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嫌な予感

 作り上げて粗熱を取った食事を籠に詰め、私はいつもの場所にやって来た。

 今日はグレンにぎゃふんと言わせてやる、そう思って来たのだが。

 私の手にある籠を見てグレンが、


「今日も料理をもって来たのか」

「そうよ。作ってこいって私にいってきたのはグレンじゃない。昨日から準備が大変だったんだから!」


 そう私が怒って言い返すと、グレンは目を瞬かせた。

 しかもじっと私の顔を見てから、


「……本当に作って来たのか」

「何よ、文句あるの?」

「いや……作る気がないだろうなと思っていたから、期待していなかった」


 などと言い出したこのイケメンはそう言って頭をかいた。

 なんだそれは、と私は思いはしたが、そこはかとなくグレンが嬉しそうなのと、この籠、実は結構重いので早く渡したかったので渡した。

 さて、そうして私は昨日の用に湖の畔を歩き出した。


 普通に歩いていた私達だが、やはり気になるのは……。


「後ろに歩いているあの一人と一匹が気になるわ」

「俺の様子がフィズは心配なんだろう。これで失敗したらどうしよう、という思いがあるんじゃないのか?」

「そういえば失敗したらどうなるの?」

「失敗の内容によるな。ミシェルに俺が振られるという1%に満たない確率があったとするなら」

「あったとするなら?」


 そこでグレンは眉を寄せた。

 私の顔をまじまじと見てから、


「……もしも攫われて監禁されたらどうする?」

「魔法で部屋を打ち破って逃げるけれど」

「……なるほど。前世の記憶関連で魔法の使える種類が増えていたりするのか?」

「するでしょうね」


 選択画面から呼び覚まされるあの魔法の数々を!

 でも今の話と何の関係があるのか?

 そこでグレンが、


「前世はどんな人物だったんだ?」

「異世界から来た“聖女”だったらしいわよ」

「……ミドリって名前の?」

「名前まで覚えていないわよ」

「そうか、そうだな……うん、その可能性はないか」


 やけにグレンがそのあたりに拘るが、何の問題があったのだろうか?

 そういえば私はどんな“聖女”じゃミフィから聞いていなかったなと思い出す。

 気になるので後で聞いてみようと思っているとそこで、


「まあ、いざとなったら、圧力をかけてしまうのが一番手っ取り早いだろうな」

「……圧力って何よ」

「一番穏便で、ミシェルが逃げられなくなる方法だろうな。魔法という力業では解決できないような、な」


 意地悪く笑いやがったグレンはさらに続ける。


「それに、その方法の方があの駄目王子がミシェルに手を出してくるのを阻止しやすいか」

「なんで婚約破棄したのに、あの駄目王子が私に手を出してくるのよ。あの寝取り親友のユウと今はよろしくやっているんじゃないの?」

「ミシェルの方が、その駄目王子にとって“便利”だっただろうからな」


 ぽつりとグレンの呟いたその言葉に、私は今すぐあの王子を抹殺しに行きたい気持ちに駆られるが、必死で抑える。

 何しろ今現在、ここから離れた王都で起こっているのは……。

 だがあの王子の事だ。


 身代わりの術という名の生贄の羊(スケープゴート)でも使って回避するか?


「ありうる」


 新たな可能性に気付き、嫌な予感が私の脳裏をよぎる。

 そこで……私は、否、以前の私のよく知っている人物が、こんな場所に現れるはずないのに現れたのだった。


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