そう、それは妖精さんの仕業だったのだ!
全く信じてもらえなかった。
この私が、令嬢ミシェル・レインが!
「あのお化粧スキルを手に入れるためだけに、私がどれだけ血のにじむ努力をしたと思っているのよ! く……所詮、イケメンには私の努力なんてわからないのね!」
と呟いてみたものの、あれだけあーだーこーだ言われると、そろそろこの化粧を止めるべきではという気がしないでもない。
だがそこで私は、ここであのイケメン達の言いなりになるのは癪だと思った。
だから、
「次は髪に行きましょうか。人気の人物を探さねば」
そう私は呟きながらもあのグレンという人物が気になる。
彼の発言は、この、色々思い出す前のミシェルに当てはまるのだ。
それも的確に。
しかもゲームの内容そのままの推測までしてしまう始末。
「知り合い関係にいたかしら、記憶にないけれど……。それとも昔の事を思い出したから、今の私の記憶が欠損しているのかしら」
そんな状況になっていたら嫌だなと思いつつ、私は別荘に辿り着く。
そして部屋に戻ってくるとそこで、小さい少女が勝手にお菓子を食べていた。
それはもう、とっても美味しそうに私の今日のおやつを!
ちなみに今日はオレンジピールのようなものの入ったケーキだったのだが、
「ふわぁ、美味しいですぅ~……は!」
「ミフィ! 勝手に食べたらだめじゃないって何度言ったら分かるの!」
「ごめんなさい! ……あれ、もしかして思い出しましたか?」
「思い出すも何も私といつも一緒に居た妖精で、妖精の女王で、妖精と精霊は同じもので……あれ?」
そこで私はこの目の前にいる背中に透明な羽の生えた幼女が誰だったのかを思い出した。
これまで全く思い出さなかったのに、見た瞬間ふつりと浮かび上がってきた感じである。
もしかして記憶が本当に一部抜けている?
そんな不安に駆られながらも私は疑問を呈す。
「見たら急に思い出した。なんでだろう」
「ようやく前世の知識が馴染んできたのかもしれません。ずっと一緒に居たのに、蘇らせたら全然気づかなくて、どうしようかと思ったのですが良かった~」
「蘇らせた?」
「はい、悪に手を染めようとしていたので、こうなったら前世の“聖女”様の記憶を呼び出すしかないと思いまして」
「……“聖女”」
何の話かよく分からずに私は首をかしげるが、そこで妖精ミフィは、
「そうですよ。明らかなダメ男に引っかかっていたので私が止めたのですが無視されて、暗殺計画を立て始めたので、“聖女”様の記憶なら私が大好きなミシェルが壊れなくて済むかなと思って思い出させたのですが……“聖女”の記憶はゼロですか?」
「ないわね」
「……私、失敗した?」
妖精さんが額に汗を浮かべながらそんなことを言うが、私としては、
「“聖女”の記憶ね。私は地球という場所の普通の女性だったようだ、くらいまでなら覚えているけれど」
「あ、そこは正解です。“聖女”様は異世界からいらした方ですから」
「……そうですか」
「そうなんです」
「……それで、私は以前のミシェルと結構変わっている?」
実の所あまりにも記憶が馴染みすぎていて、自分が別人になった印象があまりない。
乗っ取りは嫌だなと私が思っているとそこで、
「そうですね……ちょっと世間ずれして活動的になっているくらいでしょうか、内面は」
私が大好きなミシェルですよと、妖精ミルフィは私に告げたのだった。
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