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乙女ゲームと違う

「ミシェル、どうしたのですか?」

「いたのよ! ユウと、そしてもう一人、宮廷魔術師のフィーアが!」


 そう叫んで出ていくと、ミフィがカギをかけて追いかけてくる。

 私はその間に頭をスカーフで覆い、黒いサングラスとマスクをつける。

 怪しい出で立ちだが、服装も今日はリアナに借りたもの。


 気づかれる要素は何一つない。

 だから大丈夫と思いながら私は走る。

 私が見た光景、以前倒したその場所に、彼女が現れたのだ。

 

 わざわざくる必要はないし何かをしようとしているのは明白だった。

 本来ならば私はその様子を見ているだけで十分だったのだが、ある人物が接触したのを目撃した。

 というか何で彼が。


「魔術研究で部屋に閉じこもっているはずの人物がなんでこんな活動的なのよ! というか、ユウが外に出てきたの誰も連絡してこないし! ……昨日は城に居なかったとか? 運が悪いわ。しかもあの魔術師、一人でユウに挑もうとしているわよ」

「一人で……ちょっと魔力の強い魔法使いが一人で、“闇の影”と接触ですか。普通に死にますね」

「気づいていないだけかもしれないけれどね! あの、テケリ・リとでも鳴きそうなあいつら相手に一人なんて無謀すぎる」


 そう叫んで私はこれ以降、声を出さないと告げる。

 昼間のこの時間、そしてあの場所は住宅街の一角なので、人が仕事に行ってしまい人目がない。

 つまり、“処分”されてしまっても犯人は分からないし、いなくなったという事実だけが残る、となりかねない。

 

 早くしないと、そもそもあの監視装置はリアナの家周辺につけられている。

 だからすぐ近くにいるはずなのだが……いた。


「“選択画面”。そしてミフィ、もしかしたら私と気づかれるかもしれないから、貴方は隠れていて」

「分かりました」


 そう準備をして、小さく呟くと現れた選択画面から、使えそうな魔法を見繕う。

 あまり派手でなく、けれど威力の高い魔法。

 遠めだが、魔術師のフィーアは劣勢のようだった。


 むしろ今すぐ逃げ出そうとしているようだった。

 好都合だ。

 私はそう思って彼の前に躍り出る。


 そして魔法を選択する。

 “氷結礫破(アイス・ブレイク)”。

 私の目前に氷のこぶし大きさの物が敷き詰められて、ユウに向かっていく。


 けれどそんな私の前にいるユウは“嗤った”。


「“聖女”ね。また邪魔をするのね。でも今度は負けないわ……そして、私にたてついた者は男女ともに、そして気に入らない女は“殺す”事にしているの。だから貴方達二人は、必ず殺すわ」


 まるでこれから何かで遊ぶかのように楽しそうな声音で、ユウは告げる。

 まさかこん所で本性を垣間見れるとは思わなかったと私は思う。

 でもそもそも魔術師のフィーアがこんな場所にいるなんて。


 乙女ゲームの知識が役に立たなくなってきているわねと舌打ちしたい気持ちにになりながら私は、それでもその話は後にして目の前の相手に集中する。

 選択“氷の大地(コキュートス)”。

 すべてを凍らせる恐るべき魔法の一つを選択。


 ユウの余裕が、顔から消えた。

 それはそうだろう、普通にしていては“死ぬ”、そして“闇の影”でも致命傷を場合によっては負いかねない魔法だ。

 だが私にとってはこれはただの時間稼ぎだ。


 呆然としているようなフィーアの手を掴み、私はその場から逃げるように走りだしたのだった。



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