再び婚約状態にする気
衝撃、“婚約破棄”されていなかった!
あまりなことに私は一瞬言葉を失ってしまう。
何かの間違いか冗談でしょうと笑い飛ばしたい気持ちになるも、笑えなかった。
グレンも笑っていなかったし。
つうっと冷たい汗が背中を伝う。
「“婚約破棄”したから、あの我が元親友の寝取り女のユウと楽しくやっているんじゃないの?」
「“便利”なミシェルを逃すはずがない、そういう事だろう」
「でも書類は破り捨てたはず」
「偽造でもしたんじゃないのか? そしてこれからミシェルを罠にはめて再び婚約状態にする気満々か」
グレンの言葉に私は、ふざけるなと思った。
それにその話ではこうなんとなく、ユウも一緒にあの駄目王子と、という事に……。
「あの駄目王子、3Pでもする気?」
「昔は一人の男に女性が複数人というのはよくあったな」
「それは、昔の女性は医療技術が発達していなくて、子供を産んだらすぐに死んじゃったりするから後妻をとか別の条件があるでしょう? 時代が違うわよ」
「ミシェルは多情な男は嫌いか?」
「お断りね。私はこう見えても一途だから相手にも一途でいて欲しいわ」
「分かった」
グレンがそこで楽しそうに笑った。
それを見ながら、今私はグレンとデートをしたりしているわけで、なんとなく私はグレンだけを見ているんだから、グレンも私だけを見ていてよね、といったような……。
いやいや、まだそうとは限らない。
落ち着くんだ私。
まだっデートだ、デートだからと思っているとそこでリアナが、
「? そういえばミシェルは王子様と婚約しているんでしたっけ? となると浮気?」
「いえ、そっちの王子は私の元親友だったユウに寝取られて……」
といったように“婚約破棄”に至った経緯を私はリアナに説明した。
リアナは、すっごいドロドロですね~、と言っていたりしたけれど、
「でもそんな話、知りませんよ?」
「内部の出来事だからもみ消せた、か。……今度は周知する必要がありそうね。それで動かぬ証拠を手に入れて……婚約破棄よ。そして、あのクソ虫共が社会的に抹殺してやる」
「ミ、ミドリちゃん、すごい、いい、笑顔だよ?」
「そう?」
「う、うん、ミドリちゃんが昔、村一つ破壊した魔人を倒しに行こうって言った時と同じ笑顔だよ」
「そう、ちなみにその魔人はどうなったの?」
「……R-18のエロくない方に行ってしまうので、口に出せません」
「そう」
とりあえずリアナがそこはかとなく青くなったのはいいとして、そこでグレンが、
「まずは、無事ミシェルを“婚約破棄”させるところからか」
「そうね。……手伝ってくれるの?」
「当然だ。俺の目的はミシェルを俺の花嫁にすることだし」
「……それ以外の目的は?」
「イケメン不振もほどほどにしろよ、ミシェル」
「うー」
そこで私はグレンに頭を撫ぜられる。
こういうのは嫌いではないというか、何というかこう……いや、こんなものに私は惑わされない。
ナデポではないのだ~。
と私が必死に抵抗しているとそこでそれまで黙って様子を見ていたらしいフィズが、
「では、とりあえず全員で我々の別荘に来て頂くのはいかがですか? そこで作戦を練ってからミシェルのご両親とお話合い、それでどうでしょう?」
と、提案してきたのだった。




