1087.魔法カバンのコーナーに、豚の貯金箱!?
魔法道具店は本当に楽しい。
次は、魔法カバンのコーナーを見よう!
魔法カバンを駆け出し冒険者に持たせるのは、さすがにやり過ぎだと思うので、ここでは自重するつもりだ。
ただ珍しいものがあったら欲しいなぁ。
魔法カバンは、ショルダーバック型がほとんどで、変わったデザインのものは貴重なのだ。
だが俺のそんな期待も虚しく……変わったデザインのものは売っていない。
だが一つだけ……突飛なデザインのものがある。
というか……もはや、カバンではない。
どこからどう見ても……豚の形の貯金箱だが……。
陶器でできたブタの貯金箱……それの大きいやつが、置物のように四つ置いてある。
大きさが、本当に子豚ぐらいあるのでかなり大きい。
ただの飾りかと思ったが、値札が付いているのだ。
これも魔法カバンってことだろうか……?
色がピンク、茶色、銀色、金色となっていて、かなり存在感がある。
なんかめっちゃ気になる!
俺は、再びアイムちゃんを呼んで尋ねた。
「これはですね……すごく変わった商品になりまして……この背中の細いところから、硬貨を入れるんです。
魔法カバンと同じ構造になっているので、かなりの量が入ります。
そしてこのしっぽを押すと、お尻から硬貨を出すんです。
金貨用、銀貨用、銅貨用、銭貨用、四つ揃えれば、各硬貨を使いたいときに出せます。
……でもはっきり言って、用途が限定されすぎてて、誰も興味を示しませんけどね……」
アイムちゃんは、説明しながら困り顔になった。
変わった商品で、全く売れないということなのだろう。
高いお金を出して買うなら、普通の魔法カバンのほうがいいもんね。
でも……俺的には、めっちゃ面白い!
ちなみに値段を見ると……
一体二百万ゴル、四点セットで五百万ゴルと書いてある。
確か、魔法カバンの相場は、『下級』階級でも五百万から一千万だったはずだ。
そう考えると、かなり安い感じがするが……
「これって、『下級』階級ですか?」
「いえ、不思議なことに『極上級』なんですよ」
え、『極上級』?
疑うわけではないが、密かに『波動鑑定』させてもらう。
お、本当に『極上級』だ。
……なにそれ!?
確か『上級』階級の魔法カバンだと、数億ゴルという単位で取引されると聞いたことがある。
『極上級』の魔法カバンなんて、普通ならとてつもない価値だろう。
まぁそもそも、出回ることがないと言って良いだろう。
それを考えたら、この豚の置物は超絶安い。
誰も買う人がいないから、こんな値段なのだろう。
それにしても『極上級』って……どういうこと?
すごい収納容量ってこと?
それとも形状が変わっているから?
それとも特殊な何かがあるのか?
……気になる。
そして……なんだろう?
何かの違和感を感じる。
『波動鑑定』をしたときに、何か違和感を感じたんだよね。
ただ……偽装ステータスを貼り付けているという感じではない。
仮にそうだったとしたら、いつものようにざらつく感じで、本来のステータスが垣間見えるはずだ。
まぁこれ以上はわからないから、やめておこう。
「『極上級』なのに、この値段なのは、需要がないからですか?」
「そうですね。もう何十年も置いてるようですから」
「これは、どこで手に入れたんですか?」
「私も興味があって、おじいちゃんに聞いたことがあるんですよ。おじいちゃんが若い頃の話らしいんですが、よく覚えてないみたいなんです。
仕入れた商品の中に、なぜか紛れていたって言ってました。
おじいちゃんは『鑑定』スキルを持っているので、捨てなかったみたいなんですけどね」
はっきりわからないのか……釈然としないな。
俺が腕を組んで思案顔をしていたからか、ニアが覗き込んできた。
「何かあるわけ? これに……」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……何か引っかかるんだよね。『波動鑑定』した時に、違和感があったんだよね」
会話の後半は、アイムちゃんに聞こえないように、ニアに耳打ちした。
「何かあるのかしらね……。ん、ちょ、ちょっと待って……もしかしたら!?」
おや、ニアが何か閃いたようだ。
「アイムちゃん、もう少しゆっくり見てますので、作業に戻ってもらって大丈夫ですよ」
俺は、アイムちゃんをここから離れてもらって、ニアに話を促した。
「『波動鑑定』のとき、違和感を感じたのよね?」
「なんとなくだけどね」
「これって、もしかしたら、もしかするわよ!」
「なになに、どういうこと?」
「付喪神かも!」
「え、付喪神!?」
「うん、付喪神の昔話の中に、あらすじだけの不完全な昔話があるのよ。『四匹の子豚』っていう話なんだけど」
「あらすじだけの昔話……?」
「そう、正式なストーリーは失伝しちゃって、あらすじだけが伝わっているってことなの」
「そのあらすじって?」
「はっきりとは覚えてないんだけど……悪い奴からお金を奪って、貧しい人たちにお金を配るっていう義賊みたいな付喪神の話なの。
クワの付喪神のクワちゃんより、古い伝承じゃないかと思うのよね。
ツクゴロウ博士が書いた本に、伝承が残ってないか探す活動をしているって書いてた」
「それすごいね! もしも付喪神だったら、大発見ってことだよね?」
「そうよ! ツクゴロウ博士なんか間違いなく気絶しちゃうわよ!」
「あ、でも、もし付喪神だったら、『波動鑑定』したときに付喪神ってわかるはずだよね?」
さっき『波動鑑定』した時は、『名称』が『魔法の貯金箱 ワンコインパラダイス』っていう名前になっていた。
付喪神という表示ではなかったのだ。
そもそもが生物のステータス画面ではなくて、物品のステータス画面だったんだよね。
「でもさぁ付喪神の可能性もあるのよ。
ツクゴロウ博士の本にも書いてあったんだけどさぁ、付喪神の場合、付喪神化しているときは、付喪神と表示されるわけなんだけど、前にクワちゃんが言ってたように、休眠期間があって、ただの道具に戻っている状態があるわけよ。
その時に『鑑定』しても、普通の道具の状態のステータスしか表示されないのよ。
だから、付喪神が見つけられないわけ」
「ああ、なるほど! 確かにそんな話を前に聞いた気がする……」
ってことは……やっぱり付喪神の可能性が高いってこと?
「この状態が……休眠状態だとしたら、付喪神かもしれないよね?」
「そうよ! これ買うしかないわよ! 絶対買いましょう!」
「そうだね、絶対買わないとだ!」
俺は、再びアイムちゃんを呼んだ。
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