ちょっとお出かけ
こうして私は、リアナの家で暇を持て余すことに……ならなかった。
「お昼は自分で作って夜は、リアナと一緒に食べることになっていて私が料理っと。早速台所を拝見させてもらおうかな」
という事で、台所に向かう私。
コンロや鍋、調理器具は一通りありそう、小型の魔道式オーブンもある。
電子レンジはなさそうだった。
「面倒な時は魔法でどうにかしちゃえばいいか。お湯も出せたはず?」
この不思議な力、“魔法”という感じではあるが私の選択画面魔法が奇抜? なだけで普通に理論やら何やらがあったりする。
だが使えるものは有効利用すべきという私の情熱から、そうすることにした。
他にも魔法で動く冷蔵庫もどきもある。
正確には、大昔の冷蔵庫のように氷を入れて冷やすタイプのものに似ている。
冷蔵庫の上部に、四角い部分がありそこに魔力を注入すると冷えるらしい。
確かにこの世界だとこれでどうにかなりそうだとは思う。
今は使われていないフロンガスなどがこの世界にあるかどうかわからないのも考えると、これの方が便利で楽かもしれない。
そして魔法の発達によって科学技術が進歩しない例がこれなんじゃないかな……という気がしないではない。
電気も機械もガスも必要なく、魔力と装置一つで冷蔵庫の完成。
「つまり私のいる今は近代どころか、前世の私の世界の未来に当たるかもしれないって事か。てことは変な進化をしたものも幾つかありそうだけれど、何かあったっけ」
考えてみたが思い当たらなかった。
次に調味料を見た私は、
「……“マツメグ”がないわね」
というわけでちょっとくらいの買い物はいいかな、という事で買い物に行くことにしたのだった。
ようするに私がミシェルだとばれなければいいわけです。
「ふう、この変装はミフィも『大丈夫、誰もミシェルと気づかない……』と顔をそむけながら言っていたし」
ちなみにミフィはお留守番である。
実はカギを預かるのを忘れていたので内側から占めてもらったのだ。
というわけで私は現在、頭をスカーフで隠すように多い、黒いサングラスをかけて、白いマスクをしている。
これで顔の全面を覆えたはずだ。
調味料を購入した店の人や道行く人の視線がちょっと痛かった気がするが問題ない。
そんなこんなで私は調味料を購入して、何事もなく帰宅する……はずだった。
こぽっ、と何かが湧き出る音が聞こえる。
背筋が総毛立つような違和感。
とてもよく“知っている”気がする。
周りの人たちは“まだ”気づいていない。
こんな昼なのに?
けれど、今はそれに対処できそうな人物はここにはいなそうだ。
「……行くか」
小さく呟き駆け出す。
幸いにも人気のない裏路地のあたりでそれは発生したようだ。
私の正体も隠せてちょうどいい。
しかもまだ、“生まれたて”であるようだ。
選択画面を呼び出して、雷系の魔法を使う。
その一撃で十分にその……私が昔戦っていたらしい“黒い影”が消失して後には、それの媒介となる石が一つ転げ落ちる。
「一応回収しておくかな。さてと、後はここから見つからないうちに逃げ……」
私はそこまでしか言えなかった。
だっていつの間にか私の背後に、ある人物が立っていたのだから。




