これぞ陰で糸を引く“悪役令嬢”!
そういった話をして残りの全員を、仲間にすることにした。
明日中に。
ちなみに提案はルーファスだった。
だが私としては、
「もっと好感度やフラグを……」
「?」
「ではなくて、味方に引き入れるにはいくつかの条件をクリアしないといけないんです。特に何もせず、そのまま味方になってくれるなんてうまい話はないんです」
「なるほど……それで、準備にはあとどれくらいかかりそうなのかな?」
「三日です」
私はそう答えた。
高速クリアの関係で、しかもルーファスのイベントをクリアした状態で考えるとそれでも三日は必要だ。
後はすでに接触した騎士のアズフォードを味方に引き入れればいい。
ルーファスがそちらをお手伝いしてくれるそうだ。
後は接触してきた順にリアナが手を打っていけばいい。
そして私は、リアナ達の“真の黒幕”であればいいのだ。
素晴らしい、これぞ陰で糸を引く“悪役令嬢”!
さて、その冗談は置いておくとして、グラタンを食べながら私は、
「それでこれから“黒の影”が現れそうな場所を調べて、ミフィの映像記録魔法を使って、誰が敵かを確認したいの」
「……それはこの部屋でできるのか?」
グレンが聞いてきたので、
「もちろんよ。部屋で映像をじっと見ているだけだもの。空間接続して映像を部屋で確認して、誰がその場に来ているのか……つまりこの“黒の影”の強化などを行っているのかを見ようと思うの。ただずっと見るのは大変だから、一番怪しいと思われる人物、ユウが王宮から外に出たかを教えて欲しいの」
「分かった。俺は客人で時間に余裕があるから、城から出ていきそうなら見ていてやる。丁度、出入り口がよく見える部屋だ」
「でもずっとというわけにはいかないでしょう? リアナとルーファス様にもお願いしていいかしら」
それに頷く二人。
というわけで、連絡はどうするか決めて、魔力の波長を特定のものにした連絡装置(事前に持っていた。用途は……聞かないでください)をわたす。
それから私はリアナに、
「それともしユウに会っても、一人で何とかしないようにしなさいよ? 謎の敵なんだから」
「はい、分かりました。でもユウってどんな人なんですか?」
「ユウは美少女」
「いえ、それだけではわかりませんが」
「そうね、髪の色は……茶色で瞳は黒よ」
一瞬頭の中にある記憶のユウが揺らいだ気がしたが、大丈夫だったようだ。
そう私が思っているとルーファスが、
「ミシェル嬢は覚えているのか。私は今思い出そうとしたら思い出せなかった」
「……本当に当たりのようですね。認識まで操ると」
「そうだな、よく君や弟と一緒に居るのを見かけたが、今思い出そうとしてもよく思い出せなくてね」
「そうですか。というわけでリアナ、気を付けるのよ?」
「はーい」
リアナは元気よく答えたが、私としては大丈夫かなという気がしないでもなく。
けれど、本当ならすでに死んでいるはずだったユウが生きているのだから、接触するのもある意味仕方がないのかもしれない。
後は私がすることといえば、
「“黒い影”の良そうな現場に、設置して回る事ね。食後の運動がてら、行きますか」
「分かった、俺もついていく」
「? 何でグレンが来るの?」
「放っておくと、何かやらかしそうだからな」
余計な一言をつけ加えたグレンとしばしにらみ合ったが、それからすぐに起きたミフィに事情を話したりして……結局、皆で“黒い影”の状況を見に行くことになってしまったのだった。




