料理準備を開始
こうして次の日の朝が無情にもやって来た。
何故私がこんな朝早くに起きて、昼食を作らねばならないのか。
しかも事前に下準備を昨日のうちにするという念の入れっぷり。
ここまでの展開になったのは、一重に両親からの圧力があった、それだけである。
はっきり言ってグレンのあの猫を被った好青年ぶりにそれはもう両親が気に入ってしまっていて、絶対に落としてこいと言われていたのだ。
そして今日のデートには私が作った料理をふるまうことになった、と昨日告げた所、
「……料理人をここに呼んで」
厳かな声で母が告げた。
そして呼ばれた料理人に母が経緯を説明し、料理人が私に教えることに。
だがそんな母に私は、
「お母様、料理くらい私は出来ます!」
「……いえ、プロの技を学び、胃袋から落としてらっしゃい。今回は絶好の機会なのです」
「そんな!」
「それで、何を作る気なのですか? どうせ自分の好きなお菓子ばかりの詰め合わせになるのでは?」
「そ、そんなわけないです! そもそもお菓子は妖精のミフィ用で……」
「そのあたりの話はどうでもいいです。ミシェル。いずれそんな機会が訪れるだろう、というよりも、この一週間のデートのうち、後半戦に入ったら貴方にはその手を使わせようと、事前に私達は準備をしてきたのです」
「し、知りませんよそんな話」
「でしょうね、貴方には話していませんから」
どうやら母は内々に計画を立てていたらしい。
私が知らない間に多くの“計画”が進んでいたようだ。
なんてことだと思っているうちに私の持っていく料理の下準備が始まっていた。
この世界には魔法がある。
強い魔力を持つ者は、呪文のようなものを使わずとも魔法が使える。
ただしたいていの人でもささやかな魔法は使えるものなのだ。
例えばライター程度の炎をともしたり。
とはいうものの料理の場合、多くの魔法を使えた方が便利ではある。
窯に火を入れるのもそうだし、フライパンで調理をするのにも炎が必要だ。
逆に何かを冷やしたりするには氷や水が必要だったりする。
とはいうものの、天然の水の方が飲食した場合に“美味しい”し魔力の量の関係で、水などに関しては天然のものを使用する場合が多い。
長々とはしてしまったが、そうして調理場に連れてこられた私は、練りパイの生地を作っていた。
キッシュを作るための下準備である。
この生地を作って素焼きしておく準備が必要だったのだ。
後はその次の日の朝、つまり今日、野菜類やベーコン、キノコなどを入れて、香辛料で香りづけをした卵、牛乳などを入れたアパレイユを入れ、上にチーズを乗せて焼けばキッシュの完成である。
串に野菜をさして可愛らしく彩ったり、美味しいソースを挟んだ野菜を、一口サイズに切った全粒子のパンではさんだものなども作る。
飲み物はすでに作って水で冷やしてある。
そこで昨日のうちに作っておいた焼き菓子の一つをじっと見ていたミフィに、一つ上げると嬉しそうに食べ始める。
こうやって美味しそうに食べてくれるなら、つくり着があるなと思っているとそこでミフィが、
「美味しいですね。てっきリまずいものでも作るかと思ったのですが」
「食べ物でそんなことはしないわよ。私だって食べるし。それに、どうせならおいしいって言わせて、私が料理で勝利したいの!」
そう当たり前だと思って答えるとミフィが、そうですね、と答えたのだった。
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