修行回の大幅カット
前世の“聖女”の記憶がある。
普通に聞けば頭がおかしくなったと思われそうだが、妖精さんのお陰というのも足すと少しくらいは信じてもらえるだろうか?
とわたしはおもったのだが、ルーファス王子は深く息を吐いてから、
「……やはりミシェル嬢は、頭を打ってしまったか。この発言はさすがに、ちょっと……」
「意外に現実主義者なのね。グレンはすぐに信じてくれたのに」
「そうなのかい? グレン。君は私よりも用心深いと思ったが」
そこでルーファスはグレンに問いかける。
それにグレンは笑う。
「好きな相手のいう事なら信じるさ」
「君はそんな人間ではなかったはず」
「……そこにいるリアナが、自称“聖女”と言って、“黒の影”を倒している話は知っているか?」
グレンが、冗談を返したけれど真剣な表情でかえしてきたルーファスにそう答える。
誠実な問いには誠実に返す主義なのだろう。
グレンがそう答えるとルーファスは、表情を消した。
「“黒の影”に自称聖女か。“黒の影”の目撃例では……リアナの話は知らなかったな。そして自称“聖女”か。……情報が遅れている?」
「……そのようだな。だがその自称聖女の話に関しては、偶然リアナと遭遇した者が聞いただけだからその情報はそちらにもないだろう。リアナは闇が現れた場所にさっそうと現れて去っていったようだからな。追いかける事すらできなかったとこちらは聞いている。そうだな、フィズ」
「はい、リアナに関してはそうですね。そして闇関係に関しては……昔に大変な事になって、超強力な力と知識を持つ異世界人を召還する羽目になったらしいのです。そして今後、その超強力な異世界人を呼べる保証もないことから、もともとこちらではそれに関する情報には敏感なのです。おかげで“聖女”の力がなくとも対処は今の所は出来ていますね。早期発見、迅速対処のおかげで」
どうやらグレン達の国の諜報能力は侮れないようだった。
そしてこちらは、それらの情報が少ない。
「……どうしてうちの国では、闇に関しての情報が少ないのかしら。こんなに都市で闇が発露するくらいなのに。普通に見回り騎士団が仕事内に見かけたら対処しているだけみたいだし」
「どうしてミシェルはその見回り騎士団が、仕事内に見つけていると知っているんだ?」
グレンが私に聞いてくるので、
「昼間調味料を買いに外に出たらあったわ。リアナも知っているでしょう? 騎士のアズフォード」
「あー、あのひとですか。そういえばあの人の言ったとおりに会えたと喜んでいましたね。どうしてそんなに会いたかったのでしょうか?」
「闇と戦う貴方に一目ぼれしたらしいわよ」
「……え?」
「一目惚れ」
「ど、どうして。私、あったことはないよ」
「私も背後に立たれたけれど気づかなかったわ」
「そんな……ミドリちゃんも気づかないような相手何て……私もまだまだ修行が足りないわ。また山にこもって……」
「でもその前に、貴方の今回の役目は果たしてね。闇の暗躍があるようだから。それから山籠もりでも何でもして、アズフォードに挑戦なさい」
「うう……分かりました」
こうして私は、戦闘脳になっているリアナの修行回の大幅カットを実現したのだった。




