近ごろの太陽王陛下のご署名が大胆におなりあそばせていること
廻リ国にはきょうもまっ白な雪がふっています。お城のなかでいちばんりっぱな、太陽王の居室もいまにも凍りつきそうです。
太陽王は毛皮の外套をなんまいも着てまんまるくなり、ペンを片手にぐるぐる駆けまわっていました。紙のたばをもった御付きの男もぴったりくっついて走ります。太陽王はすこしも立ちどまらずにその紙につぎつぎと署名をしているのでした。
「太陽王陛下、きょうも寒うございますね」
「まったくだ。こうして動きつづけていないと、体が凍ってしまいそうだ」
太陽王と御付きの男は、すこし息をきらしながら会話しました。
「春ノ国からのたよりは届きましたか、陛下」
「いいや。春の女王はどこでなにをしているのやら。おかげで朕もはたらきづめのはしりづめだ」
「陛下、暖炉の薪もまだわずかには残っていましょう。いかがでしょうか、しばらくお休みになっては。そのあいだの執務はどうぞ私めにおまかせを」
「いやはや」と太陽王は手をふりました。
「朕のむすめたちが苦労をしているというのに、朕だけ楽はできまいよ」
そこで太陽王はとつぜんむきをかえて窓へちかづきました。
「ご署名がずれます、陛下」と御付きの男はあわてて書類を下にずらしました。
「夏の女王は塔へおもむき、冬の女王に寒さをやわらげてくれるよう頼んでおる。秋の女王は春ノ国へいき、春の女王のゆくえをさがしておる。ふたたび春がおとずれるまで、廻リ国と女王の四ツ国をささえるのが朕の役目だ」
言いおえた太陽王は立ちどまり、はずむまりのように肩を上下にうごかしていました。けれどもまもなく「おお、寒い寒い」と走りはじめます。
「なるほど、それでは手伝いが必要でしたらいつでも命じてくださいませ」
御付きの男は太陽王について走りながらぺこりとおじぎをしました。太陽王はふうふううなずきました。
「触れも出したことだし、近々いそがしくなるやもしれぬ。そのときにはたのむぞ」
太陽王は走りながら、机のうえのインクつぼにペン先をひたしました。
かわいそうに、太陽王も御付きの男も、春の女王が見つかるまでずっとこのままなのでしょうか!