やはり信じてもらえなかった
私のあの出来事がゴシップネタにされているかもしれない案件が発生!
確かにあの浮気男のアレなシーンに突入したが……一体どんな風に書かれてしまうのか!
前世の記憶をたどるとお昼あたりにテレビで流れていそうなお話だが……残念ながらテレビのようなものはまだ普及していない。
それを素直によかったと思うべきだろう。
だがすでにゴシップ新聞の一面記事になっている可能性も無きにしも非ず。
ひ、悲劇のヒロイン(笑)の内容になっているといい……な……。
私はある可能性に気付き呆然としているとそこで、
「まあ、面白い話が聞けて良かった。だがミシェル・レインを名乗るのは止めておいた方がいいぞ」
「! どうしていまだに信じてくれないの!?」
「いや、性格が違いすぎるしその化粧も、よくよく考えると貴族の化粧師が騙されたというよりはお前が騙されただけなような気もするし」
「私がいかにも騙されやすいみたいに聞こえるんだけれど」
「うん」
「頷きやがった……だからイケメンは嫌いなのよ! あの浮気男みたいに!」
「……いや、どうしてそれをその浮気男と同列にした」
「イケメンだからよ!」
グレンを指さし私は宣言すると、グレンは目を瞬かせて、次に苦笑して、
「凄い論理だな……まあいい。近くにレイン家の別荘があるというからそういった嘘を言ってしまったのだと思うが、ほどほどにしろよ」
「く、この化粧をしている限り私は、グレンに令嬢ミシェルだと納得してもらえなさそうにないわね」
かくなる上は実力行使をするしかない、そう私が考えているとグレンがため息をつき、
「大体、本当にミシェル・レインだったら浮気男が親友との浮気の現場に乱入して婚約破棄なんてならないと思う。浮気男に一途になって、『あの方は私だけの物なの』その親友を殺しに来る程度にヤンデレになっているんじゃないのか?」
「それって、男に都合が良すぎるような」
「そう答える時点でお前は本物か怪しい!」
指をさし言い切ったグレンに私は何となくムカッとする。
随分とミシェルの性格に詳しい気がする。
作中ではそんなに語られていなかったが、ミシェル自身がそんな有名だったのか、それともミシェルの知り合いだったのか。
だがミシェルになった私は思い出そうとしてみるがこのイケメンに心当たりがない。
もっとも古い記憶ほど不鮮明になっていくのは、仕方がない部分もあるが。
と、そこで、
「グレンさ……グレン、探しましたよ~」
「フィズか」
走ってくる新たな男にグレンはそう名前を呼ぶ。
新たなイケメン登場!
さすが乙女ゲームと同じ世界!
エンドレスイケメン。
目の保養、ひゃっはー、と私は思いながら観察する。
グレンは黒髪に赤い瞳の俺様風の美形、フィズは金髪碧眼の柔和な美形である。
美形が二人いると、輝いて見えると私が思っているとそこでフィズが私を見てぎょっとした顔になり、
「な、何ですかこの化粧お化け!」
「な・ん・だ・と」
やはりイケメンにはろくなのがいないと私が思っているとグレンが面白そうにフィズに、
「令嬢ミシェル・レインだそうだ」
「ええ!」
「ちなみに、婚約した男が浮気をして、その相手が親友で、最近婚約破棄したらしい」
「あ……」
何故か可哀想な子を見るような目で私は見られた。
そしてそのフィズというイケメンが、
「いえ、うん、つらい事があったと思いますが、成りすましは良くないですよ? 私達の心の中で、その話はとどめておきますから」
と、やけに優しい口調で言われ、私はまたも信じられていないと気付く。なので、
「お、覚えてないさいよぉおおおお」
そうさけんで、涙目でその場から逃走したのだった。
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