。


「キミ、キビシウィネェェェ! …………わかったよ。あの値段でいいよ……」


 チャラ男氏は、チャラけた奇声を発した後、無反応な俺を見て観念したようだ。

 普通のトーンで言った。


 てか、チャラけてない話し方もできるんじゃないか!


 もしかして、ビジネスチャラ男なのか?

 まぁそんなことはどうでもいいが。


 チャラ男氏は、魔法カバンから『東エリア』『西エリア』『北エリア』の地図のセットを取り出した。


 彼の地図は製本されていて、実は結構使いやすいと思っているんだよね。


 迷宮上層の各エリアごとに、三冊セットになっている。


 おそらく昨日話したときの口ぶりと値段から察するに、三冊セットで買う人はいないと思うけどね。


 エリアの前半、中盤、後半の三冊になっている。


 前半三分の一の地図には、フロア毎に多く出る魔物が記入してある。

 この前半の地図には、レアな魔物が出た情報、珍しい薬草の情報も書き込んである。


 中盤と後半の地図には、魔物や薬草の情報は載っていない。


 前半の地図が一万ゴル、中盤の地図が五万ゴル、後半の地図が十万ゴルで、合計十六万ゴルになる。


 これを昨日は、値切って五万ゴルで購入した。


 昨日は『南エリア』の地図を買ったのだが、残りのエリアも欲しいと思っていたところなので、実はちょうど良かったのだ。


 正規の値段で買ってあげてもいいんだけど、序盤行っただけなので、本当に信用できるかはまだわからないからね。


 俺は、三エリア分の代金十五万ゴルを払って、地図を受け取った。






読んでいただき、誠にありがとうございます。


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次話の投稿は、明日の予定です。


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