“変”だし“変”繋がりで“変”なことが
さて、それから私は部屋に帰還した。
とりあえず未だにばれてはいないようだ。
良かった良かった、という事で途中で購入した柑橘類で、“レモンカード”のようなものを作る。
パンケーキにつけても美味しいし、料理に使ってもいいレモンの香りが素敵な濃厚ソース。
卵や砂糖などを使い、丁寧に混ぜながら乳化させる。
使用している材料だけ見れば、酢を抜いた甘いマヨネーズのような物だ。
でも味わいが全然違うが(笑)
これでタルトやパイを作っても美味しいなと思いながら作って、結局夕食後のデザートにタルトを作ることに。
そうしながらも、延々と様子を見ているが……ユウの姿は見えない。
先ほどの魔術師との接触で警戒をさせてしまったのか。
「それはそれで面倒よね」
「どうしたのですかミシェル」
「ん? あのユウが警戒していそうだなってお話」
「あー、するでしょうね。“聖女”だって言っていましたしね。最大級の天敵が現れた者ですからね」
「仕方がない。ある程度リアナに仲間を増やしてもらってからすぐに王宮に乗り込むか」
気づかれたならこそこそする必要はないか、と思いつつ。
「あとはリアナのフラグ次第なのよね。協力関係が築ければ何の問題もない。後は突入するのみ……今日でどこまで進めたかしら」
あの魔術師とはうまく接触できたのか、そういった問題があるけれど果たしてどうだろうと私が思っていると、リアナ達が帰って来たのだった。
本日いらしたのは、リアナ、グレン、フィズとルーファス王子様……だけでなく。
「騎士のアズフォードに、魔術師のフィーアに、料理人のアインまで。うーん予定と違うわね」
「そうなのですか? 魔術師さんを待っていたら、お兄さんがご飯を持ってきて『うちの弟がまた何かしましたかって』って聞いてきたの。それで、ミドリちゃんが追っていた人だと思い出したからこのアインさんも連れてきました」
といった話をリアナがする中、魔術師のフィーアが、
「アイン兄さん、また何かしたって……」
「フィーアは努力家だからその分失敗も多いし誤解もされやすいからな。なにも無くてよかった」
兄である料理人のアインがそう言うと、魔術師フィーアは黙ってしまう。
なんでも兄のアインにとって、魔術師のフィーアは頭のいい優秀な、自慢の弟であるらしい。
それに対してフィーアは、
「……誰とでも仲良くなれるし兄さんが羨ましい。僕にも優しい兄さんは優しいし」
「ん、そうだったのか?」
「……」
といった会話をしているのを目撃。
美形兄弟の仲のいい会話。
何だかほのぼのしてしまった。
さて、それから食事をご馳走しつつ、今回はこの料理人のアインから話を聞くと、
「確かに城の中の様子がおかしいですね。ミシェル様の言うとおりあのユウという人物に心酔しているようでしたね、うちの料理長たちも」
「そうなの」
「ええ、特に貴方様が婚約破棄を突き付けたといった話があった後からかな」
それを聞いていたグレンがポツリと付け加える。
「やっぱりミシェルがその魅力で、ユウのその力を消し去っていたんじゃないのか?」
「“聖女”ってそんな力があったかしら」
「さあな。ただ伝説の異世界から来た“聖女”は規格外の狂った能力持ちだったらしいから、何が起きても不思議ではないな」
「それは褒めているの? けなしているの?」
「多分けなしているんだろうな。“変”だと。ミシェルも“変”だし“変”繋がりで“変”なことが起きても俺は何も驚かない」
「……」
私はそこで沈黙してグレンとにらみ合った。
と、そこでフィズが、
「そ、そうだ。それで、その……“闇の影”は結局、ユウという人物で確定なのですか?」
「それは間違いなさそうね。街中でちょっと強力な魔法を打ち込んでも平気そうだったし」
「そうですか……」
「とりあえず、あと一人いるけれど……皆さんに城の状況等を、教えていただいてもいいかしら。情報を共有した方がいいかも。それから……作戦を立てましょう。私の存在も接触したことでユウには気づかれたしね」
そう私は彼らに告げたのだった。




