イケメンの言葉が刺さる
実はこの化粧方法、貴族の間で流行っているのは本当だ。
実際に人気のその化粧師を雇い、彼女に教えてもらったものなのだから。
もちろん、あの寝取り女、ユウもしていたものである。
かなり華やかで、両親は止めに入っているし、彼が言うにはケバいらしいのだが、美しい姿になっていたはずなのだ。
だが彼が言うには、“娼婦”がするものであるらしい。
あまりな言葉に私が唖然としてしまい凍り付いているとグレンが、
「……まあ、“娼婦”じゃないというか、ちょっといい所の村娘には見えるがその化粧は止めた方がいい。でもこの化粧が流行り……大方どこかの貴族が、化粧師に騙されたんじゃないのか?」
「……でも実際にこういった化粧をしているの、見たし」
「だとしても、顔の原型をなくすようなのは止めた方がいい。その盛り具合から考えると、そこまで化粧をしない方が“可愛い”んじゃなのか?」
そのイケメンは言いすぎたと思ったらしく、私にもっと化粧を薄くしたらと提案してきた。
しかも、可愛いとまで言ってきた。
ふむ、今回遭遇したイケメンは、イケメンだけに中身がアレなことになっているのだろうと思っていたが、そこまで無遠慮……無遠慮ではあるが、一応は相手の心情を察せられるタイプであるらしい。
まさかそういった人達の化粧だったとは。
だが、この化粧が華やかなのは確かなのだ。
このイケメンの審美眼はおかしい。
「それって貴方の好みじゃないの?」
「人それぞれ好みがあるといっても、いいか? 顔の原型が無くなっているんだぞ? それは本当に自分の顔なのか胸に手を当てて考えてみろ」
イケメンであるグレンの言葉が私の胸にぐさぐさと刺さる。
確かに本来の“自分”を隠しているように彼には見えるかもしれない。
けれどこの化粧に関しては私は譲れない。
「だって地味だもの、だからこれくらい華やかにしないと」
「……誰が言ったんだ?」
「私の恋人を寝取った女が、恋人とそういって私の事悪く言っていたの」
そう答えて、私の中で何かがしっくりとくる。
要するにこの化粧は私の意地なのだ。
馬鹿にされたことがどうしても許されなかったのだ。
そんな私に、珍しくグレンが優しそうに笑って、
「ミシェルは、誰に評価されたいんだ?」
「……周りにいる人間に私を褒めたたえて欲しいわ! この美しさを!」
「相手を否定する人間は、何だかんだ言い訳をして、絶対に相手を認めないぞ。自己評価が高いと特に」
そう言われると、親友だったユウはそちらのタイプだとは思いはした。
確かに私の事を認めないだろうなと思った。でも、
「……悔しい思いをさせてやりたかったの。少しでも屈辱を味合わせてやりたかったのよ。意趣返し、ただそれだけ」
「それでその相手はどうしたんだ? 何だかお前を見ていると、蹴りの一つや二つは加えてきそうだが……」
「婚約者と親友とのベッドシーンに乱入して、婚約破棄してきたわ」
グレンは何とも言えない顔になって、次に笑い出した。
「婚約破棄……婚約破棄したのか、くくく」
「何よ、何で笑うのよ」
「いや、いつの話だ?」
「三日前の話よ」
「なるほど、その頃には俺はここにいて、ここは都からも遠いか……知らないはずだよな」
「何で騎士がそんな宮廷事情を知っているのよ」
「ゴシップネタに良くされるからな、貴族関係の特に恋愛事は」
そのグレンの言葉に一面見出しであることない事書かれる私の話が、私の頭に浮かんだのだった。
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