モテ期到来?
こうして私達は、グレンたちの別荘に向かった。
そこで私は、あることを思い出す。
つまりこのリアナは私の記憶によると、ミシェルのが悪役に出てくる乙女ゲームの主人公のはずなのだ。
時期的には、そろそろ宮廷を舞台に色々騒動が起こっているはずなのだが……まだギリギリ開始するかしないか、といった所なのか?
でも前準備などを考えると
「リアナは大丈夫? ここに用があって来たんじゃないの?」
「ふ、ふ、ふ、実は、今日は暇だったのでここに遊びに来ていただけなので余裕です!」
「宮廷に行く仕事はないの?」
「あれ、ミドリちゃん、どうして知っているの? まさか、異界の知識!」
「そうよ、異界の知識(乙女ゲーム)よ! そしてあなたはそのゲームの主人公にして、モテる主人公なのよ!」
「私にモテ期到来って事ですね! それで、ミドリちゃんは?」
「だから敵対する悪役令嬢だってば」
そう告げた所、何故かリアナは目を輝かせて、
「昔の“好敵手”が敵に回る、そんな熱い展開ですね!」
「いや、回らないから」
「そうなのですか……」
「なんでそんな残念そうなのよ」
「いえ、一度ガチで勝負をしてみたいなという野望が……」
「私には昔みたいな戦闘能力はないわよ。今はレイン家の令嬢ミシェルだし」
「そんな~、ミドリちゃん、また冒険に一緒に行こうようぅ、そうして昔の勘を取り戻そうよぅ~」
私を冒険へと誘う乙女ゲームヒロイン。
どうしよう、ヒロインが脳筋になっている。
どう考えても前世の方が乙女ゲームじゃなかったせいで色々おかしくなっている。
いや、すでに“婚約破棄”しようとしている時点で物語は変質しているのだけれど、これ、どうなるんだろう?
頼もしいと言えば頼もしいが。
いざとなれば魔法で状況のごり押しをすればいいし。
そう考えているとグレンが私に、
「仲がいいな」
「そうね、全部を私は思い出せたわけじゃないんだけれど、何だかこう、旧来の知人に会ったようなそんな感じがする」
「そうか……妬けるな」
「ん? 女同士の仲に妬いてどうするの?」
「俺もミシェルともっと仲良くなりたい、やはり意地悪をした方がいいのか。その方が反応がいいし」
「グレンの場合は負けず嫌いで意地を張っているだけでしょう?」
「……それが分かっているなら、心を広く持って負けてあげよう、という気はないのか?」
「勝負に妥協は許されないの」
「……」
「……」
そこで私とグレンはお互いを無言で見つめあう。
お互い相手の隙を窺い、次の攻撃に移ろうとしているのだ。
じりっと足をほんの少し前に私は寄越しているとそこで、私の視界一杯にミフィが広がった。
どうやら私の顔面に張り付いているらしい。
だが何をすると思っているとフィズの声が聞こえた。
「グレン様、ほどほどにしてください。もう少し素直に口説いてください。ぜひぜひ」
「フィズ……俺は頑張った。もう無理だ。やはり力業で手に入れるしかないようだ」
「忍耐を。今は忍耐が必要な時期ですから!」
焦ったようなフィズの声。
従者もなかなか大変らしい。
そうこうしているうちに私達はようやくグレンの別荘に辿り着いたのだった。




