表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

近ごろの太陽王陛下のご署名が大胆におなりあそばせていること

 廻リ国にはきょうもまっ白な雪がふっています。お城のなかでいちばんりっぱな、太陽王の居室もいまにも凍りつきそうです。

 太陽王は毛皮の外套をなんまいも着てまんまるくなり、ペンを片手にぐるぐる駆けまわっていました。紙のたばをもった御付きの男もぴったりくっついて走ります。太陽王はすこしも立ちどまらずにその紙につぎつぎと署名をしているのでした。


「太陽王陛下、きょうも寒うございますね」

「まったくだ。こうして動きつづけていないと、体が凍ってしまいそうだ」

 太陽王と御付きの男は、すこし息をきらしながら会話しました。

「春ノ国からのたよりは届きましたか、陛下」

「いいや。春の女王はどこでなにをしているのやら。おかげで朕もはたらきづめのはしりづめだ」

「陛下、暖炉の薪もまだわずかには残っていましょう。いかがでしょうか、しばらくお休みになっては。そのあいだの執務はどうぞ私めにおまかせを」

「いやはや」と太陽王は手をふりました。

「朕のむすめたちが苦労をしているというのに、朕だけ楽はできまいよ」

 そこで太陽王はとつぜんむきをかえて窓へちかづきました。

「ご署名がずれます、陛下」と御付きの男はあわてて書類を下にずらしました。

「夏の女王は塔へおもむき、冬の女王に寒さをやわらげてくれるよう頼んでおる。秋の女王は春ノ国へいき、春の女王のゆくえをさがしておる。ふたたび春がおとずれるまで、廻リ国と女王の四ツ国をささえるのが朕の役目だ」

 言いおえた太陽王は立ちどまり、はずむまりのように肩を上下にうごかしていました。けれどもまもなく「おお、寒い寒い」と走りはじめます。


「なるほど、それでは手伝いが必要でしたらいつでも命じてくださいませ」

 御付きの男は太陽王について走りながらぺこりとおじぎをしました。太陽王はふうふううなずきました。

「触れも出したことだし、近々いそがしくなるやもしれぬ。そのときにはたのむぞ」

 太陽王は走りながら、机のうえのインクつぼにペン先をひたしました。

 かわいそうに、太陽王も御付きの男も、春の女王が見つかるまでずっとこのままなのでしょうか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ