おかしい
グレンの屋敷は、私の別荘と同じくらいの大きさに見える。
それから執事らしき人物に部屋に案内された私達。
とりあえずは飲み物だけでいいとグレンが言う。
「何しろ今日は、ミシェルの手料理があるからな」
との事だった。
私の手料理よりも異国の、それもグレンの国の料理とかお菓子とかも楽しみたかったのにと、今更ながら後悔したが、もともと多めに作っていたので人数分この大きな籠の中に食べ物は入っている。
失敗した、今更ながら後悔した私だけれどそこで、
「わー、ミドリちゃんのお料理久しぶりだね~」
「そっちは、飯マズはどうにかなったの? リアナ」
「それがですね、今回の私はすっごく高性能で、何を作っても美味しいんですよ! おかげで、飲食系のアルバイトのお給金がとてもいいんです! 自分で作っても美味しいし!」
「いいわね、今度ごちそうしてよ」
「そうですね、昔は、ミドリちゃんと、えーと、恋人に頼りっきり? だったし」
「……そろそろミシェルって呼んでくれないかな」
「うーん、言いにくいし? それに私が覚えているのは、ミドリちゃんとの出来事の一部だけだし」
「そうなの?」
「そうそう、恋人の事も覚えていられたら楽しかったんでしょうけれど、今のせいでは邪魔になるって事なのかな……好きだったのは覚えているのですが」
そこで珍しくリアナが寂しそうにそう呟く。
そして、くるりとミフィの方を向き、
「ミフィ、ミドリちゃんみたいに私の記憶思い出させたりできませんか?」
「止めた方がいいですよ、約50%の確率で頭が大変なことになります」
「うん、聞いてみただけだよ!」
やはりリアナも頭がアレになるのは嫌だったようだ。
しかし半分くらいがその可能性があったらしい。
高い確率だなと思いながら籠に入った食べ物を広げていく。
お皿はこちらで借りたものだ。
そして全員に配り終わったところで、私の隣にやって来たグレンが、
「それで、あの駄目王子との婚約破棄はどうする?」
「そうね……国民の目前で魔法を使って、恥部をさらすのが一番効果的な気がするの」
「……裸にむくのか?」
「まさか! もう一度あのユウとの寝取りシーンとその会話を手に入れられたらいいんだけれどね」
「……それをどうする気だ」
「国民の見ている前でその放送を流す」
「……」
そうすれば周知できていいと思うのだ。
だがそれを聞いたグレンは深々とため息をつき、
「一応は王子だから、その後の報復が面倒だぞ」
「だったらどうするのよ。大体、私の予定では、今あっちの宮廷内では大変なことが起きて、最終的にはあの王子は……王子でなくなるのよ」
「……どうしてそれを知っている」
「異界の知識(乙女ゲーム)によるわね。ただそこで私は悪役になるはずだったけれど話が変わっているみたいなのよね。でもあの件、あの駄目王子、誰かを身代わりにしたのかしら? ユウもそのままみたいだし。ここは都市から遠いから情報が入ってこないのよね」
何気なく呟いた私の言葉にグレンが、
「いない相手にすべてを押し付ける、よくある手段だな。ミシェル、濡れ衣を着せられているかもしれない」
予想外の言葉を、グレンは呟いたのだった。
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